Alain Vanzo(アラン ヴァンツォ)1928-2002 はフランスのテノール歌手
この人の評価は人によって分かれる印象がある。
独特な声に拒否反応を示す人もいれば、卓越した発声技術を絶賛する人もいる。
言葉では伝わり難いので早速聴いて頂こう。
ビゼー 真珠採り Je crois entendre encore
さて、この高音がファルセットか実声か。
まずそれを聴き分けるのも難しいと思うが、結論から言えばファルセットではない。
これをファルセットーネ(ファルセットとは違う)と言うのだそうだが、
分かり易くタイトルにはミックスボイスと記した。
ミックスとはそのまま、ファルセットと実声の中間の声で、
この言い方はクラシックよりポップスでよく用いられる。
よくチェストボイス、ミドルボイス、ヘッドボイスなんて言い方もされるが、
クラシックの声楽では、正しい発声で歌う場合この表現は適切ではないと考えられているので、
私もこのサイトの中ではこのような表現は避けている。
ヴァンツォの発声に話を戻して、
そんな訳で、他の歌手と比較すれば良く分かる
例えばローランド ヴィリャゾン
4:10
「vresse」の単語、”vres”が実声で”se”が明らかに音質が変わっているのが分かるだろうか?
これがファルセット。で続く”doux”もファルセットで”reve”が実声
ヴァンツォは一番高い”se”がファルセットの要素が強いが、
”doux””reve”の音色は統一されており、響きに段差ができない。
因みに、ロッシーニテノールをやっているような
とっても軽い声のテノールは、そもそもファルセットと実声の境目がはっきりとはないので
ファルセットーネという領域そのもの存在しないに等しい
ファン ディエゴ フローレスなんかはその典型
プッチーニ ラ・ボエーム Che gelida manina(フランス語歌唱)
このアリアをフランス語で歌うことに違和感を覚える人はいるかもしれないが、
この声は紛れもなく本物である。
私には伝説的テノール歌手
ベニアミーノ ジーリと同じポジションで歌っているように聴こえる
ヴァンツォがダメだと言うなら、この人より優れた発声技術を持ったテノール歌手を教えて欲しい。
とアンチには言いたくなるのだが(笑)
声の好き嫌いと、歌の上手い下手は全く別物として聴く耳は持たねばならない。
グノー ロミオとジュリエット Ah leve toi soleil
これが1996年、つまり68歳の年の演奏である。
独特の歌い回しではあるが、アルフレード・クラウス並の若々しい声にはただただ感嘆する。
この人の演奏を聴いていて、
あえて母音の中で一番大事な響きを挙げるなら”i”母音である。
というのは改めて感じる。
この母音が、高音では特に”e”の中間みたいなボケタ発音になるのではなく、
明るく明確で、それでいて喉で押さない”i”で歌えること。
これは良い歌手の絶対条件であると言って良いと思う。
高い音になると喉が閉まらないように、
”u”=”o”に、”i”=”e”に近づけていくように教えるのは比較的一般的だが、
問題は、口が開いても発音は変えてはいけない。ということまでしっかり教える人はあまりいない。
リサイタル映像
60歳手前でのリサイタル。
ほぼどんな音域、発音でも響いているポジションがかわらず、
発音は明確で常に明るさを保っている。
こういう歌手を聴いていると、
現代の歌手の大半が、如何に必要以上の力で声を出しているか、
ということがわかるのではなかろうか。
このリサイタルの中でお勧めは、101:20:00~の曲
Cittadiniという人が作曲した「Alla Danza」という曲らしいが、
とっても面白い。ロッシーニのLa Danzaをフランス版にするとこうなるのかな?
と言うような楽しくてセンスのある曲なので、
是非もっと多くの歌手に歌って欲しいものである。
CD
ヴァンツォのイタリア物は意外と珍しい
何故かフランスアリア集などが異常に値上がりしている。
廃盤になったのか?
68歳でこの声はすごいですね。僕も見習いたいものです。
(ところでお問い合わせフォームを利用してメッセージをお送りしようとしていますが、どうもうまく動いていないようで、メッセージが送れずにいます。)
Takashi Matsuo様
ご連絡頂きましてありがとうございます。
問い合わせフォームの動作テストをいたしましたが、問題なく送れました。
大変お手数をお掛けしますが、
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声楽特化の音楽評論サイト管理者 ゆうや