2020 ザルツブルク音楽祭 COSI FAN TUTTEのキャストについて

今年のザルツブルク音楽祭は中止になるという話もありましたが、
小規模ながらも実施されることが決まったようです。

オペラ演目は、Rシュトラウスのエレクトラと、モーツァルトのコジ・ファン・トゥッテということで、本日はコジのキャストを見て行こうと思います。

 

最近は途中まで記事を書いては、途中で記事にするに値しない内容だな~。と思って途中でタナ上げしてしまったり、
過去に書いた歌手について気付いたら書いていたり、
新国の「巣ごもりシアター」で上演されている魔笛について書こうとしたけど、
記事にしたいようなことが結局なくて挫折したりとダメダメだった訳ですが、
よ~~~やく新しい演奏会の情報が入ってきましたので、ニュースとしての価値がある記事を書くことができて興奮しております。

一応以下で新国の魔笛は6/12までは見れます。

https://www.nntt.jac.go.jp/opera/sugomori-magicflute/

 

ではさっそく

2020年8月2日~18日に行われるコジ・ファン・トゥッテのキャストを見ていきましょう。

キャストはコチラを参照しています。

 

指揮 Joana Mallwitz(ヨアナ マルヴィッツ)

ドイツの若手女流指揮者で、注目度の高い指揮者なので、
歌手よりも指揮者の方が世間的には注目されることになるかもしれません。

 

 

 

フィオルディリージ役

Elsa Dreisig(エルザ・ドライシヒ)

ドライシヒについては、過去の記事で一度取り上げておりますので、
まだご覧でない方はそちらも参照ください。

 

 

◆関連記事

実力以上に人気が先行してしまっているソプラノ Elsa Dreisig

 

こちらは今年の演奏ですが、過去の演奏に比べれば硬さが取れたように感じますが、
如何せんこの人は響きが横に平べったいので、以前に記事にも書いた通り、言葉をレガートに喋ることができず、綺麗な声で旋律を撫でるような歌い方になっています。
こういう歌い方が好きという方はいるかもしれませんが、彼女の歌い方では歌詞の世界を表現することは難しいでしょう。

 

 

例えば、現代トップクラスのロッシーニテノールとして君臨しているカマレーナとの二重唱

 

 

 

 

 

一定の緊張感の中でディナーミクをコントロールし、ピアノでも明瞭な発音ができるカマレーナに対して、ドライシヒは言葉が前に出ておらず、響きのポイントが低いのがわかります。
これが横に平べったい声がダメな理由で、
横に開くと結局響きが乗った声にはならないということですね。

更に今回歌うのはデスピーナではなくテッシトゥーラが低めで、ドラマティックな表現が求められるフィオルディリージです。
私見ではミスキャストと言って良いように感じます。

 

 

 

 

ドラベッラ役

Marianne Crebassa(マリアンヌ・クレバッサ)

クレバッサも過去に記事を書いたことがありますので、
そちらもよろしければご覧ください。

 

 

◆関連記事

癖のない希少なロッシーニを歌うメゾ Marianne Crebassa

 

 

 

 

2020年 ウィグモアホールでの演奏

クレバッサについては、記事を書いたのが私がこのブログを初めて間もない時のことでしたが、彼女の歌を聴いた感想にはあまり変化がありません。
上手いんですがどこか奥まることがあったり、揺れたりと勿体ないところがあって、いつ殻を破れるのかに期待したい思いも2年前と変わらない感じです。

 

 

 

 

フェッランド役

Bogdan Volkov(ボグダン・ヴォルコフ)

1989年、ウクライナ生まれのロシアのテノール歌手で、
若手のリリコレッジェーロテノールの中でも特に優れた歌手と言えるのではないかと思います。

常に柔らかい響きでありながら芯はしっかりある。
ディナーミクも自在で声そのものの美しさも申し分ない。
役としてもフェッランドを歌うのにピッタリの声ですから、
今回のコジで一番の注目はこの人で間違えありません。

 

 

 

 

グリエルモ役

Andrè Schuen (アンドレ・シュエン)

1984年にイタリア、南ティロル地方生まれのバリトン歌手で、
この人も過去の記事で取り上げたことがあります。

良い声で表現的にも優れた感性を持っている歌手とは思いますが、
どうも、まだまだ喉声っぽさがあるように感じてしまう上にブッファが合うのかもちょっと疑問。
グリエルモよりはアルフォンソの方が合いそうな声ではないかと思います。

 

 

◆関連記事

イタリア生まれのドイツリートを得意とするバリトンAndrè Schuen

 

 

 

 

ドン・アルフォンソ役

Johannes Martin Kränzle(ヨハネス マーティン=クレンツレ)

 

1962年、ドイツ生まれのバリトン歌手。

若手が中心のキャストの中で、唯一ベテランと言えるのがこの人。
この役ほど若い人が歌うイメージがない役も珍しく、
半分引退したようなバスやバリトン歌手もこの役だけは歌ってたりするのを見かけます。

とは言っても、クレンツレは引退間近みたいな歌手とは違います。
この演奏を聴いてもわかるように、言葉に力があり、
旋律に声を当てはめて、それとなく綺麗に歌うのではなく、
自ら音楽に言葉で推進力を与えてフレージングを構築していく、まさにドライシヒとは真逆の歌唱です。
こういう歌手をアルフォンソ役に配置したことは非常に良い効果を生むのではないかと思います。

 

 

 

デスピーナ役

Lea Desandre(レア デサンドレ)

 

1993年 イタリア・フランスのメゾソプラノ歌手。

生まれたのはフランスのようで、ナタリー デセイの熱狂的なファンだったようです。
Sara Mingardoというコントラルト歌手に師事しており、
まさにこの人にそっくりな歌い方をする印象を受けます。

 

 

 

Sara Mingardo

これは好き嫌いの話になってしまうのですが、
私個人としては、こういう上半身だけで息漏れに近いような声で歌う歌手は、クラシックの歌唱というより、マイクに乗せるための歌い方に聴こえてしまって、違和感を覚えます。

確かに上手いんですけど、
まだ現在27歳の歌手が、常に眉間にシワを寄せて歌っている様子は普通じゃありません。
こういう歌唱をしている歌手が、それこそクレンツレやヴォルコフと一緒に歌うと考えると、デサンドレのデスピーナには懐疑的な耳を向けざるを得ないのではないかと思います。

 

以上が先日発表になった、今年のザルツブルク音楽祭
コジ・ファン・トゥッテのキャストについての感想になります。

 

 

 

CD

 

 

 

 

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