新国立劇場 2020/2021シーズンの 主要予定キャスト分析(女性編)

新国立劇場 2020/2021シーズンオペラのキャストについて本日は見ていきたいと思います。

 

 

紹介映像

 

 

<ブリテン<真夏の夜の夢>

Kerstin Avemo(シュシュティン アヴェモ) ソプラノ
ティターニア役

 

 

 

 

 

Tamara Gura(タマラ グーラ) メゾソプラノ
ハーミア役

 

 

 

Valda Wilson(ヴァルダ ウィルソン) ソプラノ
ヘレナ役

 

英語のオペラは聴くことがなく、役にあっているかどうかを判断することができないので、歌手個々の印象を書く程度のことしかできないのですが、何気にレベルの高い歌手陣を集めています。

 

アヴェモは1973年スウェーデン生まれで、もともとはコロラトゥーラを得意としていたハイソプラノだったようですが、現在はリリックの役まで歌っています。
声に癖がなく、軽いソプラノに有り勝ちな平べったい響きや、高音だけがキンキン響いて中低音では全く鳴らない。ということがなく、声的にも技術的にもバランスの取れた良い歌手ではないかと思います。

グーラはリリックメゾの声なのですが、カルメンなんかを歌ってしまっていてるのは気がかりですが、高音は安定していて、低音の出し方も上の響きだけで軽く出すことも、胸の響きを混ぜながら太めに出すことも、上手く役によって調整することができる器用さがありますね。
米国人歌手としては珍しく声量を追い求めるような歌唱ではなく、理性的に声をコントロールできている様子が伺えるのは好印象です。
ただ、声がちゃんと素直に抜けきっているかと言えばそれは別問題で、発音の面でも言葉があまり飛ばないし、あまり癖がないと言えば良いことなのですが、歌そのものにはあまり面白さを感じない地味なタイプと言えなくもありません。

ヴァルダ ウィルソンは、一瞬声を聴く分には美しく聴こえるのですが、
喉声気味で音色が一辺倒な上、とにかく発音が何を言っているのか全く聴こえない。
歌詞がわかる曲を聴いても何を言っているのかわからないので、そういう面ではあまり期待はできないが、持っている声だけなら美声であることは確かでしょう。

 

 

 

<こうもり>

Astrid Kessler(アストリッド ケスラー) ソプラノ
ロザリンデ役

 

 

 

Maria Nazarova(マリア ナザロワ) ソプラノ
アデーレ役

 

オルロフスキーを歌うアイグレ アクメチーナという歌手の綴りがわからず、映像を探すことを断念しました。ご存じの方いらっしゃいましたらお知らせ頂けると助かります。

今回の公演で最注目歌手とも言えるのが、アデーレを歌うナザロワ。
技術も声も言うことなく、真夏の夜の夢の歌手と比べても明らかに発音のポイントが前なのがお分かり頂けると思います。
しかもまだ30代半ばと、レッジェーロソプラノにとって全盛期といえる年齢での来日とはなんと素晴らしいタイミングでしょうか!
この方については以前に記事を書きましたのそちらも参照ください。

 

 

◆関連記事

ウィーン国立歌劇場のスター候補生ソプラノ Maria Nazarova

 

 

ロザリンデを歌うケスラーはとにかく音が細切れで完全なノンレガート歌唱をされているので、個人的には全然ダメです。
もっている声は清潔感があって変な癖もないのですが、響きに高さがなく広がりがありません。

 

 

 

<トスカ>

Chiara Isotton(キアラ イゾットン) ソプラノ
トスカ役

この人、フェニーチェ座でトスカを歌ってるらしいのですが全然ドラマティックな声ではありません。
スカラ座にも脇役ながらデビューしていて、かなり売れている若手と言えそうですが、
常にチリメンヴィブラートが掛かった声で真っすぐ声を飛ばすことができず、だからといって馬力がある訳でもない・・・なぜトスカ?と言わざるを得ないですね。
因みに、歌を習っていた人の中には伝説的ハイテノール、ウィリアム マッテウッツィがいるようです。

 

 

 

<フィガロの結婚>

Serena Gamberoni(セレナ ガンベローニ) ソプラノ
伯爵夫人役

 

 

 

臼木あい ソプラノ
スザンナ役

 

 

 

脇園彩 メゾソプラノ
ケルビーノ役

 

 

このキャストはちょっとコメントが難しい。
まずガンベローニですが、単純に歌が下手。
音程に合わせて声を出しているだけにしか聞こえません。
フレージングを考えているのかどうかも怪しい方向性の見えない音楽作りと、音域によって声質が全く変わってしまい、高音ではかなり喉声になって絶叫状態になる一方、低音では胸声に落としてドスの効いた声を出すという発声技術の未熟さも耳につきます。
この歌唱では、伯爵夫人の息の長いピアニッシモ&レガートを聴かせるアリアが上手く歌えるとはとても思えません。

 

臼木氏
声が良いかそうでないかは横に置いておいたとしても、まずスザンナ役はテッシトゥーラが合いません。
スカスカの中低音ではドラマを展開できないのですが、本当にスザンナが歌えるのでしょうか?

こういうことを書くと、個人的に臼木氏が嫌いなように見えてしまうかもしれませんが全くそうではなく、それどころか彼女がウィーン留学していた時だったと思いますが、一時期SNS上では細く繋がっていたこともありました。
当時彼女は最年少で日コンを取ったばかりで、普通なら天狗になりそうなものですが、決してそんなことはなく、歌に関して色々な人からの質問に丁寧に応えていらっしゃる様子が印象的だったので、人間的には素晴らしい方だと思うのですが、それと現在歌が上手いかは別問題なのです。
舞台に立っている人の後ろには、常に実力があっても日の目を見ることができない人が沢山いるという現実は忘れてはいけません。

 

脇園氏
ロッシーニを得意にしているのでブッファ役のメゾは十八番かもしれませんが、技巧的なパッセージを聴かせてなんぼの役ではなく、声楽を学び始めてまず歌うアリアの一つがケルビーノのそれです。
こういう単純なアリアほど2度の順次進行を如何に音楽的に歌えるか、レガートに処理できるかが問われる訳ですが、果たしてどんな演奏になるのか・・・
以前新国ではソプラノ役のドンナ・エルヴィーラを歌って、大手マスコミが絶賛していましたが、基本的に彼等音楽評論家の、特にオペラに関しての記事は、外国人キャストと日本人キャストが最初からレベル的に差があることを念頭に、海外勢を相手に日本人が健闘した。という体の文章を書くので好きではありません。
何人だろうと関係なく同列の基準で論じなければ意味がないのですがそうはしないのです。

 

 

 

<ヴァルキューレ>

Elisabet Strid(エリザベート ストリッド) ソプラノ
ジークリンデ役

 

 

 

Iréne Theorin(イレーネ テオリン) ソプラノ
ブリュンヒルデ役

 

 

 

藤村実穂子 メゾソプラノ
フリッカ役

 

スウェーデン勢半端ないですね。
ストリッドもテオリンもスウェーデンの歌手で、テオリンに至ってはワーグナー物をやる度に新国はお世話になっている印象なのですが、個人的な好みとしては、実はそこまで好きではありません。
藤村氏についても今更特別書くことはありませんが、声量があるタイプではないので、このメンツ相手にフリッカのような不機嫌に怒り散らす役というのはどうかな?というのは正直ありますね。

この公演、私的な一番の注目はストリッドで、
キャリアとしても一部の役を除いてワーグナー作品ばっかり歌ってる完全なワグネリアーナときており、当然ジークリンデも得意としている役のようです。
声としては、ドラマティックなメゾの声のまま高音まで到達するようなソプラノというより、比較的リリックさをもった硬質でクリスタルのような輝きのある高音を売りにしているタイプのため、ジークリンデはテッシトゥーラ的に少し低いのではないかな?という気がしなくもありません。
なので、中低音でどんな表現を聴かせてくれるかが一つ鍵になるのではないかと思っています。

 

 

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<夜鳴きうぐいす/イオランタ>

 

Hasmik Torosyan(ハスミック トロシャン) ソプラノ
夜鳴きうぐいす役

 

 

昨年のドン・パスクワーレでノリーナ役を演じたトロシャンの再来日
この人についてはその時の記事を参照願います。

 

◆関連記事

2019/11/11 新国立劇場 ドン・パスクワーレ (評論)

 

 

katerina Siurina(エカテリーナ シウリーナ) ソプラノ
イオランタ役

 

ストラヴィンスキーとチャイコフスキーのロシアオペラ2本上映だそうですが、
呼んでいる女性歌手はセンスが良いですね。
シウリーナも中々良い歌手だとは思うのですが、発音に癖があり、特に中音域の”e”母音なんかは顕著で、”i”母音も奥めの響きで不自然さがあります。

ただロシア語の作品を歌った場合どうなるのかは予想がつきません。
こちらの動画はラフマニノフの歌曲でロシア語歌唱ではありますが、2016年の演奏なので現在の声とは単純に比較できませんしね。
高音の弱音表現は美しいので、その他でどう変わっているか注目です。

 

 

 

<ランメルモールのルチア>

 

Irina Lungu(イリーナ ルング) ソプラノ
ルチア役

 

音楽監督の大野和志氏曰く
「タイトルロールはルング。今『ルチア』『アンナ・ボレーナ』『ファウスト』のマルグリート、『椿姫』などを歌ったら、中音域から遥か高音へと彼女ほど音質が変わらず気持ちよく上がっていく歌手には、そうやすやすとはお目にかかれません。」
ということで、大野氏一押しがこの人であることがよくわかります。

ですが、本当に彼女の声は中音域~高音まで音質が変わっていないのでしょうか?
前回、新国でルチアを歌ったペレチャッコと比較してみましょう

 

 

olga peretyatko

私の耳にはルングの方が中音域が不自然に太くなったり、時々ズリ上げ気味になったり、音程が微妙に不安定に聴こえたりするのですが気のせいでしょうか?
まぁ、私がペレチャッコの歌が好きなので、例えハイEsがちゃんと出せず、狂乱シーンでは出さなくても私は全然良い。
それよりこの人の演技や歌唱は目の前にエドガルドが見えるんですよね。
ただ超絶技巧で歌ってるだけじゃない。
それに比べてルングの歌唱は無機質だし、高音のピアノは喉が締まっていて苦しく、最高音のハイEsも喉声です。
やっぱり私には大野和志氏の歌を聴く耳はあまり信用できません。

 

 

 

<ドン・カルロ>

Marina Costa-Jackson(マリナ コスタージャクソン)
エリザベッタ役

 

 

 

Anna Maria Chiuri(アンナ マリア キウリ)
エボリ役

 

これは酷い!
コスタージャクソンという人はいかにも米国人らしく全部発音が奥で、米語の発音の悪い癖が歌に如実に出ています。
そしてキウリ。こちらも典型的な絶叫系勘違いドラマティックメゾ。
こんなキャストでヴェルディは聴きたくない。
しかし、この演目、男声陣は充実してたりして、なにより宮廷歌手の称号を携えて髙田智宏氏が凱旋するという面では注目なんですよね。

 

 

<カルメン>

Stéphanie d’Oustrac(ステファニー ドゥストラック) メゾソプラノ
カルメン役

 

 

砂川涼子
ミカエラ役

https://www.youtube.com/watch?v=YQQ5NsgDUSo

(2:55~)

 

 

今回個人的に一番注目しているメゾがドゥストラック。
この人は珍しくフランス人のカルメン歌いなんですよね。
奔放に歌っているようでフォームを崩さず響きのポジションが千々に乱れるようなことがない。
どちらかと言えば演劇的な要素が強い歌い方をするので好き嫌いは人によってあるかもしれませんが、フランス語が母国語であるというアドバンテージを最大限に生かしたカルメン演奏が聴けるのではないかと期待しています。

砂川氏については今更書くこともないので割愛いたしますが、個人的な願望を言えば、日本人でミカエラ歌うなら浜田理恵で聴きたい!

 

 

とまぁこんな感じです。
軽いソプラノ勢は全体的に若手で実力もある良い人選だと思いますが、
ワーグナーとなると、毎回新国も東京の春音楽祭も似たようなキャスティングになるので面白みという面では少ないかもしれません。
とりあえず、マリア・ナザロワは絶対聴いておきたいですね。
後はドゥストラックとロシア物は悩むところ。
皆様の琴線に触れる歌手はいましたでしょうか。

それでは次回は男声編になります。

 

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