Louise Alder(ルイーズ オルダー)は1986年生、英国まれのリリックソプラノ歌手。
現在の若手ソプラノの中でも特に注目度の高い歌手かもしれないが、
英国人歌手の特徴と言って差し支えないと思うが、発声的な硬さは個人的には気になるところ・
それでも、表現的な部分や技術に持っている声は中々素晴らしいと言えるだろう。
BBCカーディフ国際声楽コンクールでジョン・サザーランド賞を受賞した時の演奏。
声や技術は素晴らしいものはあるが、発音の硬さや表現がイタリアオペラ的ではない。
言葉ははっきり発音しなければならないが、こういうのはイタリアオペラの表現としては適切ではないだろう。
カバリエの演奏と比較して頂ければ、オルダーの硬さが際立つと思う。
Montserrat Caballé
まだ若いオルダーの声にどこまで求めるかということもあるのだが、
”a”母音で特に響きが落ち易いところは年齢に関係なく修正しなければいけない。
この人、表現でやろうとしていることは伝わるのだが、もっと言葉の出し方は勉強した方が良い。
強い言葉を強く発音するのは必ずしも正しくない。
どちらかと言えば、もっと長い短いアクセントの使い分けができないとモーツァルトの書いた音楽のフレーズ感に合致しない。
これが速めのテンポで歌っていることが原因ではないことは、
エルツェの演奏と比較して頂ければよくわかるだろう。
オルダーとエルツェの言葉の出し方、フレージングの差が俗に言うモダンスタイル、オールドスタイルと言えるだろう。
Christiane Oelze
最初と同じくカーディフ国際声楽コンクールの映像から、今度は英語の作品
英語の曲だと、こういう浅めの声の方が、深い響きより合う気がする。
シュトラウスの歌曲はこういう華やかなソプラノの声には良く合う。
表現的にもアリアよりも良いように聴こえる。
ただ、ポルタメントを掛けるのは頂けない。
ただ、やはり発音には気になることが満載だ。
同じ英国人のソプラノでも、ジョーンズと比較してみると分かり易い
Dame Gwyneth Jones
どの発音がと言うより、言葉のアクセントが色々不自然なのがわかるだろうか?
特定の子音の発音で言えば、”s”では「シュ」と発音する場合は強過ぎるし、「ズ」の時は短過ぎたり、
語尾の”n”が”ヌ”に聴こえたりというのもあり、(ここについては良いと言う人と、ダメと言う人が私の周りにはいる)
更には「wunderbare」みたいな単語で、”der”ではなく”re”で巻き舌してしまったりと、
ぱっと聴いた感じ上手いのだが、よくよく聴くと色々残念なところが沢山ある。
以下に歌詞を載せるので是非聴き比べて欲しい。
<歌詞>
Auf,hebe die funkelnde Schale empor zum Mund,
Und trinke beim Freudenmahle dein Herz gesund.
Und wenn du sie hebst,so winke mir heimlich zu,
Dann lächle ich,und dann trinke ich still wie du …
Und still gleich mir betrachte um uns das Heer
Der trunknen Schwätzer?verachte sie nicht zu sehr.
Nein,hebe die blinkende Schale,gefüllt mit Wein,
Und laß beim lärmenden Mahle sie glücklich sein.
Doch hast du das Mahl genossen,den Durst gestillt,
Dann verlasse der lauten Genossen festfreudiges Bild,
Und wandle hinaus in den Garten zum Rosenstrauch,?
Dort will ich dich dann erwarten nach altem Brauch,
Und will an die Brust dir sinken eh’ du’s gehofft,
Und deine Küsse trinken,wie ehmals oft,
Und flechten in deine Haare der Rose Pracht?
O komm,du wunderbare,ersehnte Nacht!
<日本語訳>
さあ、祝宴の輝く杯をかかげるんだ 君の口元に
そして飲み干そう 心晴れやかに
それからそっと目くばせしてくれ
僕も微笑を返し 静かに飲もう 君と同じに...
それからそっとまわりを見てごらん
酔いしれざわめく人々を - 僕は彼らを見下しはしない
いや! それどころかワインの杯をかかげて祝福しよう
騒々しい彼らに幸いあれと
だが、君がこの宴にも飽き のどの渇きも鎮まったなら
騒がしい彼らのところからそっと抜け出し
庭の薔薇のところにおいで -
僕はいつものようにそこで待っている
そして僕は君の胸に身を沈める、待ちきれずに
それからいつものように君の口づけを飲み干そう
そして君の髪に大輪の薔薇の花を編みこんであげよう -
ああ素晴らしい君よ来てくれ 待ち焦がれた夜なのだ!
※歌詞はコチラより転載
注目株の歌手と言いながら、結構色々ダメ出しをしてしまったが、
とは言えまだ30代前半の若さである。
リリックソプラノとしてはこれから声が成熟してくる年齢なので、
今後は角が取れて丸く柔らかい響きになってくれば、もっと幅広い表現ができるようになるだろうし、
発音の癖も取れてくるだろう。
その為には、前に書いたように”a”母音で響きを落とさないこと、
後は1にも2にも喉で押した音を出さないことが大事になるだろう。
リスト S’il est un charmant gazon
こちらが2018年のリサイタル
伴奏はフランス歌曲などの伴奏を弾かせれば現在トップクラスであろうロジャー・ヴィニョールズ
ピアノの音に比べて、残念ながら完全に声がフランス語の色彩や曲の空気感を壊している。
今後どのようにこの硬さを克服していくのか?
あるいはこのまま歌い続けて40代で揺れ揺れの声になってしまうのか?
今年、微妙なことに第九のソロではあるが来日が予定されているので、実際に聴いてみる価値はあるかもしれない。
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=3MTxoOj%2BEz4%3D&month=12
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