Anita Rachvelishvili (アニタ ラシュヴェリシュヴィリ)はジョージア国(トビリシ)1984年生まれのメゾソプラノ
スカラ座の研修生として研鑽を積んだ後、バレンボイムに見いだされてカルメンでカウフマンと共演するという抜群の宣伝効果も手伝って、
瞬く間に世界の有名劇場で主役を歌う歌手となった。
比較的声が出来るまでに時間の掛かるヴェルディメゾの役柄をまだ30代半ばで歌いこなし、
決して若さの勢い任せではない確かな発声技術を身に着けている。
こちらがスカラ座研修生当時の歌のようだ
曲目はチレーアのアドリアーナ・ルクヴルール Acerba volutta( 苦い喜び、甘い責め苦)
素晴らしい声だが、パワーで歌っている感じは多少ある。
曲目自体がかなり重いというのもあるが、ちょっと背伸びしている感が伝わってきてしまう。
こちらが4年前の演奏
曲はサンサーンスのオペラ サムソンとダリラからMon Coeur S’Ouvre A Ta Voix (あなたの声に心は開く)
研修生時代より余裕を持って声を出しているのに安定して響くのがよくわかる。
30そこそこでよくぞこれだけ深くゆったりしたレガートで歌えるものだと感心する。
この曲とカルメンはメゾソプラノのアリアでは断トツで人気があり、
どちらも男を誘惑する曲という特性も手伝ってか、日常的にレパートリーにしていなくても歌う人が多い上、
何かと品格を疑いたくなる演奏も結構多いが、本来はこういう声で歌われるべきである。と思わせてくれる。
ただ、強いキャラクターを演じるのに潔癖過ぎるという部分に関しては、物足りなさがない訳でもないので、
そこは今後に期待したい。
では、いつもの写真比較、左から研修生時代、三年前、昨年の順で全て最高音を出しているところ。
※尚、一番右と真ん中は同じ歌の同じ音
基本的にはずっとフォームが変わっていないが、一番左はやや肩に力が入っている感じがあるが、
現在は無駄な力みがなく、肩は脱力しながら胸がしっかり開いているのがよくわかる。
また、歳を重ねて必要な筋肉がついたこともうかがえる。
歌っている役柄は、ヴェルディやヴェリズモを中心とした非常にドラマティックなものが多いが、
自分の声を崩すことなく常に冷静な歌を聴かせているので、今後も大きく道を踏み外すことは考え難い。
時々ポップスなども歌っているようだが、ヴェルディのレクイエムなどのコンサート活動も平行して行っており、
バランスを考えて歌っているのもわかる。
まだまだ若く、今後更に深みを増した時どんな声、演奏を聴かせてくれるのか楽しみだ。
今後暫くはイタリアオペラのメゾ役で主役を張り続けることだろう!
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