圧倒的な完成度を誇るSabine Devieilheのリサイタル  d’Aix en Provence 2020

Sabine Devieilhe(ザビーネ ドゥヴィエル)の実力はやはり現在随一です。

Warner Classicsが公式YOUTUBEアカウントにドゥヴィエルのリサイタル映像を公開しましたので、今回はそちらを紹介しようと思います。

 

 

 

Sabine Devieilhe sings songs & lieder by Mozart and R. Strauss – Festival d’Aix en Provence 2020

 

 

 

<曲目>

Richard Strauss
1:10​ Breit über mein Haupt, Op. 19 No. 2
3:04​ Brentano Lieder, Op. 68: I. An die Nacht
6:30​ Brentano Lieder, Op. 68: II. Ich wollt ein Sträußlein binden
9:33​ Brentano Lieder, Op. 68: III. Säus’le, liebe Myrte!
13:55​ Brentano Lieder, Op. 68: V. Amor

Wolfgang Amadeus Mozart
17:15​ Ah, vous dirai-je, Maman, K. 265/300e
19:42​ Abendempfindung, K. 523
24:29​ An Chloe, K. 524
27:11​ Dans un Bois Solitaire, K. 308
30:43​ Lied der Trennung, K. 519

Richard Strauss
35:34: Mädchenblumen Lieder, Op. 22: I. Kornblumen
37:40: Mädchenblumen Lieder, Op. 22: II. Mohnblumen
39:09​ Mädchenblumen Lieder, Op. 22: III. Efeu
42:49​ Mädchenblumen Lieder, Op. 22: IV. Wasserrose

Wolfgang Amadeus Mozart
47:47​ Nehmt meinen Dank, K. 383

 

 

このところ日本の発声の常識がおかしい。
ということを今まで以上に追求してい記事にしてきたためか、改めてドゥヴィエルの歌唱技術が多くの歌手とは似て非なるモノ、圧倒的に優れていることを実感させられる演奏会となっていました。

何が凄いかって、絶対に喉を押さないで歌っていること!
通常前に響きをもっていこうとしたり、はっきり発音したりすると、どうしても多少は喉があがって硬い音になったり、レガートが甘くなったり、鋭い高音になったりするのですが、ドゥヴィエルはそういうことが一切ないのです。

恐らく低音なんて近くで聴いたら
「こんな声が舞台の後ろまで聴こえるのあか?」
と思える位小さい声で歌っていると思うのですが、如何せん響きの質がどんな音程、どんなディナーミク、超絶着汚行で歌ってもブレない理想的なポジションで、硬さも一切ないので、小さくても遠くまで飛ぶ声だ。

多くの女声歌手を見てて特に気になるのは、上唇を吊り上げように前歯を見せて高音を出す人が多いところで、アレは絶対に喉が上がるし、”e”母音が特に横に開いた音質にブレ易くなるので、そのまま低音に下がると当然均等な音質にはならず、全く飛ばない中低音になってしまう。
ドゥヴィエルの歌唱を診れば、如何に上唇や頬筋を必要以上に使うことが硬い声の原因になるかよくわかると思います。

彼女はとても明瞭な発音で歌えますが、絶対上唇を過剰に動かして強く子音を前に出したりしません。
こういう技術を一つ一つ見ると、
口内の内圧で破裂音を発音する。と指導する以下のような指導が正しくないとわかるのです。

 

 

 

この方のやっている子音発音は、喋るだけなら良いかもしれませんが、
コレを実践したら絶対早口や高音では歌えません。
なぜなら、息のスピードをコントロールできないので、レガートで歌えないし、舌や唇に力が入るとそもそも高音はマトモに出せない。

こういうのは、子音だけ取り出して、発音する筋肉を鍛えるというトレーニングとしては役に立ちますが、歌う時には絶対にやってはいけないことです。
言うなれば、ダンベルは筋力をつけるには効果があっても、それを持ったまま走ったところで邪魔にしかならないのと同じこと。
実際に歌に活用できる技術と、その技術を身に着けるために行うトレーニングは明確に区別されなければいけません。

 

YOUTUBE上には近頃様々な発声関連の動画が上がっていますが、
結局は優れた歌手の歌唱を徹底的に分析するのが一番確実です。
彼等彼女等はそういった根本的に大事な部分は中々話してくれませんから盗むしかない。

他にも、高音では速い息のスピードが必要だと教わることがあるかと思いますが、
ドゥヴィエルの歌唱をみていれば、そんなに多くの息の量は必要ないことがわかるのです。
勿論個々に持っている楽器によっても一番効率よく声帯が鳴る息の量は異なるでしょうし、小さい声帯ほど少ない息の量でコントロールが可能ではありますが、それなら尚更、体格的に小柄な多くの日本人歌手はそんな一生懸命強い息を吐いて声を絞り出す必要性がないことになります。

このレベルになると、逆に安定しすぎて面白みがないとも言えなくはないので、
ドゥヴィエルの歌唱については好みが分かれる部分があるかもしれませんが、発声技術に関して言えばこれ以上理想的な歌手はいないのではないか?
と思うくらい完成されている。というのが私の意見です。

 

 

CD

 

 

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