【オペラ・ヴェルト】が選んだ若手歌手 Konstantin Krimmelの歌唱分析

ドイツのオペラ雑誌【オペラ・ヴェルト】がオブ・ザ・イヤー2023を発表しました。

今回はその中の若手歌手として選出された、
Konstantin Krimmel(コンスタンチン・クリムメル)の歌唱についてみて行きたいと思いますが、この人、私が2019年に一度取り上げて記事にしていますが、4年近く時間が経過しているので、
今回はオブ・ザ・イヤーを勝ち取ったということで、この歌手について改めて取り上げたいと思います。

 

クリムメルは、
1993年にドイツのシュトゥットガルトで生まれたバリトン歌手。
彼は最初に日本人の声楽家、吉原輝氏に師事し、その後、シュトゥットガルト音楽大学でベルント・ヘッセンベルガー教授に学び、2018年にヘルムート・ドイッチュ国際リートコンクールで優勝。

モーツァルトやワーグナーなどのオペラやオラトリオのほか、シューベルトやシューマンなどのリートを得意としています。彼はエレーヌ・グリモーと共演したシルヴェストロフの歌曲集「静寂の歌」を録音し、高い評価を得ています。

現在、ドイツやイタリアなどの主要なオペラハウス、コンサートホールで活躍。
感性豊かな表現力は、多くの聴衆や批評家から称賛されています。

 

 

シューベルト  Gute Nacht

 

 

 

 

 

 

この人の歌唱に注目したのが、それこそ2018年にヘルムート・ドイッチュ国際リートコンクールで優勝した時だったので、やっぱりリート演奏が代名詞と言えると思います。

この冬の旅の1曲目の演奏は、2021年のもので、改めてクリンメルの歌唱を聴いて感じたことは、子音の柔らかさ!

ドイツ語の声楽作品を歌う時に明瞭に発音する。となると、
合唱などで指導を受けたことがある方ならわかると思いますが、まず子音を立たせることを徹底的に叩き込まれます。

子音が立たないとドイツ語に聞こえない。
私もそう教わってきたのですけど、実際のところそうでもないんじゃないか?というのが最近の私の感覚で、実際クリンメルは、とても言葉が明確に聞こえるにも関わらず、子音を立たせているところがない。

年齢が比較的近くて、リートを得意としている
アンドレ・シュエン( Andrè Schuen)の歌唱と比較すると、
クリンメルの子音の柔らかさがよくわかると思います。

 

 

Andrè Schuen

 

子音以外でクリンメルの特徴としては、
バスバリトンの持ち声でテノールのように歌っているようなところと言えば良いのでしょうか?
人によっては、深さがなく平べったく聞こえるというマイナスに捉える方もいると思いますし、
一方で変にクラシックの声楽らしい声でなく、耳馴染みの良い不自然さのない演奏と好意的に受け止める方もいるのではないでしょうか?

 

 

 

シューベルト   Das Wandern

この演奏が2023年6月と新しいものになるのですが、
上手いことは間違えないですし、装飾を付けるスタイルに関しても私は肯定的なので、どこでどんな装飾を付けるのかという楽しみもあり、高い評価を受けているのも頷ける。

ただ、高めの音域がどうも上半身だけでコントロールしているように聴こえて仕方ない。
リリックな声にも関わらず歌ってる調整もかなり低いので、
例えば、同じ水車小屋で高い音域を出す曲と言えば、
Ungeduld(いら立ち)この曲を聴くとやっぱり、彼の高音の出し方にいは疑問を持たざるを得ません。

 

Ungeduld

何度も繰り返される「dein ist mein Herz」という歌詞の最高音は”F”ですが、問題はその前の徐々に音域が上がっていく部分で、
やたらとテンポを落としてミックスボイスみたいな声で歌うところ。
低声歌手にとってのパッサッジョなので、この辺りを弱音でも真っすぐ芯のある声で歌うには技術がいるんですが、クリンメルは明らかに歌い方を変えてます。
最高音に悲しては半分ファルセットに近いとこに入ってますんで、こういう歌い方を良しとする方もいるかもしれませんが、私は受け入れられませんね。
そもそも不自然にテンポ落とした上に、リズム感まで崩れてしまうような演奏になっている時点で、1曲目と比較すると評価が下がるのは当然かと思います。

こういった部分から、正直この方が若手の年間最優秀歌手として表彰されたことにはちょっと疑問があります。

 

まぁ、それを言ってしまったら、最優秀歌手に何度も選出されているミャエル・フォッレ(Michael Volle)のワーグナーが評価されている理由の方が個人的には謎なんですが・・・。

 

リリックバリトンとしては結構好きだったんですけど、ヘルデンバリトンの声ではない。
と私は思うんですけど、皆さまの意見はいかがでしょうか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

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