2022 Opera Awardsノミネート歌手(女声歌手編)

だんだん年末という感じになってきまして、2022年を振り返るイベントが増えてきました。
一足早くドイツ・グラモフォンが「グラモフォン・アワード」を発表しまして、

[Artist of the Year]には、ソプラノ歌手のBarbara Hannigan(バルバラ ハンニガン)が選出されたとのこと。

 

この方は、指揮をしながら歌ったり、近現代作品を得意にしていたりと、大変才能のある音楽家であることは間違えないのですが、ソプラノ歌手としてだけ聴いた場合は、声の揺れが気になってしまうのと、空間が狭い声で顔だけの響きで歌っている感じがどうも好きになれません。

 

 

 

 

 

ということで、今回はこの人の特集ではなく、

11月28日に発表されるInternational Opera Awardsにノミネートされた男女の歌手を聴いていこうと思います。
思ったより記事が長くなりそうなので、男女に分けて二回の記事でそれぞれ取り上げます。

ノミネートされている情報の詳細はコチラを参照ください。

 

 

<FEMALE SINGER>

Svetlana Aksenova(スヴェトラーナ・アクセノワ)

メゾソプラノのような深い中音域を持ったロシアのソプラノ歌手です。
私の感覚としては、喉を押し気味に聴こえてしまうのと、息が太過ぎるのだと思いますが、響きのポイント、母音の音質にもブレがあってレガートも甘いので、声には魅力があるのですが、技術的には改善点が多い印象です。

 

 

Stéphanie D’Oustrac(ステファニー・ドゥストラック)

カルメン8を得意としていて、新国にも同役で出演し、YOUTUBEチャンネルのOpera Visionでも配信されたことで、ご存じのオペラファンも多い歌手かもしれません。
個人的には、上で紹介した2017年の映像で独特なカルメン像を作り上げて感銘を受けた歌手でもあります。

決して深い中低音を持っている歌手ではありませんが、繊細な表現と確かな技術で独自の世界観を持った歌唱をするという意味で、良い個性を持った歌手だと思います。

 

 

 

 

 

Sabine Devieilhe(サビーヌ・ドゥヴィエル)

歴史的に見ても屈指のコロラトゥーラの技術を持ったソプラノ歌手で、私もこのブログをはじめた当初からず~~っと礼賛してきた歌手なので、正直書くことがありません。
超高音や、高速でのコロラトゥーラを得意とする歌手は数多といますが、この人は全てをレガートで力みなく、どの音域でも響きのポイントがブレないという重箱の隅すらつつかせない演奏ができるという意味で異次元です。

この人の歌唱をしていると、息を止めて歌ってるんではないか?と思うことがあります。
よくレガートで歌うには「息を流せ」と指導されるのですが、声帯が効率的に鳴る以上の息の量は害にしかならないので、やみくもに息を流すことは逆効果になります。
最も効率的に声帯を鳴らせる息の量を均等に出し続けることが実際は一番重要で、それは実際ハミング程度の息の量で充分だと言うのが最近勉強していて感じるところです。
この件について、もし需要があれば動画で詳しく解説することも考えていますので、ご意見があればコメントお願いします。

 

 

 

 

 

Federica Lombardi(フェデリカ・ロンバルディ)

高音の響きポイントが素晴らしい分、高音に抜けていくまでの過程の響きにブレがあるのと、硬さがあるところが残念ではありますが、このアリアがそもそも粗だけが目立つ非常に難しい曲で、これだけきっちり声をコントロールしてレガートで歌えているだけでも十分立派とも言えます。

中低音の課題については、コジのアリアの方がよくわかるかもしれません。
以下の演奏を聴くと、とっと喉が上がっているのか、もっと胸の響きと連動できればなぁ。というのを感じます。

 

 

 

Aušrinė Stundytė(アウシュリネ・ストゥンディーテ)

響きに尖ったところがなく、ドラマティックな歌唱をしても柔らかさがあって、上で紹介したロンバルディの足りない部分を持っている歌手と言えるかもしれません。
ただ、発音のポイントがやや奥めなので、全体的に悪い意味で暗い音色になってしまって、プッチーニの音楽と声との相性や、発音の明瞭さの面では勿体なさを感じます。

 

 

Pretty Yende(プリティ・イェンデ)

現在もっとも勢いのあるソプラノ歌手の一人と言っても良いと思います。
若くして成功した歌手なので、声を亡くすのも早いのではないかと心配していたのですが、
例えば2014年の演奏と比較すると立派に成長しているのがわかった安心しました。

 

2014の演奏も上手いのですが、どうしても軽い声のソプラノは上半身だけで歌っている感じになり勝ちで、イェンデも例外ではありませんでした。
しかし最近の演奏では、響きを意図的に前に集めた感じがなくて、喉が開いた声になっているので、低い音域でもちゃんと響きが乗ったままで歌えています。
売れたことで天狗になってフォームを崩す歌手も沢山いる中、こうしてしっかり技術を磨き、歳を重ねることによる身体の変化に合った歌唱をできている点でも、彼女は今後も応援したくなります。

 

 

 

 

以上がノミネートされた女性歌手になります。
Ausrine Stundyteは今回初めてしった歌手だったのですが、
この人の映像探していたら、超高音を得意としているロッシーニテノール、Michael Spyresがトリスタンを歌っている、トリスタンとイゾルデ2幕の映像がありました。

 

米国人ロッシーニテノールは、クリス・メリットやグレゴリー・クンデといった、ロッシーニを歌っていながら、歳を重ねるとドラマティックテノールに転身している歌手がいて、彼もその血族なのでしょうか?
この演奏、失礼ながらネタかと思ったらかなり立派なものでした。
勿論Ausrine Stundyteの演奏も立派で、圧倒的な声量がある訳ではありませんが、ピアノの表現が美しく、声でゴリ押しする歌手が多い中で優しさのあるイゾルデ像で、2幕にピッタリハマッていると思いました。

 

話が少し脱線してしまいましたが、全体的に人気実力双方を加味した良い選出だったのではないかと思います。
ということで、次回は男声編をお届けします。
ここ最近は予定が立て込んでおり、記事や動画が全く更新できておりませんでしたが、今後は間一更新くらいのペースに戻せると思いますので、よろしくお願いします。

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