ウクライナに素晴らしい若手ソプラノ発見!

今、ウクライナの歌手について色々調べていて、本日、ウクライナのバス歌手について動画にまとめました。

 

 

 

 

次はソプラノ歌手について動画にまとめようと、調べていた時、素晴らしい若手歌手を発見したので、記事にすることにしました。

名前は

Tetiana Miyus (テティアナ ミユス)

 

とにかく一声聴いたらわかる洗練された声、この人は現代既にトップクラスのモーツァルトソプラノかもしれません。

 

モーツァルト ドン・ジョヴァンニ in quali eccessi,o Numi

細くて硬質な響きにも関わらず、決して鋭くなく、非常に密度の濃い声なので、
低音でも響きが散ることもない。
モーツァルトの多くの作品を歌うのに、これほどピッタリな声もそうないと思います。

 

 

そういえば、二期会が、「影の無い女」の演奏を断念して、
フィガロの結婚をやることにしたようですが、そこでスザンナ役を歌う2人の歌手が以下のような歌唱です。

 

 

宮地江奈

 

 

 

種谷典子

 

 

スザンナって別に超高音は必要ない役なんですよね。
重要なのは中低音だということがキャスティング考える人は理解できていないのか、
それとも、宮地氏なんかは現在アイドル的な人気が一部にあるので、そのキャラクターから採用したのか?
まぁ、何にしても、お二人とも低音が全部太くなって落ちていらっしゃるので、半分ミュージカルみたいな歌唱ではなく、大げさな演技と容姿どうにかするスザンナになることはほぼ間違えないでしょう。

 

スザンナをちゃんと歌うには、それこそ、ミユスのような歌唱技術が必要なのです。

 

 

モーツァルト フィガロの結婚 Deh vieni non tardar

この演奏を聴いて頂ければ分かると思うのですが、良い演奏をするには良い中低音が絶対必須です。
超高音とか超絶技巧とか個人的にはどうでも良いので、なぜ誰でも当たり前に出せる音域を、
日本人ソプラノ歌手の大半は適当に歌ってしまって、人よりも美しく歌えるように磨こうとしないのか・・・。

結局、中低音がちゃんと出せないということは、声を出し始める段階で、既に喉が上がっているので、日本人だと分かってしまう浅い声、鼻に入った声になる。
ミユスの演奏と母音の音質を比べると違いがよく分かるのですが、特に”e”母音なんかは日本人ソプラノの多くが崩れて平べったくなってしまう傾向にあります。

ミユスは、本当に母音の響きのバランスが良いです。
ただ、声質は決して明るくないので、”a”母音も”o”寄りの響きで、開放感には欠けるところがあり、
高音は喉声っぽくなってしまう場合があります。

 

グノー ファウスト

この演奏なんかは、彼女の良さがあまり出ていないかな?と思います。
特に高音には余裕がなく、ちょっと勢いで歌っているような感じなので、
もしかするとフランス語が彼女の場合は、フォーム的に良いところにハマり難いのかもしれません。

 

 

ラフマニノフ Сирень

この演奏は素敵なのですが、声の面ではモーツァルトでの声と比較すると硬さがまだある。
それでもファウストよりは良いですね。

 

 

 

ハイドン 天地創造 Und Gott sprach … Auf starkem fittiche

この演奏は良いですね。
ドイツ語だと、変に喉の奥に力が入らずすんなり響きに言葉が乗せられている感じで、
一番悪い癖が目立たない気がします。

こんなところからも、やっぱりミユスはモーツァルトを歌うとより輝くタイプなのではないかなと思ったりする訳ですが、皆様はどのように感じましたでしょうか?

 

参考までに二期会のフィガロの情報はコチラをご覧ください。

 

7件のコメント

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    動画制作お疲れ様です。

    動画を拝見しましたが、やはり最初に取り上げるのはBoris Gmyriaですよね。
    ウクライナの苦難の歴史の象徴ともいえる困難な人生を送ったバス歌手ですから。
    彼の歌うウクライナ民謡はもちろん上手いのですが、それ以上の思いや気迫が感じ取られる気がします。
    特に同じぐらいハイレベルのReizenの歌うウクライナ民謡と比較したときにそれを痛感します。Reizenは確かに上手く歌いますが、Gmyriaの歌唱に感じ取られる痛ましさは無いです。
    (Reizenはユダヤ人でウクライナ人から迫害を受ける立場でしたからウクライナに関してはGmyriaほど思いが強くなかったのでしょうね。)

    ・Boris Gmyria ウクライナ民謡 “ДИВЛЮСЬ Я НА НЕБО”
    https://www.youtube.com/watch?v=nk0IOnVa38g

    ・Mark Reizen”ДИВЛЮСЬ Я НА НЕБО”
    https://www.youtube.com/watch?v=S_mQPmUCjxE

    Pavlo Balakinは、Reizenの次の世代であるIvan Petrovタイプの輝かしい明るい声を持ち、高音が良く出る良いバス歌手ですね。素晴らしいバス歌手だと思います。

    そしてTaras Konoshchenko!豊かで明るい響きを持つバスですね!まさしくBoris Gmyriaの後継者と言ってよい気がします。

    ウクライナ出身でベラルーシで活躍しているАндрей Валентий がBoris Gmyriaの後継者に近いかなと思っていましたが、 Konoshchenkoの方がはるかに良い声を持っていますね。

    ・Андрей Валентий 「ヴァリャーグ商人の歌」
    https://www.youtube.com/watch?v=eUKXH6PNPz8

    しかもАндрей Валентийは有名になってからマイクでポップ歌手のように歌ったり、力みが入る歌唱スタイルになりつつあるので残念です。

    ・バンドと共にマイクで歌ってしまった”Le veau d’or”.
    https://www.youtube.com/watch?v=Vtib4DnaFMo

    ・力みの入った”Чорнії брови, карії очі”
    https://www.youtube.com/watch?v=UYyzLePmsG4

    マイクは声楽歌手にとって良くないと聞きますし、ウクライナ出身のソ連の有名バリトンЕвгений Кибкалоがマイクでポピュラーソングを歌いすぎて喉を潰して短命に終わった例もあるので、マイクで歌うのは極力避けてほしいですね…

    ・Евгений Кибкало「エレツキーのアリア」
    https://www.youtube.com/watch?v=UBvSTpd1Aus

    ・マイクで歌ってしまったЕвгений Кибкало&バス歌手Марк Решетин「心騒ぐ青春の歌」(ライブ映像)
    https://www.youtube.com/watch?v=rwzxY5R16Oc

    Yuya様のおかげでBalakinと Konoshchenkoの二名の現代のバス歌手を鑑賞リストに加えることができました。ありがとうございます!

    追記:動画タイトルについて、動画検索して見る人が増えるかもしれませんから、英語だけではなく日本語も入れた方が良いような気がします。
    例えば、「ウクライナの知られざるバス歌手 5Ukrainian Bass Singers」のように

    • Yuya より:

      声楽鑑賞初心者様

      ご覧くださりありがとうございます。
      タイトル、助言頂いた通り日本語を追加しました。
      でも、残念なことに、私の選ぶ歌手って日本人より海外の方の方が動画見てくれるんですよね((笑)

      Boris Gmyriaが西側で歌っていたら、キプニスより有名になっていたでしょうね。
      こうやってウクライナのバス歌手を聴いていて思うのは、やはりハンス・ホッターは過剰評価された歌手だなってことですね。
      あの時代はDECCAかEMIで大々的に売り出された歌手が日本では名歌手扱いされてる感があるので、
      Mark ReizenやBoris Gmyriaが西側で歌っていて、大手レコード会社からCDを出していれば全然違った評価をされていたのでしょうね。
      まだまだ私の知らない素晴らしい歌手がいるに違いないので、発掘して紹介していければと思います。
      Balakinはホント良い歌手で声だけ聴いたらイタリア人歌手かと思いますよね。
      まるでRuggero Raimondiのよう。

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    Yuya様

    うーん、そもそも日本は残念なことに声楽愛好家って少ないですからね、母数の問題で海外の方が多くなる(笑)。
    あとオペラ好きな人の中には、声楽が好きというよりも高級文化として愛好する人(「オペラコンサート観に行く自分はお洒落」や「オペラ好きな自分は趣味が良くて教養ある」って思う人)も多いかと思います。
    そういう方は実力如何じゃなくて肩書きを重視して、すでに有名な大物歌手・歴史的名歌手ばっかり重視するでしょうから、知られざる名歌手の動画に興味を持たないでしょうね。
    老体に鞭打つドミンゴが好まれるのはその象徴でしょう。
    ただ、私も極力肩書きで判断しないよう注意はしますが、けっきょく聴く耳を専門的に訓練していないので肩書きを利用したりします。
    素人にとってはどうしても肩書きっていうのは重要な情報になってしまいますよね…
    無論そういう見栄的な動機の愛好家も声楽界を金銭的に支えている重要な方々でしょうし、見栄から初めて本気の愛好家になる人も多いでしょうから、やはり重要かと思いますが。

    Boris Gmyriaの歌唱は素晴らしいですからね!確実に席捲してたでしょうね。
    ただ彼も西側に亡命するチャンスはいくつかあったようですが、「私がウクライナから離れることは考えられない」と迫害を受ける覚悟で愛するウクライナに残ったらしいです。
    だからこそ、ボリショイや西側のオファーを拒否してウクライナに残ることを選択したSolovyanenkoと同様に、ウクライナの英雄的歌手として崇められているんでしょうね。

    レコードで売られた一部の歌手が評価を集めすぎてしまう問題は仕方ないかと思います。
    昔は日本国内で海外のオペラ歌手を聴く機会は、数少ない公演と、これまたバイヤーが選んだ数少ないレコードですからね。今みたいにネットで世界中の過去現在の有名無名の歌手を大量に聴く時代じゃないので、どうしてもレコードで聴ける範囲でしか判断できない。(神保町にはソ連のレコードを置いている変わった店がありましたが)
    しかも舶来品信仰の時代だから海外の歌手なら素晴らしいだろうとなってしまうし、当時流行の教養主義でそれらが神聖化されて批判が許されなくなってしまう。
    あと、三大テノールが典型ですが、世界的名歌手現象は、プロモーションで名歌手を世界的名歌手にしてCDやレコードを世界的に売りつけるビジネスがからむかと思います。
    特にネットが無くて公演以外で聴く機会がCDやレコードに限定されていた時代は、どうしてもビジネスに選ばれることで世界中にCDやレコードが流通した名歌手が世界的に有名になって、一方で他の勝るとも劣らない名歌手が全然知られていないという知名度の格差が生じるんでしょう。
    その結果、世界的有名歌手はどうしても評価過剰になって、知られざる名歌手は評価不足になりがちになるのだと思います。
    それの一番の被害者が西側のビジネスから締め出された、アトラントフ世代より前のソ連歌手なんでしょうね。

    ReizenやGmyriaが西側で歌っていたらどうなっていたんでしょうね。多分有名バスの勢力図はがらりと変わっていたでしょうし、今のバスにも多大な影響を及ぼしていたでしょうね。
    あとソ連の迫害を受けないですんだGmyriaは確実に早死にしなかった!
    ただスター歌手の場合、西側だと興行のために過酷なスケジュールを組まされることもありますから、クラウスみたいに制限を掛けない限りReizenの声は長続きしなかったかもしれません。
    でもテノールと違って西側ではバスはあまり人気がないから過酷なスケジュールを組まずに済んで結局大丈夫だったかも。

    Balakinは確かにイタリア的に聞こえますね。素晴らしい声ですがスラブ的な癖が無くなって少し寂しいと言えば寂しいかもしれません。彼って果たしてゴドゥノフは似合うでしょうかね。グレーミンは結構様になっていましたが。

    是非是非知られざる歌手の発掘お願いします!ウクライナやその他の国々でばんばん発掘しちゃってください!ちなみにあとMaxim MikhailovとAlexender Pirogvを調査したら30s~50sの三大バス歌手を制覇したことになりますよ。
    ・Alexender Pirogvのアリア集(30S~50sの歌唱が揃っています)
    https://www.youtube.com/watch?v=WsV3GSG79Jw&t=4072s

    そういえばソ連時代のPetrov以前の有名バスをリストアップしたブログがあったのでリンクを貼っておきます。

    https://ameblo.jp/kasitanka/entry-10786857947.html

    ロシアのラジオ番組を要約した記事のようですね。ラジオホストもやっぱりReizenを一番評価しているんですね。

    このなかでЕвгений Иванов は弟子で現役ボリショイ劇場ソリストバス歌手のВладимир Маторинいわく、優れた歌手であったがReizen、Mikhailov、Pirogovの三大バスの存在のため活躍できなかった悲劇(?)の歌手だそうです。
    ・Евгений Иванов
    https://www.youtube.com/watch?v=bHJaNSuwkLQ

    Александр Батуринはギャウロフのモスクワ音楽院時代の先生だそうですが、なかなか強烈な声です。
    ・Александр Батурин
    https://www.youtube.com/watch?v=YV9c3mbkBMU

    このリストで漏れているのはウクライナのBoris GmyriaとIvan Patorzhynsky ですね。Patorzhynsky はフルボディのような低音と感じます。なんとなく頭に怪物大蛙が浮かびました(笑)。この声の厚みはNesterenkoにも似ている気がします。

    ・Иван Паторжинский(Ivan Patorzhynsky )
    https://www.youtube.com/watch?v=_dhfjT3DeUY&t=152s

    最後に2019年にSolovyanenkoを偲んでキエフのコンサートでドミンゴが
    ウクライナ民謡を歌う動画があります。

    https://www.youtube.com/watch?v=N9ee_uEFDj0

    Solovyanenkoがウクライナ国民にいかに愛されているか、そしてヨーロッパ声楽界ではSolovyanenkoが有名であることが分かるかと思います。

    長文失礼しました。今後も興味深い動画や記事を待っております!

  • タグイ より:

    ウクライナ歌手の一連の動画、全て見させて頂きました。知らない歌手も多く、大変勉強になりました。
    ウクライナといえば、この前、あのbenjamin bernheimと andrei bondarenkoというウクライナのバリトン歌手がドン・カルロの二重唱(https://youtu.be/MIqPhHooJBo)を歌ってまして、benjamin bernheimはもちろんなのですが、バリトンのandrei bondarenkoもわりと上手い気がしました。まだまだ初心者のためあまり自分の判断に自信が持てませんが、出来ればYuyaさんのご感想も聞かせてもらえればと思います。

    • Yuya より:

      タグイ様

      コメント頂きありがとうございます。
      andrei bondarenko仰る通り良い歌手ですね!
      良い頃のLudovic Tézierに似た、重い声ながらも良質な響きで歌えるバリトン歌手ですが、
      まだ若いのでので、深さや低音の響きの弱さはありますけど、将来的に私も注目しようと思います。

  • JK より:

    タグイ様が紹介して下さった動画、拝見しました。「ウクライナと団結」をテーマにしたフランスの音楽会なのですね。リベルタ!が何度も出てくるこの歌を、ウクライナ人歌手がどのような思いを籠めて歌っているのか、と考えると胸が痛くなります。

    • Yuya より:

      JK様

      コメントありがとうございます。
      仰る通りですね。
      しかし同時に私はロシア人芸術家に対しての相次ぐ契約破棄騒動にも心を痛めております。
      国家と国民は結局切り離して観られないのでしょうね。
      本当の意味での寛容さとは何なのか。色々考えさせられてしまいます。

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