アンデルジェフスキの歌心に、モーツァルトの書いた旋律の本質を見る

はじめに、今回取り上げるのは声楽家ではないことをご了承ください。

 

現在活躍している素晴らしいピアニスト
ピョートル アンデルジェフスキ(Piotr Anderszewski)のドキュメンタリー映像があって、
以下の画像なのですが、所々でモーツァルトのオペラ『魔笛』を弾きながら、口三味線で色々な役のパート歌ってるシーンがあるのですが、歌がないことで、
「こんな美しい旋律だったのか!?」
ハっとさせられる部分が多々ありましたので、今回紹介することにしました。

 

以下の「YouYubeで見る」を押下して頂くと再生できます。

 

まず、冒頭で2幕のタミーノ、パミーナ、ザラストロの三重唱から始まって、これがあまりに美しく、モーツァルトの旋律を声が台無しにしてしまっている場合が多々あるのではないか?
という疑問を持つことになりました。

 

7:10~はパミーナとパパゲーノの有名な重唱「愛を知る者は」です
実際の重唱は以下

普通に上手い歌手が歌うだけでは、アンデルジェフスキのようなフレーズ感が出ないことが分かりまして、この曲のパミーナのパートをヴァイオリンで演奏した、ヴァイオリンとバリトンによる演奏なんかも聴いたことがあったのですが、それでもここまで、この旋律を美しいと思ったことはありませんでした。
誰でも口ずさめる旋律を、誰もできない程美しく奏でられてこそ、本当のプロと呼べるのではないか?などと考えさせられてしまいました。

 

 

33:45~はパパゲーノが自死しようとする前後の場面
もう、コロコロ変わるパパゲーノの表情が凝縮されていて、何だこのジェットコースターみたいな表情の多彩さは!?と驚かされる。
言葉が付いてなくてもこれだけのことができるのだが、多くの歌手はそこまで表情をだせているのだろうか・・・。

天才とまで呼ばれたソ連のピアニスト、リヒテルは、「モーツァルトの音楽は難し過ぎる。」
と語っていた映像を見たことがあったのですが、なるほど、多くの音楽家は、もしかするとモーツァルトが書いた音楽の魅力を100%表現し切れていないのかもしれない。

このアンデルジェフスキの魔笛のピアノ演奏を聴いて、今まで以上にモーツァルトを歌うことの難しさを思い知らされたような気がしました。

と言うこと、今後はより一層モーツァルトのオペラに関する耳が厳しくなりそうです(笑)

 

因みに、アンデルジェフスキというピアニストはバッハ演奏が本来は得意とされてる方で、
個人的には、歴代トップクラスのバッハ演奏者だと思っていますので、興味のある方は聴いてみてください。

以下のCDは私の愛聴盤だったものです。

 

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