期待の若手正統派リリックソプラノ Eliza Boom

Eliza Boom(エリザ ブーム)はニュージーランドのソプラノ歌手。

ブームは現在バイエルン国立歌劇場の研修所メンバーとして活躍しています。
これまで錚々たる歌手のマスタークラスに参加していて、
例えば、Kiri Te Kanawa、Simon O’Neill、Barbara Frittoliといった方がいます。
中でもフリットーリのマスタークラスの映像はYOUTUBEにもアップされています。

 

 

 

2016: Eliza Boom, soprano. MasterClass with Barbara Frittoli and David Harper

若いソプラノらしく、母音が横に開いてしまう癖があって、一般的に浅い響きになる部分が散見されるものの、レガートへの意識の高さや、押さないように息の上で言葉を扱おうとしていることが見て取れてる歌唱をしているので、技術的には課題が多いものの、歌にはどことなく魅力があります。

これから1・2年後の演奏が以下で、
歌っている曲も、マスタークラスで歌っていたのと同じです。

 

 

 

モーツァルト フィガロの結婚 Porgi, amor

マスタークラスの時より、母音の幅が整ってきていて、平べったかったところが随分改善されています。
まだ所々鼻に入るところはあるのですが、密度の濃いレガートと明瞭な発音を両立できているところはとても素晴らしいです。

 

 

さらに2019年の演奏

 

グノー ファウスト O Dieu!… Ah! Je ris de me voir si belle

2016年の演奏から3年でここまで成長するというのがまず驚きなのですが、
まず感情を前面に出す歌唱が個人的にとても好きです。
声ではなく言葉で表現しようとしているので、ディナーミクの変化がそこまでない演奏であっても決して退屈にはなりません。

声的には、中低音で特に”a”母音が詰まり気味になり易いのが勿体ないですが、2016年では浮いた感じの声で、下半身と喉から上がまだ上手く繋がっていないようにも聴こえましたが、そこが改善されて、胸の響きがあるところで、高音まで繋げられているのは立派だと思います。

そして以下が2020年の演奏

 

 

レオンカヴァッロ 道化師 Stridono lassu

成長スピードがちょっと半端ないので驚いて今回記事にしたんですが、
声が良い以前に、歌の聴かせ方が上手いと言えば良いのでしょうか?
ブームの歌唱は自分の歌の世界を持っていて、本当に生き生きとした歌を歌う。そこが最大の魅力だと思います。

後はもう少し少ない息の量で歌えれば・・・と言ったところでしょうか。
どこを切っても全力投球の演奏は、若い内は良いですが、もっと力を抜きながら演奏効果はより高められるという術を身に付けられれば有名劇場で主役を歌っても全然遜色ないレベルの声だと思います。

前に押すだけでなく、有名所で言えばストヤノヴァのように後ろに引くようなピアノの表現や、呼吸のスピードと同期した言葉のリズム感がでてくると、もっと歌唱に緩急がでてくると思います。

 

 

Krassimira Stoyanova

ブームはまだまだ全てを前に響かせようとし過ぎる感じがしるので、
その分どうしても息が太くなってしまうのだと思います。
言葉を前でさばくことが、イコールで響きも前に集めることになってしまっている感があるので、今後どうやって、繊細な響きを会得していけるかに注目していきたいと思います。

それにしても、久々にストヤノヴァ聴いてみたら、やっぱり上手いなぁ。

 

 

ブーンは今後バイエルン国立歌劇場で小さな役をいくつか歌うことが予定されているので、主役クラスでのデビューはまだ先だと思いますが、この成長速度を見ていると、1・2年後でもどうなっているか想像がつきません。

YOUTUBE上にはドイツ語の作品を歌った映像がありませんが、今後はワーグナー作品も歌うようなので、レパートリーの面でも注目していきたいと思いおます。

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