Julia Kleiter(ユリア クライター)は1980年ドイツ生まれのソプラノ歌手
軽いながらも深みのある声でオペラからリート、宗教曲と器用にこなす歌手だが、
結論から言えば、コンサート歌手としての方が素晴らしいと思っている。
まず2012年の演奏
Mozart: Betulia liberata “Quel nocchier che in gran procella”
非の打ちどころが無い演奏と言って良いのではないだろうか?
線は細いながらも、深さがあり抜群のテンポ感である。
低音~高音から響きが統一され、diminuendもpianissimoも自在に一本の息で表現している。
それが2017年
レハールのオペレッタ ほほえみの国 でピオートル ベチャーワと歌っている重唱は
もちろんオペレッタであるから、表現や歌い方を変えることはあるだろうが、
例えオペレッタだからと響きを落とすのは違う。
レハールの作品を中嶋彰子で聴いてみよう
比べてみて、高音はユリア クライターの方が良いとしても、他の部分では全く遜色ないレベルである。
中嶋は非常にオペレッタが上手い。
どんな表現をする時もポジションは変えない。
同じ2017年のプレガルディエンとのリーダーアーベントを聴けば
2012年より響きが不安定になっていることは明らかだ
表現の面では見事と言えなくもないが、口が横に開き始めている。
それはリート界の巨匠プレガルディエンの演奏と比較すれば、
クライターは喋っている所は良いが、音を伸ばすと揺れたり、響きの質が音程に寄って変わってしまうのに対し、
プレガルディエンは単純に高音が年齢的なこともあってキツそうな時はあるが、それ以外、
全然クライターより年上なのに声が揺れることはない。
劇的な表現を追求するのは良いが、声楽的に処理できる範囲を逸脱すると声の寿命を縮めることにもなりかねない。
今年クライターはニュルンベルクのマイスタージンガーでエーファを歌うようだが、
声を重く作りだしたら今後が危うい。
そういう意味で、私は2018年~2019年が今後の彼女の声を決定づけるのではないかと考えている。
同じ歌曲で比較すれば更にハッキリする
2011年シューベルトの歌曲
2016年録音のシュトラウス
真っすぐな美しい高音は健在だが、中音域が揺れ始めているし、そもそも出し方が悪い方に変わっている。
コレがオペラやオペレッタの影響だと断言することはできないが、
言葉をはっきり発音してドラマを表現しようとすることが、
彼女にとっては今のところ発声的にはマイナスになっていると考えるのが自然だ。
お勧めCD
やはり宗教曲のソロでモツレク。
彼女にはぜひとも素晴らしいコンサート歌手であって頂きたい。
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