Konstantin Krimmel(コンスタンティン クリンメル)は1993ドイツ生まれのバリトン歌手。
この人については過去に記事を書きましたので、クリンメルの詳細は以下をご覧頂ければと思いますが、今回はMalcolm Martineau(マルコム マルティヌー)という現代でも屈指の伴奏ピアニストと共にリーダーアーベントをWigmore Hallで行った映像が先日アップされましたので、そちらを中心に紹介していきたいと思いますが、
今回は、いつものように演奏について分析していくというより、リートを歌うバリトン歌手について、思うことなどをダラダラ書いていくので、リートに興味がない方には面白くない内容かもしれません。
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これからのドイツリート界を牽引するであろうバリトンKonstantin Krimmel
Konstantin Krimmel & Malcolm Martineau – Live from Wigmore Hall
PROGRAMME
Franz Schubert (1797-1828)
Der Wanderer D489
An den Mond D193
Schäfers Klagelied D121
Wandrers Nachtlied D224
Der Wanderer an den Mond D870
Carl Loewe (1796-1869)
No. 3 Die Uhr Op. 123
3 Balladen Op. 2 No. 2
Herr Oluf
3 Balladen Op. 1 No. 3
Erlkönig
Odins Meeresritt Op. 118
Robert Schumann (1810-1856)
Belsatzar Op. 57
Maurice Ravel (1875-1937)
Don Quichotte à Dulcinée
Chanson romanesque
Chanson épique
Chanson à boire
Hugo Wolf (1860-1903)
Mörike Lieder
Selbstgeständnis
Abschied
このところリートを得意としている若手歌手には優秀な人が多く、
しかも、オペラでは物足りないけどリートならプロフェッショナル。
といった感じの、守備範囲がコンサート歌手のみというタイプではないのが凄いところ。
それこそリートのスペシャリストとして度々来日もしているChristian Gerhaherが、同じWigmore Hallで演奏をしているので、是非比較して頂くと面白いのではないかと思います。
Christian Gerhaher & Gerold Huber – Wigmore Hall Live
この人は玄人好みの歌手と言えば良いのか、私が学生時代にシューベルトの三大歌曲のCDが評判になって、大学内でもドイツ物を得意としている方々は、このゲルハーヘルとテノールのプレガルディエンを当時のリート歌手の双璧に上げていて、その頃話題になっていたボストリッジには首をかしげる。というのがお決まりのパターンでした。
そして、リートオタクは大抵オペラが好きじゃないんですよね。
彼のリサイタルには何度か行ったことがありますが、客層の平均年齢が高いクラシック音楽の演奏会でも、彼の演奏会は特に年齢層が高いのが印象的でした(笑)
それはさておき、
ゲルハーヘルとクリンメルの歌唱は良い意味で対局にあるのではないかと思います。
クリンメルは素直で真っすぐな声で、表現も真っすぐなので、
リートがそもそも嫌いでない限り、この歌唱が嫌いという人はまずいないのではないかと思います。
一方のゲルハーヘルですが、声に衰えが見え始めてはいるのですが、自分の間合で歌っている感じで、伴奏もずっと同じフーバーがやっているので、このコンビならではの歌唱世界ができあがっています。
なので、ゲルハーヘルの声が発声的にどうかという問題以上に、
表現として好き嫌いが分かれる演奏になっていると思います。
個人的には、ここまで抜いた表現を多用されるとちょっと引いてしまうんですが、
まぁ、それはあくまで私の好みではあるものの、なぜかリートを歌うバリトン歌手って、ちゃんと響きのあるピアニッシモではなく、抜いた弱音の表現をする傾向があるのは、きっとディースカウの影響が津用のではないかと思えてなりません。
余談ですが、ディースカウってそもそもバリトンの声なのか個人的には疑問を持っていて、いわゆるテノールとバリトンの間の声だと思っているんです。
それが良く伝わる曲が、バスバリトンからもテノールからも同じ調性で歌われることが多い、シューベルトのAuf der Bruck
この曲で何人かの歌手を聴き比べてみましょう。
因みにこの曲は、低音は五線の下のH(Ces)~高音は五線の上のAsまでと非常に広い音域を駆使し、しかも真っすぐに響きの質が変わらないように喋り続けなければいけない難曲です。
Christoph Prégardien(テノール)
高音でちょっと喉が上がってる感じになってしまって響きの質が変わるんですが、
それでもプレガルディエンの演奏はやっぱり上手いです。
Bryn Terfel(バスバリトン)
勢いとパワーで押し通す、典型的な低声歌手が高音を駆使してテンポの速い曲を歌う時にやる演奏スタイルです。
高音になるとテンポを落として、
どーだ!
と言わんばかりに高音を出す演奏でして、表現とか二の次といった感じなのだけど、これはこれでやっぱり凄い。
森寿美(バリトン)
日本人バリトンでも歌っている人がいまして、演奏自体も健闘しています。
なんとかテンポ内で高音を出して、ディナーミクもつけてと頑張ってはいるのですが、
やっぱり全体的に硬いし、ピアノの表現に響きが乗らない。
高音はまだ勢いだろうと出れば良しとしても、むしろバリトンなのにプレガルディエンより低音が響いていないことが問題で、これが空間の狭さとか、随所で喉を押してしまっている、と言えば良いのか、
高いテッシトゥーラを歌うためにあえて喉がやや上がったポジションで歌ってしまっていると言えば良いのか、そのためにバリトンとしては全然低くない五線の下のCですら響かないということになってしまっているのは惜しいですね。
更に言えば、そもそもバリトンではなくテノールの声なんじゃないか?ということはここでは触れないでおきましょう。
Fischer-Dieskau(バリトンー私の感覚としてはZwischenfach)
リヒテルが伴奏していることでも有名な映像なのですが、
こういう演奏を神演と言います。
全ての音が開いた響きで明るく、
それでいて速いテンポの中でも言葉の色が明確。
どの音域でも響きのポジションがブレない。
ディースカウは晩年の衰えた演奏の方が私にはなじみ深かったので、
教科書のような演奏をする人というイメージが学生時代はあって、あまり好きにはなれなかったのですが、
初めてこの演奏を聴いた時は本当に何度リピートして聴いたことかという位衝撃を受けました。
この演奏でバリトンはないでしょ!
と言うのが私の意見なんですがいかがでしょうか。
最近は読者の方から、色々な演奏家について意見を求められることが増えてきまして、
本当にありがとうございます。
できるだけ頂いたリクエストには応えていきたいと思います。
また、声楽を習っている方を対象にした動画なので、とっつきにくいかとは思いますが、解説動画の方にもご意見やご感想があればよろしくお願いいたします。
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