Carolina Ullrich (カロリーナ ウルリヒ)は1982年チリ生まれのソプラノ歌手。
主にドイツで研鑽を積み、Edith Wiensにも師事していたようで、
確かにその歌唱センス、柔らかい響きの使い方など共通点が聴かれます。
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透明感と柔らかさがある実に美しい声ですね。
このような自然なヴィブラートであれば、本来は真っすぐな声で歌わなければいけない曲でも、殆ど違和感なく聴くことができます。
それより問題点は、”a”母音が横に平たくなってしまう傾向があること。
具体例を挙げると
「sie wieder einen Inmitten dieser sonnenatmenden Erde 」
という歌詞。
この演奏では、(1:25~)
「einen」や「atmenden」の”a”母音は象徴的です。
前者はまだ横に開き過ぎただけではありますが、
後者は完全に鼻声になってしまっています。
これが大体30歳位の時の演奏で、持っているモノや音楽性は素晴らしいけど、まだまだ技術的に粗があるのがわかるでしょう。
Francisco Ernani Braga(フランチ(シ)スコ エルナーニ ブラーガ)
というブラジルの作曲家の曲です。
こちらが2011年の演奏なので、上記のRシュトラウスの演奏と同じ位だと思うのですが、シュトラウスの演奏では短所となるようなことも、
このようなノリがよく、ポップな作品では明るく開放的な響きが長所にもなります。
そういう意味で、口のフォームで言えば、
昨日の記事で、メスプレが横に開いていると書きましたが、
オペレッタを歌うのであれば、それは長所にもなりえる訳で、
決して間違っているということではありません。
ただし、オペラセリアや芸術歌曲を歌う時にあれではまずいことが、
ウルリヒのRシュトラウスとブラーガを聴き比べただけでもわかると思います。
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宗教曲が本当によく合う声をしています。
”a”母音は、音の入りでインパクトした時は素晴らしいのですが、
膨らませてクレッシェンドした時、つまり口を開けていく過程でポジションがブレてしまうのが勿体ないですね。
あまりこの人は口を開けないで歌った方が響きが安定するのではないかと思います。
それでも、その端緒を補って余りある自然な響きを持っており、
絶対に喉で押したり、力んだりすることがないのは素晴らしい限りです。
ここまで軽く歌って良いんだな。というのが聴いていて納得して頂けるのではないかと思います。
アーンは厳密に芸術歌曲に分類されるのか、
それとも、サロン音楽としてもう少しカジュアルなモノと捉えるのかははっきりわかりませんが、少なくともウルリヒの声は非常に相性が良いように感じます。
ジャンスと比較しても遜色ありません。
Véronique Gens
このお方は、個人的にはフランス歌曲界の女王だと思っていますので、
大抵の作品は他者の追随を許さないのですが、
このアーンの春に関しては、もう少し軽い声の方が合う印象だったので、
正にウルリヒはうってつけです。
恐らくディクション的なことを突き詰めればジャンスの方が上なのでしょうが、どちらも甲乙つけがたい演奏なのは間違えないでしょう。
これだけ素晴らしい声をしているのに、YOUTUBEに殆ど演奏がアップされていないのが不思議です。
有名オペラのヒロイン役を圧倒的な存在感で歌うタイプではないので、
インパクトが弱いのかもしれませんが、
こういう癖がなくて本当に美しい声を持った人が日本で積極的に紹介されるようになれば良いのに・・・。と思えてなりません。
CD
このCDは中々魅力的なので私自身がパチってしまいました(笑)
なお、私の記事のリンクからAMAZONで購入すると
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今後の記事執筆や、手術のため、ご支援頂ければ幸いです。
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