米国製ソプラノ史最高級の品格Carol Vaness

Carol Vaness(キャロル ヴァネス)は1952年、米国生まれのソプラノ
男声陣は大声大会状態だったのに対して、女声は意外とそうでもなく、
逆に今よりよほど知性的、理性的な歌唱をする歌手が多かったように思う。

その筆頭がこのヴァネス。
佇まいから気品があるが、モーツァルトのややドラマティックな役、
コジ ファン トゥッテのフィオルディリージ、イドメネオのエレットラ
ドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナ、エルヴィーラ辺りを当たり役としていた。

 

 

 

1985年(33歳)
モーツァルト フィガロの結婚 Dove sono(どこへ行ったの あの頃は)

独特のヴィブラートがある声ではあるが、30代前半とは思えない包容力のある演奏をする。
このアリアは、伴奏付きレチタティーヴォからアリアの流れの完成度が高過ぎる上、極限のレガートを要求されるという
歌う方とすれば粗しか目立たない難曲。
フィガロは演奏頻度の高い作品だが、このアリアを上手く歌える歌手はそういない。

 

 

 

1988年(36歳)
モーツァルト ティトの慈悲 Deh, se piacer mi vuoi

 

メゾのように深さのある低音から軽い高音まで自在の表現を披露している。
こんな優れた歌手はそういないのだが、残念ながら日本での知名度は低い。

 

 

 

1994年(42歳)
プッチーニ トスカ(全曲)
http://seigaku-hyoron.info/

スカルピアとのやりとりの部分は鬼気迫るものがある。
はっきり言ってこの映像ではドミンゴは脇役。
レイフェルクスとヴァネスのやり取りが本当に凄まじい。
まさにプリマドンナの風格
今まではやや発音が奥気味だったのが改善され、前に言葉が飛ぶようになった、
更に高音の抜け方も申し分ない。
ただヴィブラートは相変わらずなので、有名なアリアはそこまで良い演奏とは思えないが・・・。

余談だが、この人はメトではレヴァインに気に入られて無双状態だった時期のキャスリーン・バトルに意見したことで、
他の歌手の間では英雄視されたことのあるという伝説があるとか。

 

 

 

1996年(44歳)
モーツァルト コジ ファン トゥッテ ”Per pietà ben mio

こういう曲が上手く歌える歌手は本物だと思う。
レヴァインの指揮もさることながら、このアリアの数ある演奏でも指折りの完成度を誇る。

 

 

年代不明(恐らく90年代半ば)
モーツァルト イドメネオ Oh, smania! Oh, furie!…D’Oreste, d’Aiace

私がヴァネスを知ったのがこのアリア、ということもあって
ヴァネス=エレットラのイメージが強い。
声の強さ、しっかり抜ける高音とリズムを崩さない範囲内での表現は実見見事。
シンプルに演奏した中にあらゆる物を凝縮してこそのモーツァルトだ!
と彼女の演奏を聴くと実感させられる。

このアリアはドラマティックに歌い過ぎてリズムが崩れてはだめだし、
逆に軽い声のソプラノが歌って良い曲でもない。
だからといって並のリリコスピントでは音が高くて高音がキツイ。
エレットラに合う声は本当に希少である。

 

 

 

2004年(52歳)
プッチーニ トスカ 1幕のカヴァラドッシとの重唱

 

 

 

 

2017年(65歳)
ヘンデル メサイア I know that my Redeemer liveth

65歳でこの若々しい声が出るのか。
色々事故は起こっているけど、それでも65歳でこれだけブレスが続くというだけでも驚きだ。
最近の売れっ子歌手が、40歳そこそこでいかに不自然に声が重くなってるかがわかるのではないだろうか?
2000年代の演奏映像が全く見つからないのが残念だが、
これだけ良い発声をしていれば、60を過ぎても立派に声が出るということがわかってよかった。

 

 

最後に
ベッリーニ ノルマ Casta Diva

このアリアを上手く歌えるソプラノ限ぎられいる。
そして、間違えなくこの人には相応しい曲である。

 

 

CD

 

 

 

残念ながらCos fan tutteの映像がない。

コメントする