「表現力」についての考察

音楽について文字にすると、抽象的で伝わるようで伝わらない言葉って結構あるもので、

例えば歌唱に於ける「表現力」という言葉もその一つかと思います。

そんな訳で、こんかは少しでも具体的に定義できないかと思って動画を作ってみました。

 

 

 

まぁ、個人的にオレナ・トカールという歌手に特別思い入れがあるという理由もあるのですが、それを差し引いても彼女の歌唱は本当に魅力的だと思いますので、教科書として使わせて頂きました。

 

このような記事ならば他人の演奏と比較して、解説するところなのですが、
YOUTUBEの性格上、比較対象とする別の歌手を批判的に書いて動画にしてしまうのは、後々問題になる可能性があるので、どう文章を書いて良いかは言葉を選ばないといけないので、結構気を遣います。

 

そんな訳で、動画にはできない比較をここでしたいと思います。

 

 

マリエッタの歌の場合

Renée Fleming

役を歌い分けようと言う気があるのかわかりませんが、
ただ書かれた旋律を綺麗に歌ってるだけにしか聴こえないんですよね。

マリエッタとパウールのセリフで、声の出し方にも、発音にも全く変化が感じられませんし、
厳しい言い方になりますが、こういう演奏だったら歌詞いらないよね。
となってしまいます。

それ以外にも、トカールと比較してしまうと、フレミングは母音の幅が整っておらず、
音域によっても響きの質が変わってしまっています。
特に”i”母音は奥まってしまっている上に横にも広がっているので、一番響きが前に出てピントが合い易い母音にも関わらず、どこか濁ったような音質になってしまっています。

トカールの巧さについては動画の中で分析していますが、
彼女の素晴らしいところは、曲によって違ったアプローチで響きのポイントを変えることができるところ、これは優れたブレスコントロールによるものではあるのですが、
それ以外にも、とにかく中低音が美しい。

 

イタリア物の歌唱は、個人的にはドイツやロシア物に比べれば魅力を感じないのですが、
それでも中低音での発音の明瞭さは、ミミのアリアなんか聴いたら流石だなと思う訳です。

 

 

 

 

 

 

でも、やっぱりトカールの透明感があって母音の幅が整った声は、
ドイツ語で、そこらのアリアより華やかなメトネルの歌曲でこそ良さが引き立つように思います。

この人はメトネルの歌曲の魅力を広めるのに貢献してると思いますので、
もっと頻繁に演奏されるようになれば、トカールのメトネルは代名詞になるのではないかなと思っていたりします。
いつか、メトネルの歌曲集とかCD出して欲しいですね。

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