高橋維はウィーンに留学して上手くなっているのか?

過去に、

ソプラノ 高橋 維は一流になれるか!?

という記事を書いたのですが、

ウィーンに行って上手くなった歌手があまりいないことを危惧していました。

そして、少し前ですが、テレビで夜の女王のアリアを歌ったのがそれなりに評判になって、その様子がYOUTBEにアップされています。

コメントにも好意的な反応が多く見ら、テレビの力はやっぱりデカいのか~と思わされた訳ですが、実際、2017年に留学してから2年ほど経過するでしょうか?

その割に日本での活動も多いようで、正直本当に研鑽を積んでるのか怪しんでいたところだったので、この映像を中心にして、現在の彼女の実力を判断していきたいと思います。

 

 

 

2019.7.6
歌劇「魔笛」より「復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え」
作曲: W.A.モーツァルト
ソプラノ: 高橋維
指揮: 藤岡幸夫
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

 

 

こちらが2015年の演奏
(冒頭で Jシュトラウスの「春の声」を歌っています。)

 

 

 

こちらが2017年の夜女

録音環境がそれぞれ全然違うので、これを同列で比較するのは無理があるかもしれませんが、それでも全く無意味なことではないでしょう。

<改善されているところ>

簡潔に言えば、鼻声になることが減ったのはプラスでしょう。
過去記事にも書いた通り、
「So bist du meine Tochter nimmermehr」
の歌詞を聴き比べると変化は歴然なのですが・・・
2019年の演奏、私には「nimmermehr」ではなく、「immermehr」
と聴こえるのですが、いかがでしょうか?

 

 

「nimmermehr」の”ni”を発音しているフォーム

これで”ni”はないでしょ!?
この口のフォームで”ni”と発音する人はまずいないと思いますので、
単純に歌詞を間違っているのか、意図的に”n”を避けたのか・・・。
どちらにしても、この部分以外も鼻に入ることがなくなったのは良いことだと思います。

とは言っても、
「二度と私の娘ではない」という言葉が
「一層私の娘だ」になっちゃうから、この”i”か”ni”かはとても重要。

余談ですが、色々なところでドイツ語の言語指導をされている方のお話で、

ワーグナーのジークフリートで、
ジークフリートが、ブリュンヒルデを初めて女性と認識した時に驚いて
「kein Man(男じゃない!)」と言う場面があるのだが、
ジークフリートを歌っていたクリスティアン フランツ”はk”が聴こえなくて「eim Man(一人の男だ)」と歌ってたから注意してやった。
と仰っていて、
今回この部分を取り上げながら、ふっとそんな話を思い出してしまいました。

高橋氏は、大変なアリアでもしっかり発音されているのは素晴らしいけど、その分間違ったら目立つというのは、何にしてもきっちり歌うって本当に難しいことだと改めて感じてしまう。

 

 


 

<気になったところ>

声を出す前に一々肩の上下運動があるのがとても気になります。
他の映像よりカメラが近いということもあるかもしれませんが、
それにしても、肩が動き過ぎです。
先日紹介した、坂口 裕子氏と比較して頂ければ、いかに高橋氏は肩に力を入れて歌っているかがわかります。

 

◆参考記事

ソプラノ 坂口裕子の響きは本物だ!

 

確かに、2017までの演奏より鼻声には聴こえなくなったんですが、
響きは硬くなったと思います。
それに、低音域では相変わらず響きが落ちます。
因みに2018年のRシュトラウスの演奏はと言うと

 

 

Rシュトラウス Ständchen

全然レガートで歌えてなくて、部分的に喉を押してるように聴こえるんですよね。
発音を一生懸命丁寧に喋ろうという意識は伝わってくるし、
表現力もあるとは思いますが、問題は単語が乱立していて、詩になっていないことです。
オジェーの演奏と比較すれば、高橋氏に足りないものがわかると思います。

 

 

 

Arleen Augér

レガートで歌えない。ということは声に柔軟性がないということで、
声が硬いということは、無駄な力がどっかに入っているということです。

発音を丁寧にしようとするとぶち当たるのが、
喉や口の空間を広く保つことと、
子音を明確に発音することの両立をどうするか?だと思います。

その為には、唇と舌先だけでいかに発音できるかということを追求しないといけなくて、そこを追求すると、今回の映像のように、横に口が開くことはないはずなのです。
横に開くと唇の接触範囲も必然的に広くなるので、スピード感のある滑舌は生まれませんし、響きの深さも出ない。

そういった面からも、残念ながらウィーンにいって高橋氏の歌が上達したとは思えない。

兎に角、肩を怒らせて歌う癖をなんとかしないとマズイのは確かです。
それでも持っている楽器は素晴らしいし、ドラマを表現しようという意欲も好感が持てるので、言い方が正しいかはわかりませんが、もっと声を捨てて、自分の音楽の表現手段を声や技巧に頼らないものにしていって欲しいと思います。
高橋氏については、今後も演奏会などにいったら情報を更新していこうと思います。

 

コメントする