Alexandra Nowakowskiが期待の新星ソプラノだと考える理由




Alexandra Nowakowski(アレクサンドラ ノヴァコフスキ)は今後活躍が期待されるポーランド系の米国人ソプラノ

昨日はニューヨークのコンクールの惨状を記事にしたが、
ワシントンで研鑽を積んだノヴァコフスキは昨日紹介した歌手達とは明らかに違う。
この人も様々な国際コンクールで入賞を重ねているが、決して強い声、大きな声が持ち味の歌手ではなく、
コロラトゥーラを得意とする歌手だが、決して純粋なハイソプラノという程に細く軽い声ではなく、
若くしてそれなりの太さのある中音域で言葉をしっかり喋って響かせられる能力がある。
勿論繊細な高音域も持ち合わせているという非常に魅力的な声を持った歌手である。

 

 

 

 

 

Alexandra Nowakowski, International Stanislaw Moniuszko Competition Round 2

デラクア Villanelle
モーツァルト ツァイーデ Ruhe Sanft, Mein Holdes Leben
ベッリーニ 夢遊病の女 Come per me sereno

 

まさに2019年5月9日にポーランドで行われたばかりの二次予選の演奏
ツァイーデのアリアはレッジェーロよりはリリックソプラノが歌うアリアで、
一方、夢遊病は軽いソプラノが歌う代表的な曲。
ドイツ語の発音はもう少し細く前のポジションに響きがくると良いと思うが、アリアのテッシトゥーラそのものはハマっていて選曲が良く、
どの言葉も丁寧に喋っている。
特に技巧に耳がいきがちな夢遊病のアリアは素晴らしく、
これほど丁寧に言葉を扱っている歌手はそういない。
所々言葉を優先させ過ぎて響きが崩れる部分があるが、
ノヴァコフスキという歌手がどんな歌を歌いたいのかが伝わってくるので、そのような部分は今後技術を磨いていけば良いだけのこと。
改めて昨日の記事で取り上げた歌手達と比べて欲しいのだが、生きた言葉で歌えるかどうか
というのが歌を歌たらしめる重要な要素であり、とても難しいことだということがわかると思う。

 

 

 

マスネ マノン Manon`s Gavotte

こちらは2年前の演奏。
今年の演奏に比べて勢いで歌っている部分が強く、
まだまだ声をコントロールできていないが、表現したいことは伝わってくる。
この曲を歌うにはちょっと方向性が違う気がするが、それでも何がやりたいのかわからない歌よりは全然良い。

 

 

 

ヴェルディ リゴレット Caro nome

再び今年、2019年2月の演奏
マノンからたった2年でこれ程成長したのか!?
と驚かされる。
勢いで出していた声が息の流れに言葉を乗せて歌えるようになっている。
それだけで一生懸命発音しているような感じもなくなり、レガートで言葉が繋がるようになる。
あえて今回は他の歌手との比較はしないが、
現在名の売れてるジルダを得意役とする歌手と同曲の演奏を聴き比べたとしても、全く遜色ないレベルでノヴァコフスキは歌えていると思う。

 



 

 

 

Academy of Vocal Arts – Farewell Recital 2018

ノヴァコフスキ所属していた研修所の演奏会
Academy of Vocal Arts (フィラデルフィア)という声楽家研修所は知らなかったが、
教育の質は悪くなさそうな気がする。
ノヴァコフスキが飛び抜けて上手いのだが、20代の若人達がこれだけ歌えるというのは立派だ。
特にVanessa Vasquezというソプラノは、トスカこそ声に合っていないが、表現は新鮮だ。
まったく力技で声を張り上げることがなく中々味のある歌を歌う。

 

さて、最後にノヴァコフスキが今後世界的なスター歌手になれるかどうかについてだが、
動画を見た限りでも、2年でかなり成長している様子を見ると、どこまで伸びるのかは本当に楽しみである。
高音やコロラトゥーラの技術、発音に対する感覚、低音域でも細くならない安定した響き・・・と穴がないのも強みだ。
課題を挙げるとすれば、低音で時々響きが乱れるところで、低音で強く発音しようとした時に息の量の調節が上手くできていないと考えられること
これは、もう少し冷静に処理すれば問題なくクリアできると思うが、表現する上でも、頭の片隅に冷静さを持つというのは結構難しい。
中低音も鳴る楽器を持っているが故の難しさだと思うが、フォルテでは時々詰まった音色になることがあったり、高音に比べて響きが落ちたりすることがあるので、
そこで更に無駄な力が抜けると良い。
後はドイツ語の発音がもっと前で軽く響くようになると理想的。
気になるレベルではないが、曲によってはもっとヴィブラートを抑えられるようになる必要がある。

以上のことを総合して考えた結果として、レパートリーがツェルビネッタなどで勝負し続けられるなら、
有名歌劇場で主役を歌う日も遠くはないだろう。
武蔵野辺りが目を付けて日本に呼んで欲しいものである。

 

 

 

シューベルト  Heidenroslein

最後に4年前の演奏で、シューベルトの「野ばら」
きっと私はこの演奏だけを聴いていたら注目することはなかっただろう。
繰り返しになるが、この恐るべき成長スピードこそアレクサンドラ ノヴァコフスキという歌手の最大の魅力ではないだろうか?
今後の更なる活躍を心より期待せずにはいられない歌手である!

 

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