高い技術で堅実な歌唱をするメゾソプラノ  Emilie Renard

Emilie Renard(エミリー ルナー)はフランスのメゾソプラノ歌手。

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フランスでも、彼女のHPには『Anglo-French』とあるので、ざっくりノルマンディ辺り?、みたいなイメージしか持てないのですけど、実際現在この表記がされる場合について調べてみても、下記のような要約となりました。

 

「Anglo-French」という表記は、歴史的にはノルマンディーやピカルディなどの北部フランスの地方と、ノルマン人が支配したイギリスの地方を表すことができます。しかし、現在ではこの表記はあまり使われず、ノルマンディーの言語はノルマン語と呼ばれ、イギリスの言語は英語と呼ばれます。また、チャンネル諸島の言語はアングロ=ノルマン語と呼ばれることがありますが、これはフランス語で「îles anglo-normandes(アングロ=ノルマンド諸島)」と呼ぶことから生じた誤解で、実際にはノルマン語の方言です。

 

一般的に

「Anglo-French Mezzo soprano」という書き方で理解できるものなのでしょうか?
それとも私がアホなだけ?

 

こんな感じで、彼女の経歴を調べる最初の段階で躓いてしまって、予期せぬ時間を使ってしまいました/(^o^)\

ルナーの経歴については以下のような感じです。

2010年にブリテン・ピアーズ・ヤング・アーティストとして選ばれ、
2013年のインスブルック音楽祭アントニオ・チェスティコンクールで第一位を獲得。

レパートリーは非常に幅広く
リュリ、モンテヴェルディ、パーセル、ヴィヴァルディといったバロック作品とモーツァルトを得意としながら、
ワーグナーやRシュトラウスといった対極にある作品も歌い。
バーバー、ブリテン、マルティヌーといった近代作品も歌っているようです。

 

チェスティ Intorno all’idol mio

こちらの演奏は、2013年、チェスティ、バロックオペラコンクールで1位を獲得した時の演奏のようです。

 

かなりソプラノに近い声の、リリックメゾといった感じの声質で、アジリタでも硬さがなくて、機械的な超絶技巧ではなく、レガートで滑らかに繋がっていて心地よさがありますね。

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モーツァルト 『皇帝ティトの慈悲』Parto, parto, ma tu ben mio

 

この演奏は、数ある同アリアの演奏の中でもかなり秀逸な演奏ではないかと思います。

声はリリカルで明るくも、母音に深さがあり、それでいて発音のポイントがゆったりなフレーズを歌おうと、アジリタをしていようと崩れない。

最近でこの辺りの曲を得意としている有名歌手であれば、ディドナート、ちょっと前であれば若い頃のガランチャといった歌手と比較してもルナーの演奏のレベルの高さがわかります。

 

 

Joyce DiDonato

ルナーと比較すると、ピアノの場合は良いのですが、フォルテだと喉に引っかかる感じがあったり、母音の響きでも、音域によってかなりバラつきがあり、低音は胸声に落とし過ぎな感があります。
アジリタは流石なんですが、アジリタをやってる時は小さい音域と息の量のコントロールが見事な分、普通に歌ってる時の息の量が多すぎてもったいない演奏に聞こえてしまう。

ルナーはその辺り、技巧をこなす時も、ゆったりしたフレーズでも息の量のコントロールがしっかりしていると思います。

 

 

Elīna Garanča

ロッシーニやモーツァルト歌ってた時のガランチャは本当に輝いていたなぁ・・・。

ルナーとガランチャの演奏だと、どっちが優れていると言うより好みになってくるかもしれませんが、違いを言うのであれば、
ルナーは表情筋を吊り上げ気味に使う傾向があるので、
響きが明るくなる一方、その分喉が少し上がったところで歌うことになって、上半身の響きで歌っている感じになってしまう。

一方、この頃のガランチャは上唇や頬の辺りを見て頂けるとわかるんですけど、ほとんど動かないんですよね。
なので、軽い声でありながらキンキンした感じが一切ない。

ただ発音も奥に引っ込み気味になっているので、
個人的な意見としては、
高音の音質:ルナー<ガランチャ
発音:ガランチャ<ルナー

といったところでしょうか。
とは言え、二人とも無茶苦茶高いレベルの演奏なので、
先にも書いた通り、どちらの演奏が優れているかと言うより、ここまできたら聴く側の好みになると思います。

 

 

Rシュトラウス 『ナクソス島のアリアドネ』Sein wir wieder gut

そしてこの演奏が今年のルナーの演奏。
Rシュトラウスのリートでなくオペラなんか歌うんか?

と彼女のレパートリーみてちょっと疑問に感じていたのですが、実際の演奏はこの通り、発音が驚く程明瞭で、オケが分厚い曲を歌うと多くの歌手は発音があまりわからず、大声張り上げてるだけに聴こえてくることも少なくないのですが、ルナーは全く逆。
まず発音が飛んでくる。

高音では時々喉に引っかかるところがあって、声としては気になる部分もあるんですが、それを差し引いても、ここまで頭~語尾までキレイに発音が飛ぶ歌手はそういない。

 

これから声は更に成熟していくと思いますし、
ルナーは間違えなく現代を代表するリリックメゾと言えると思います。

 

 

2件のコメント

  • JK より:

    Anglo-Frenchは、英国とフランスの血を引いている、もしくはフランス生まれだが英国籍を(も)とっている、という事だと思います。名前は完全にフランス系ですね。

    • Yuya より:

      JK様

      コメントありがとうございます!
      なるほど、英仏混血、あるいは二つの国籍をもっている方の意味があるのですね。

      調べるとノルマン語についての情報が出てくるので、一部で今でも残っている古い言語の文化を持った地域や民族がいるのかな?と勘違いしておりました。
      ありがとうございます。

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