個人的に一番好きなイタリア人バリトン歌手を礼賛するだけの記事

皆様はイタリア人で優れたバリトンと言えば誰を思い浮かべますか?

SP時代の歌手が好きな方なら、Titta Ruffo、Giuseppe De Lucaといった巨頭がおり、
戦後なら、イタリアオペラファンお馴染みのEttore Bastianini、Aldo Protti、
そして、個人的には称賛の声しか聞いたことがないPiero Cappuccilli
更には一部から本物のヴェルディバリトンの声との声も出るGiorgio Zancanaro
全盛期の演奏なら上記の歌手に引けを取らないだけでなく、歌曲の演奏でも圧倒的な存在感を示したRenato Bruson、70歳を過ぎても衰え知らずのLeo Nucciと、有名所を挙げただけえもイタリア人歌手の層の厚さを感じる訳ですが、

私が今一番好きなイタリア人バリトンは、上のいずれでもなくRenato Capecchiです。

 

 

この人は、バスティアニーニにも劣らない声を持っていながら、
ブッファとセリアの役柄でしっかり声や言葉のさばき方を使い分けることができ、
しかもブッファバスの役~ヴェルディのバリトンまでこなせて
以下の通り、フォークソング的な作品もこんなしっとり歌えてしまうのだから意味不明です。

 

 

 

 

以下に紹介するのが、愛の妙薬のベルコーレでなく、ドゥルカマーラ役を歌った録音

 

 

この愛妙のキャストがまた意味不明で、アディーナをフレーニが歌っていて、
ゲッダがネモリーノを歌っています。
<キャスト>

Adina – Mirella Freni
Nemorino – Nicolai Gedda
Belcore – Mario Sereni
Dulcamara – Renato Capecchi
Gianetta – Angela Arena

こんなキャストの中でさへ、カペッキの存在感は際立っています。
フレーニはやっぱり違うなぁ。と思うのですが、カペッキは聴いてて面白過ぎます。
こんな聴いててワクワクする歌を歌える歌手がどれだけいるだろうか?
ゲッダとの重唱の生き生きとしたことと言ったらない。
声が良いとか発声技術が優れているだけでは絶対にたどり着けない領域の演奏なので、

30分辺り~43分40秒位までを是非聞いて頂ければと思います。
ソロで歌う場所の適度な崩し方、アンサンブルのハマり方、どこを聴いてもゲッダとカペッキの演奏には衝撃を受けます。

 

 

 

そしてモーツァルトでは、フィガロの結婚からフィガロの有名なアリア

 

モーツァルトにしてはヴェリズモ的な表現をしているので、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんし、私ももう少し大人しい演奏が好きではありますが、
カペッキは発声もリズム感も崩さずにやりきってしまう辺りが恐ろしい。こんな演奏真似できる人はいないでしょう。

 

 

そして以下がリゴレットのアリア

 

 

途中で上のGを出していませんが、ドン・ジョヴァンニではAを出している録音がありますし、
セビリャのフィガロも歌っているので、高音が出ない訳では全くありません。
ブッファを歌っている時同様に発音は明確なままで、声に深さと強さが加わり、感情を前面に出した熱が籠っていながら完璧なレガートを実践している。
もう凄いとしか言いようがありません。
数ある名演の中でもトップクラスかもしれません。

 

 

 

最後が一番有名な映像かもしれません。
モナコがオテッロを歌った映像でイヤーゴを歌っているのがカペッキです。

 

 

一度YOUTUBE上からこの映像は削除されたのですが、
今年の5月に再アップされたようです。
そんな訳で、またいつ削除されてもおかしくないので、まだご覧になったことのないかたは早めにご視聴されることをお勧めします。

 

そんな訳で、私にしては珍しいかもしれませんが、本日はただカペッキを礼賛する記事でした!

5件のコメント

  • ミク より:

    カペッキさん
    知りませんでしたが、とても素晴らしい歌手ですね!

  • 山下 明 より:

    カペッキはブッファ歌手だと思っていましたがすばらしいベルディ歌手でもあったのですね、50年ほど前のイタリアオペラでブッファ歌手だと思っていたブルンスカンテーニのロドリーゴも同じく素晴らしかった。声の大小より声が前に出て聞き手に届くといった感じでした。しかも歌に品がありました。エリザベート役のジョーンズはまだ新人だったのでタクシーが当たらず帰りの電車で一緒だったのを思い出します。嘘のような時代です。

    • Yuya より:

      山下 明さん

      コメントありがとうございます。
      ブルスカンティーニはNHKイタリア歌劇団の映像が残ってましたよね。
      私はファヴォリータで彼の演奏を聴いたのが初めてだったので、ブッファ歌手というイメージがありませんでした。
      今度ブッファ作品もじっくり聴いてみますね。

      一流のブッファ歌手は本当の意味で言葉を飛ばせる歌唱を見に着けているので、ヴェルディバリトンと俗に言われる歌手より柔軟な技術を会得している気がします。
      最近まで活躍していた歌手ではブルーノ・プラティコがその系譜でしょうか。

  • カズマ より:

    まずは、このような情報を提供してくださり、感謝申し上げます。アニタ・チェルケッティが好きで、運命の力の海賊版?CDを購入しました。フラ・めりとーねをカペッキが歌っていますが、貴殿のご指摘通り素晴らしい歌手だと感じます。これからも、貴重な情報をいただいて、道の歌手に出会えることを楽しみにしております。

    • Yuya より:

      カズマさん

      コメントありがとうございます。
      アニタ・チェルクェッティがお好きとは!!
      過去に活躍された歌手について、むしろ私よりよっぽどお詳しいのではないかと推察いたしますが、
      この時代はカラス、テバルディ、コレッリ、モナコ、ディ・ステファノという巨頭に隠れてしまっていながらも、全く実力的には劣らないような歌手がいますし、
      先日他界されたロフォレーゼのように、80歳を過ぎても圧倒的な声を維持していることで再評価されるような歌手もおりますから、
      少しでもご期待に沿えるよう、過去の歌手についても再考する記事を書いていければと思います。

カズマ へ返信する コメントをキャンセル