英国の若手ソプラノ歌手Alysia Hanshaw の歌声が、某日本の有名歌手の上位互換である件について

Alysia Hanshaw(アリシア ハンショー)は英国生まれのソプラノ歌手。

現在、Royal College of Musicの博士課程の学生のようですが、
何とも日本の某有名ソプラノ歌手と声がそっくりだったので、比較してみようかな。と思って取り上げることにしました。

初めに断っておきますと、決して某有名歌手を誹謗中傷することが目的ではなく、
日本人的なリリコ・レッジェーロの声でも、日本とヨーロッパでどう歌い方に違いがあるのかを比較することを意図としています。

 

まず、ハンショーの歌唱から、

 

 

 

ヘンデル セメレ O Sleep, why dost thou leave me?(6:23~)

 

 

同じ曲で比較ができれば良いのですが、残念ながらそれができないので、
せめて作曲家だけでも揃えようということで、ヘンデルのゆったりしたアリアで比較しようと思います。

 

 

 

 

ヘンデル リナルド lascia ch’io pianga

 

私だけかもしれませんが、このお2人は本当に持ち声が似ていると思うんですよね。
その上、特に”a”母音が鼻に入り易いというところまで2人共似ているときてまして、純粋に発声技術を比較できるという意味でとても興味深いです。

まず、どっちが上手い下手という結論を書くつもりはありませんが、
ハンショーは英語、某有名歌手はイタリア語の作品を歌っているため、
本来であれば、イタリア語の方がレガートで歌い易いはずなのですが、結果は逆となっております。

大まかに言えば、音域によって響きのポジションが変わってしまっているか、統一されているかという違いがあるのですが、ここには大きな落とし穴がありまして、
一般的に高い響きで歌うことが良いと言われているので、高音を出しているポジションで低音も出そうとしているのが某有名歌手です。

高音がキレイに出るのだからそれで良いのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
この歌い方では絶対に安定した中低音は出せません。
と言うのも、喉が上がったポジションを基準としているため、普通に喋れば簡単に出るはずの音域が、歌うと出せないということになるためです。

以下の演奏なんかはその典型だと思います。

 

 

 

モーツァルト ドン・ジョヴァンニ Vedrai carino

キレイな声なんだから別に良いんじゃね?
という意見もあるでしょうが、それは音響の良い小さな会場や、このような録音だからこそ言えることであって、この歌唱で、劇場の後ろまで届くのかどうかというのが、オペラ歌手を名乗るのであれば需要なポイントとなってきます。

キレイな声というだけで良いならマイクを使った歌唱でも別に良い訳で、生の声で広い会場の隅まで届かせる響きがどんな音域でも出せなければ本当の意味でオペラ歌手とは言えない。というのが私の考えであり、恐らく世界基準もそうでしょう。

 

ちなみに、同じ曲を最近取り上げている田中絵里加さんも歌っています。

 

 

 

録音環境があまり良くないですが、音域によって響きの質が変わらず、
常に深さがちゃんとある声です。
深さというのは、一般的に言う、あくびをするみたいに奥を開けるとかではなく、喉が上がっていないポジションで歌えているということですね。
彼女も高音や超絶技巧を得意とするタイプですが、日本国内でしか通用しないか、世界でも通用するかは土台となる中音域にかかっていると言っても過言ではないと思います。

 

 

話をハンショーに戻しますと、彼女は軽い声ではありますが、
口のフォームなんかを見ても明らかに某有名歌手とは違うのですね。

シューベルト Der Hirt auf dem Felsen

10分以上ある大曲な上に、音域的にも技術的にも難しい曲ですが、
細いながらも芯のブレない低音~柔らかい高音まで見事な歌唱を聴かせてくれています。

口のフォームについて書きましたが、ハンショーは殆ど上唇が動かないです。
頬や上唇を上に吊り上げるような動きはそれだけで喉が上がりますので、一流と言われる歌手は殆どそのような動きが見られません。
にも関わらず、某有名歌手のように上の歯を見せて歌う歌手が絶えないのは、その方が高音が出し易いという錯覚から中々抜けられないのか、日常的に喉が上がったポジションで喋っているからなのか・・・。
上に上に意識をもってしまうと、舌にも力んでしまいますし、何より唇が柔軟に使えないために発音にも影響してきます。

ハンショーも冒頭に書いた通り、”a”母音を中心にまだまだ鼻に入ってしまうことがありますが、
まだ学生ということを考えれば本当に将来的な活躍が期待できる歌手だと思います。

某有名歌手のフォームが安定していればきっとこういう感じになっていたんだろうに・・・。

 

最近、インタビューなどで色々な方とお話する機会があるのですが、その時に
「そこまで書くか!」
という印象を読者の方に多かれ少なかれ与えているということがだんだんわかってきまして、
その上、一定の人には確実に嫌われる。
とはっきり言われてしまいました/(^o^)\

しかしその一方で、私と同じか、地方であればそれ以上に多くの日本人歌手に厳しい耳を向けていらっしゃる方もいることがわかってきましたので、今後もこういった記事は引き続き書いていこうと思います。
ファンの方には申し訳ないですが、好き嫌いと上手い下手は別物ですから( `・∀・´)ノ

 

 

 

 

 

 

 

 

4件のコメント

  • 喜右衛門 より:

    ヘンデルのリナルドではなく、「春なのに」って曲がアップされてますよ。
    でも、この日本語の歌では中音域は落ち着いた声で歌っておられるように思います。彼女は録画では本来の声や響きがうまく入らないようで、生の歌唱とは格段の違いがあると思います。(実際の日本語オペラの舞台を聴いたことから判断すると)
    今年のニューイヤーのオペラアリアとは全然別の声だったのでビックリしたほどです。

    • Yuya より:

      喜右衛門さん

      ご指摘ありがとうございます。
      動画を差し替えました。

      日本語の作品を生で聴いたことがないので、そこに関しては何とも言えないのですが、
      ミューザ川崎や芸大の奏楽堂のような広いホールで、ラテン語やイタリア語の作品を聴いた限り、
      彼女の中低音がちゃんと聴こえたためしが私には残念ながらないんですよね。
      生で聴いたのも、ウィーンから戻ったばかりだったと思うので、もう10年以上前の話ですが・・・、

      これで今年、こうもりのアデーレではなくロザリンデを、しかも別日が木下美穂子氏というキャストで歌うというのですから、
      ご自身の声と客観的に向き合えているのか疑問です。

      • 喜右衛門 より:

        日本語歌唱はオケ伴で今年に聴いたのですが、大ホールではなかったですので、すみずみまで聞こえるかどうか、自信はないです、すみません。
        でも、ロザリンデは声に合ってませんね。雰囲気、歌手としての個性にも…。
        もっとご自身にあったレパートリーで活躍してもらいたいものです。

        • Yuya より:

          喜右衛門さん

          必ずしも大きなホールで響き渡る声が一流だとは思いませんが、
          彼女の場合は声量がそんなにある訳でもないですし、
          オペラよりは宗教音楽とか、それこそ日本歌曲を歌った方が良さが出ると思いますので、
          そういう部分も含めて、人気が出てしまったが故の難しさもあるんでしょうけど、声を保って長いキャリアを送るためにもっと冷静にご自身の声と向き合ってほしいですよね。

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