Mexico Opera Studio ガラ・コンサートは超ド級な才能の宝庫!!

Mexico Opera Studio(MOS)というところのコンサートがYOUTUBEにアップされたので、
歌手の実力を聴いて行こうと思います。

 

メキシコは秀逸なテノールを多く輩出している国ではありますが、
実際メキシコの劇場やコンサート映像はあまり見た記憶がないので、実際国内で活躍している歌手がどんな感じなのか知る良い機会かもしれません。

 

 

 

<CAST>

Sopranos:
Valeria Vázquez
Fernanda Allande
Diana Rojas

Mezzos:
Itzeli Jauregui
Estefanía Cano
Daniela Cortés (Junior)

Tenores:
Manuel Dávalos
Salvador Villanueva
Kevin Hernández (Junior)

Barítono:
Fernando Cisneros

Bajos:
Carlos Adrián Hernández
Aldo Arenas

Pianista:
Rodrigo García

 

 

全体的にレベルが高く、基本的に響きのポイントが皆良いポジションにあるのが印象的でした。
その中でも特にズバ抜けて優れている歌手がメゾソプラノのEstefanía Cano

この人はもしかしたら現在でもトップクラスのメゾと言ってしまっても良いかもしれない素晴らしい才能だと思います。

 

今年メキシコの歌劇場にデビューしたばかりのようなので、まだ詳しいプロフィールを見つけることができませんでしたが、2020年にメトの新人オーディションのメキシコ予選では勝ち抜いていた記事を見つけることができました、
ただそれ以降のことはわかりません・・・。

 

上に挙げた動画では、18:50~ ロッシーニのセビリャの理髪師のアリアを歌っています。

 

 

こちらは2020年の演奏のようですが、既に完成されて歌唱をしていることに驚かされます。

 

 

 

そしてこちらが2022年の演奏。

ドラマティックな曲を歌える声で、ロッシーニも歌える技術がある。
全く声に無駄な重さがなく、音圧ではなく、響きの解放でドラマを表現できるメゾソプラノ歌手は、最近の歌手だとシメオーニくらいしかパっと思い浮かびません。

 

 

 

Veronica Simeoni

 

カノはシメオーニと同じような発声技術で歌っているように聴こえるのは私だけでしょうか?
響きのポイントは前歯~鼻の下付近にあって、どの音域を歌ってもこのポイントからはずれない。

響きのポイントだけを追い求めると、どうしても押したような硬い音になってしまうのですが、この二人は所謂喉が開いた声。
つまりは舌の力み、母音や子音に影響されて喉の空間が狭くならずに発音する技術があってこそ実現できることです。

フォルテでも必要以上に息の圧力を強め過ぎず、声帯を効率的に安定して鳴らせるブレスコントロールが出来ていて、これらの技術が揃ってはじめて彼女達のような歌唱が可能となります。
ただ良い声だけを追い求めてたどり着ける発声技術ではありません。

 

カノの歌っている時の表情を見ても、どこにも力みが見られない。

 

高音を出している時の画像ですが、口が縦に開いて、下顎や頬筋や肩に力みがなく、眉間にシワができるようなことも勿論ない。
楽に声が出せていることがよくわかります。

これだけ優れた歌手にも関わらず、
まだEstefanía CanoのYOUTUBEチャンネルの登録者数が70人に満たないのが理解できません。

 

もう少し活躍の場が広がって、プロフィールがわかったら改めて彼女については記事を書こうと思います。

その他にも素晴らしい歌手が揃っています。
下手したら一流歌劇場のガラ・コンサートよりここに集まった才能はとんでもない気がします。

 

 

ソプラノのValeria Vázquez

 

響きのポイントが大変素晴らしいです。
重い曲を歌っても声が太くならないので、ディナーミクのコントロールもしっかりできる。
ただ、喉がまだ解放し切れておらず、前の響きが強すぎるので、硬さがあったり、
レガートが甘かったりといった改善点もみられます。

前の響きに偏り過ぎると、ディナーミクがつけられても表情に緩急がつかないと言えば良いのでしょうか。あまり音色に変化をつけられないので、上の演奏では蝶々さんの中低音なんかは、表情を付けるのにかなり浅い声になってしまっていますね。

それでも高音がスカンと抜けるところは見事で、この歌唱ならかなり広いレパートリーを高いレベルで歌えるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

テノールのSalvador Villanueva

なんとなくヴァルガスに似た声で、中音域~高音まで響きの質にブレがなく、
歌い回しが独特ではありますが、発声技術的には穴がみつからない優れた歌唱をしていると思います。

彼の場合は、フレージングや様式感といった声、ではない部分の課題がクリアできると素晴らしい歌手になる可能性が感じられます。

 

 

バリトン Fernando Cisneros

この人も素晴らしい才能だと思います。
深く重い声を持っていながら、軽く柔らかい語り口の表現が自在にこなせる。

そして更に驚くべき演奏が以下

 

 

魔王弾き語り!!!!
しかもピアノも無茶苦茶上手い。

なんだこの人。
ドイツ語の発音にも違和感がなく、テオ・アダム級のリート歌唱なのではないかと・・・。

ヴェルディバリトンとしてもリート歌手としても一流になれる可能性を秘めた才能。
と言うかすでにこの魔王、弾き語りでこのレベルの演奏ができる人が現在いるのだろうか?
という度肝を抜かれます。

この人もいずれ単体でしっかり記事にしなければいけませんね。

 

ということで、メキシコの歌手レベルは無茶苦茶高い!
それこそ、ヴィリャゾンがメキシコを代表する歌手だなんてとんでもないってことがよくわかりました。
この感じでは、彼レベルの歌手はきっとそこらにいるのでしょう。

こういった演奏を見せつけられるとメキシコの声楽教育がどのように行われているのか興味を惹かれますので、また機会があれば調べてみようと思います。

 

上で取り上げてない歌手も、ソプラノは全員かなりレベルが高いですし、
この演奏会に出ていたバス歌手は個人的にあまり好きではありませんでしたが、決して発声的に変ということはなく、本当に全体的に非常にレベルの高い演奏会だと思いましたので、是非興味のある方は全部聴いてみてください。

 

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