日本語から「い」が消えてゆく! という衝撃的な記事

今回は歌手の紹介ではありませんが、
声楽関連の記事を書いている者として、とても気になる記事がありましたので、
この内容について考えてみたいと思います。

 

記事は以下

 

日本語から「い」が消えてゆく! マスク時代、あなたの発音は大丈夫?

 

上記の記事から少し抜粋してみますと。

 

※※※※※以下記事より転載※※※※※

口の中で舌を前上方に引き上げ、口角を左右に引き、喉頭を少し締めた状態で声を発する母音――。文字で書くと、なんだか難しくなりますが、「い」の発音の仕方はこのようになります。私たちは普段、無意識にこうやって筋肉を動かして発声しています。マスクをした状態では当然、口の動きはマスクによって制限され、滑舌が悪くなり、相手が聞きづらくなってしまいます。

さらに、マスクがなかったとしても、これまで身近にも「やばい」が「やべー」や「やば」と変化したり、「難しい」が「ムズい」から「ムズッ」へと変わったりしている例があることに気がつきます。これも省エネ化の表れなのです。

「い」の発音は前舌母音といい、舌の位置が他の母音よりずっと高く、声帯のある喉頭をキュッと引き締めるエネルギーの要る発音法なのです。ですから、この“面倒くさい”(これも「メンドくさっ」と「い」が落ちますね)発音をより楽な方、楽な方へと変えていってしまったのです。

 

省エネ化でアクセントも消えていく
言葉の変化は、アクセントの変化にも及びます。ギター、バイク、カレシなどの読み方は、先頭にアクセントが付いていたものが、一本調子の発音になります。これをアクセントの平板化と言います。

「部長」をどのように読むでしょうか。特にアクセントをつけず、「ぶちょう」と平板に発音していると思いますが、元々は先頭の「ぶ」にアクセントがあったのだそうです。それが変化して、今私たちが広く使っている平板化した発音になったといいます。

アクセントの平板化も省エネのたまものです。まず、アクセントの位置を覚える必要がありませんから、脳のエネルギーを節約できます。それと、実際に発音してみると分かるのですが、平板化した発音は腹筋を使わなくて済むのです。

「ギター」を平板に発音した場合と、「ギ」にアクセントを置いて発音した場合を比べてみてください。おへその辺りに手を置いて、平板化と頭にアクセントを置く発音を交互にしてみてください。アクセントがあると、おなかがキュッと動くのが分かると思います。おなかの手術をした人は、術後傷の痛みがあり、はっきりとしゃべるのが難しいのを経験します。

 

「い」の時には、口角を真横に引き、上下の歯が見えるように「いー」と声を出します。自然と首にも筋が見えるほど力が入るでしょう。「う」は、上下の唇をまん丸くとがらせて前の方にしっかりと突き出します。一緒に「うー」と声を出します。これを連続して20回、1セット1秒くらいですこし速く口をうごかします。笑顔を作っていくのにもよい体操なので、コロナ疲れを癒やしてくれると思いますよ。

 

※※※※※転載ここまで※※※※※

 

声楽ではないので、「舌の位置が他の母音よりずっと高く、声帯のある喉頭をキュッと引き締めるエネルギーの要る発音」と説明されておりますが、
重要なのは、前舌母音であるということですね。

そして、ちゃんと発音できないとアクセントのない平坦な喋り方になり、滑舌も悪く聴こえる。
前で明るく発音するためのエネルギーが”い”母音には凝縮されているということが、この記事からも読み取れます。

 

生越ながら私もボイストレーナーとして指導させて頂くことがあるのですが、
まず”い”母音を徹底して練習するスタイルをとっています。
「舌の位置が高い」、「喉を締める」という部分を代替するために必要な力を得るのが、一般的に言われる支えというやつなのですが、
まず”い”母音のピントが合わないと言葉が全然飛ばないのですね。

ということで、噛ませ犬的に紹介してしまうのは失礼なことは重々承知の上で、
それでもちょっと全体的に演奏がアレなので、以下を聴いて頂くと、母音のピントのブレが半端ないのです。

果たして何曲で歌詞がちゃんと聞き取れるでしょうか。

 

 

 

 

中低音はまだ言葉が聞き取れる人が大半なのですが、
高音になると喉が上がってしまったり、野球で言えば暴投と呼べるような、
”あ”、”い”、”う”、”え”、”お”という5つの母音のストライクゾーンから大きく逸れた、母音になってしまっている人が大半です。

 

先日、ディアーナ・ダムラウが日本歌曲を歌っているCDが存在するという情報を頂いたので、この機会に紹介してみようと思います。

 

 

 

Diana Damrau

スタジオ録音とライブ録音を比較するつもりはありませんが、
日本語が出来る訳でもないダムラウが、関西二期会の歌手の方々より遥かに言葉に色彩感があるというのは由々しき事態です。

そして、明るい響きというのは単に開けっ広げで、発音のピントがボケてしまう声ではなく、”い”母音がきれいに聴こえる、むしろ細く繊細で真っすぐな響きだということがわかります。

 

ここで最初の記事の話に戻りますが、
マスクをして、殆ど喋らず、
喋っても飛沫を飛ばさないように唇や舌をあまり使わず喋る生活を続ければ、確実に歌は下手になる。

ということは断言できます。
歌をやられている方で、昨年から殆ど歌えていないような方は、
特にここで提唱されているようなエクササイズをしたり、
沢山の子音や鋭い”i”母音を必要とすることから、ドイツ語の詩を朗読してみるのも、
口輪筋や頬筋といった表情筋群を鍛えるのに良い運動になるのではないかと思います。

歌唱芸術を愛する者として、日本語から”い”母音を守っていきましょう!

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