注目の新譜 ソプラノ歌手  Olena Tokarが歌う女性作曲家の歌曲集

Olena Tokar(オレーナ・トカール)は個人的にに注目している歌手というだけでなく、
彼女が今度出すCDが実に興味深い内容になっているため、ここで紹介させて頂きます。

 

トカールについては過去に記事を書きましたので、まだご覧になっていない方はそちらも併せてご覧頂ければと思います。

 

 

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今後の活躍が最も期待されるソプラノの1人 Olena Tokar

 

 

 

CDの内容はタワーレコードの紹介ページより引用

 

 

 

 

<タイトル>

CHARMES 魅惑 – 女性作曲家の歌曲集

 

 

<発売日>

2021年4月15日

 

 

<曲目>

アルマ・マーラー=ヴェルフェル(Alma MahlerーWerfel 1879-1964): 5つの歌曲
1. 第1番: Die stille Stadt 静かな街
2. 第2番: In meines Vaters Garten 私のお父の花園にて
3. 第3番: Laue Sommernacht なま暖かい夏の夜を待ちわびて
4. 第4番: Bei dir ist es traut あなたの傍では心おきなく
5. 第5番: Ich wandle unter Blumen 私は花の下をさすらう

クララ・シューマン(Clara Schumann 1819-1896):
6. Liebst du um Schonheit 美しさゆえに愛するのならOp. 12 No. 2
7. Er ist gekommen 彼はやってきたOp. 12 No. 1
8. Warum willst du and’re fragen なぜ他の人に尋ねるのかOp. 12 No. 3
9. O Lust, o Lust, vom Berg ein Lied おお、歓喜よOp. 23 No. 6
10. Geheimes Flustern hier und dort ひそやかな語らいOp. 23 No. 3

ポーリーヌ・ヴィアルド=ガルシア(Pauline Viardot 1821-1910):
11. Nixe BinsefuB 水の精ビンゼフース
12. Hai luli 私は悲しい
13. Der Gartner 庭師
14. На холмах Грузии ジョージアの丘で
15. Две розы 2本のばら
16. Тихо вечер догорает 山頂の黄金の輝き
17. Не пой, красавица, при мне 歌わないでください、私の美しさを

Vítězslava Kaprálová(ヴィーチェスラヴァ・カプラーロヴァー 1915-1940):
18. Navzdy 永遠に Op. 12 No. 1
19. Potkali se vcera lide dva 昨日二人は会った
20. Az jednoho dne se budes ptat ある日あなたは尋ねるだろう
21. Ruce 手 Op.12 No. 3

 

 

<演奏>

オレーナ・トカール(ソプラノ)
イーゴリ・フリシン(ピアノ)

 

 

 

トカールは有名なオペラも歌いますが、マイナーな歌曲の演奏に積極的で、
特にロシア語とドイツ語が堪能なので、ドイツ物とロシア物、そして母国のウクライナの作品を積極的に歌っています。

今回のCDと同じ伴走車でリムスキー=コルサコフの歌曲を歌っている映像がありました。

 

 

 

リムスキー=コルサコフ  Four Songs, op.26/4 “Zuleika’s Song”

 

 

 

In Spring op.43/1 “The Lark Sings Louder”

 

 

 

 

ドイツ物ではRシューマンの歌曲を歌っている映像があります。
とても表情が豊なので、是非歌詞を見ながら聴いてみてください。

 

Rシューマン Singet nicht in Trauertönen

 

 

<歌詞>

Singet nicht in Trauertönen
Von der Einsamkeit der Nacht.
Nein,sie ist,o holde Schönen,
Zur Geselligkeit gemacht.

Könnt ihr euch des Tages freuen,
Der nur Freuden unterbricht?
Er ist gut,sich zu zerstreuen;
Zu was anderm taugt er nicht.

Aber wenn in nächt’ger Stunde
Süßer Lampe Dämmrung fließt.
Und vom Mund zum nahen Munde
Scherz und Liebe sich ergießt,

Wenn der rasche lose Knabe,
Der sonst wild und feurig eilt,
Oft bei einer kleinen Gabe
Unter leichten Spielen weilt

Wenn die Nachtigall Verliebten
Liebevoll ein Liedchen singt,
Das Gefangnen und Betrübten
Nur wie Ach und Wehe klingt:

Mit wie leichtem Herzensregen
Horchet ihr der Glocke nicht,
Die mit zwölf bedächtgen Schlägen
Ruh und Sicherheit verspricht.

Darum an dem langen Tage,
Merke dir es,liebe Brust;
Jeder Tag hat seine Plage,
Und die Nacht hat ihre Lust.

 

 

<日本語訳>

悲しい響きで歌ったりしないで
夜に独りじゃ寂しいなんて
ダメよ、夜はね、ステキな美人さんたち
みんなで騒ぐためにあるんだから

あなたたちは昼間に楽しく過ごせるのかしら
喜びを邪魔してるだけの昼に
気晴らしくらいならいいけれど
他には何もいいことはないでしょ

けれど夜の時間に
ランプの甘い火影が洩れて
くちびるからすぐ近くのくちびるへと
たわむれと愛とが注がれていく時や

せわしなく浮気なキュービッドは
いつもは激しく、大胆に急ぎまわってるのに
ちょっとした贈り物で時々
ささやかな戯れに浸り込んだりする時

ナイチンゲールが恋する人たちに
愛をこめて歌を歌ったりする時
たとえそれが囚われ人や悲しみにくれる人には
嘆きの声にしかきこえなくても

そんなときには軽やかな胸の鼓動で
だれも鐘の音は聞こえないの
十二時のおごそかな鐘が
安らぎと憩いを約束することを知らせても

だから長い昼の間には
このことを覚えておいてね、愛しい胸よ
毎日 何かしらつらいことがあっても
夜には喜びがあるのよ

 

 

良い声は大事なんですけど、
私はトカールのように物語を表現できてこそ歌が上手いと言えると思っていて、
その手段としてディナーミクとか発音を飛ばす技術、高音を歌う技術が存在しているのだという考え方です。
なので、良い声と良い歌は根本的に別物でし、超絶技巧などのテクニックも然り、
それを使って何を表現したいのかが結局歌手の力量で、
技術の習得だけを目指している歌手の演奏は、このトカールのシューマンのような演奏には一生なりません。
逆に、技術が追いついていなくても、表現したい世界が伝わってくる演奏には魅力があったりして、そういう部分は、結局歌っていて楽しいというのが根本にはあるのだと思います。

最近インタビューをお届けしている高橋達也さんも、ご自身の動画の中で、
技術的なことを習ったのはイタリアで出会った先生ですが、一番最初に習った先生に歌う楽しさを教えて貰ったことに感謝の意を述べておられました。

トカールの演奏は本当に歌ってて楽しそうなんですよね。
実は、個人的に彼女には特別な思い入れがありまして、

メトネルという作曲家の歌曲の楽譜を貰ったことがあったりします。
そんな訳でメールのやり取りもしたことがあるので、他の演奏家と比べるとフェアな耳では聴けない部分があることはご容赦頂きたいのですが、そこを差し引いても、今回彼女がリリースする新譜は非常に魅力的だと思いますので、今回このような記事を書かせて頂きました。

 

 

 

 

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