Karl Ridderbusch(カール リッダーブッシュ)1932~1997 はドイツ生まれのバス歌手
深く朗々と響く声はカラヤンに“世界でもっとも美しいバス”と評された程。
日本ではハンス ホッター、その後のクルト モルといったバスの方が知名度が高いのだが、
リッダーブッシュも間違えなく一流である。
Jerusalem
こういう声を聴くと、これ以上プッチーニのトスカでスカルピアが歌うTe Deumを歌って欲しかった歌手はいないかもしれない。
全くもって規格外の声と言って良い程の深さ、強さを持った声である。
だが、勿論軽く歌うこともできる。
ローベルト シュトルツ Vor meinem Vaterhaus steht eine Linde (父の家の前に立つ菩提樹)
シュトルツはオペレッタ指揮や作曲の名手と言われている人、
なので芸術歌曲と言うよりはポップな音楽ではあるが、この独特の色気はバスにしか出せない。
そして、何と軽く歌っていることだろう。
声を響かせている位置は本当に硬口蓋~鼻の下だけである。
バス歌手でこんな歌が歌える人はそういない。
はっきり言って、ハンス ホッターより全然発声技術は上だ。
ハンス ホッター
シューベルト An die Music(音楽に寄せて)
ホッターにとっての高音部分”e”や”i”母音は良いポジションにあるが、”o”母音がかなり全体的にくずれるし、
低音で響きが落明らかにちている。
一方リッダーブッシュは、一番最後の超低音すら響きに高さがある。
ホッターの籠ったような重い響きとは違い、リッダーブッシュは軽くて深くて明確な響きなのである。
いかなる音域でも高い響きが必要だ。というのは正にこの違いが良い例と言える。
スメタナ 売られた花嫁(ドイツ語歌唱) から二重唱
バス カール リッダーブッシュ
テノール ルディガー ヴォーラース(過去の記事でも取り上げた名歌手)
かなりマイナーな二人ではあるが、私にとってこのコンビはオールスターキャストである。
本当に二人ともとんでもなく上手い。
響いてるポジションがどの母音でも変わらないし、全部前に飛んでいる。
1mmも籠った音がなく、軽々と出しているのにスコンスコン声が飛ぶ。
黄金時代の歌手でも特に崇められている
コレッリ&バスティアニーニの声との比較
バスティアニーニが「大砲のような声」と例えたコレッリの声すら、
実は現代の多くの歌手ほど重く歌って出している訳ではない。
バスティアニーニに至っては、それこそテノールのような響きである。
「運命の力」と「売られた花嫁」の歌唱を同列で比べることはできないが、
こういう伝説的な歌手として崇められているような人と比べてさへ、
リッダーブッシュやヴォーラースの響きは全く劣らないのが伝わると思う。
こうして聴いて頂ければ、
リッダーブッシュの響きが如何に優れているかが分かるのではないだろうか?
カラヤンに”世界一美しい”と評された声は伊達ではない!
最後に、リッダーブッシュの喋り声
意外と高めの話声で、バス歌手によくあるような、
喋るだけでグラスが振動しそうな重音とは全く違う。
楽器を鳴らすのではなく、自然に響かせる。という極意はこういう所からも現れている。
喋り声がダメな人間は良い声で歌えない。と言われるが、
”良い声”を勘違いすると大惨事になってしまう。
中低音が苦手なテノールやソプラノは、
まさにリッダーブッシュのような歌手からヒントを得るべきであろう。
CD
ベームのモツレクのバスソロと言えばリッダーブッシュしかいない。
個人的には、第九のソロもこの糸が歴代トップクラスだと思っているが、残念ながらAMAZONにはないらしい。
私の愛聴盤はレーヴェ・バラード集ですが、この人が歌うと軽やかに聞こえるのですね。ほかのバス歌手にはないことです。
話に出てきたモーツァルトのレクイエムもおっさyルとおりこの人が一番だと思います。早世?したのが本当に惜しい!