Daniel Behle(ダニエル ベーレ)は1974年ドイツ生まれのテノール(Wikiでは作曲家兼歌手)となっている。
得意分野はモーツァルトのオペラとドイツリート。最近はバイロイト音楽祭にも出ている。
発声にはやや癖があるものの、高音にも強く、声そのものはよく抜ける響きで明るい。
まず、オペラから見て行こう
モーツァルトのコジ ファン トゥッテから Un’aura amorosa (愛の息吹は)
やや鼻声っぽい所が気になるが、ファルセットと実声のいわゆるミックスボイスの混ぜ方は上手い。
このファルセットと実声の狭間のような部分に息を通し続ける技術はテノールにとってとても大事で、
特に軽い声のテノール(声帯が薄い)程ファルセットと実声の差はなくなってくる。
ただし、このような歌手は上半身だけで響いていて、胸の共振がないことが多い。
ベーレも、鼻声っぽいところがあり、やや響きが上半身だけに頼っている感がある。
しかし、昨年の演奏になるとかなり様相が異なる
今日は私の人生で最も晴れやかな日
良い意味で声が筋肉質になり、最初の演奏とは明らかに響きが違うのがわかるだろう。
歌うことより喋ることが如何に重要かが上下の演奏を聴き比べればわかるのではないだろうか?
モーツァルトの方が技巧的に歌っているようだが、どこか作った感じの声である不自然さが鼻につく。
一方こちらはただ真っすぐ喋っているだけだが、しっかりピンとのあった声が言葉に力を与えている。
こちらはレハールのオペレッタ
実に見事である。
今年のバイロイト音楽祭でマイスタージンガーのダーヴィットを歌った時も実に見事だったが、
やはり、この人はドイツ語の作品を歌った方がイタリア物より遥かに良い。
よっと、お勧めCDは勿論リートになる。
シューベルトやベートーヴェンの作品を歌っているが、何気にグリーグの歌曲が良いので聴いてみて欲しい
なお、「冬の旅」もCDはあるが、YOUTUBEに映像があるので買う必要はなかろう
終曲
Drüben hinterm Dorfe
Steht ein Leiermann,
Und mit starren Fingern
Dreht er,was er kann,
Barfuß auf dem Eise
Wankt er hin und her,
Und sein kleiner Teller
Bleibt ihm immer leer.
Keiner mag ihn hören,
Keiner sieht ihn an,
Und die Hunde knurren
Um den alten Mann,
Und er läßt es gehen
Alles,wie es will,
Dreht,und seine Leier
Steht ihm nimmer still.
Wunderlicher Alter,
Soll ich mit dir gehn ?
Willst zu meinen Liedern
Deine Leier drehn ?
むこうの村はずれ
ライアー弾きが立ち
かじかんだ指で
懸命に回している
氷の上に裸足で
ふらふらとよろめき
その小さい皿は
ずっと空のままだ
誰も聞こうとしない
誰も見ようとしない
老いた男の周りで
犬たちが唸る
彼は何が起きようと
一切をなるがままに任せ
回す そのライアーは
決して鳴り止むことがない
不思議な御老人
あなたと行くことになるのだろうか
僕の歌に合わせて
ライアーを回してくださいますか
まだこの若さでは、プレガルディエンやアライサのような演奏には及ばないか。
だが、歳を重ねて改めてこの曲を録音したら、それが10年20年先かわからないが、きっと素晴らしい演奏をするだろう!
徐々に声が強くなっていっていることを考えると、ローエングリンくらいは将来やるかもしれないが・・・さてどうなる?
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