Samuel Hasselhorn (ザミュエル ハッセルホルン)はドイツの若きバリトン歌手
今年のエリザベート王妃国際コンクールの優勝者(彼の公式HPはコチラ)
私が彼に注目したのは、昨年のリートコンペティションの演奏を聴いてである
演奏は動画で見ることができる。
このコンクールの出場者の中でも確実に圧倒的に上手いと思って注目していたら、
とうとうエリザベートまで取ってしまったか。
まず、彼の演奏の何が素晴らしいかと言えば、
響きが全て安定していること。
全ての母音でが前で響き、落ちたり詰めたりすることがない。
若いのに全く勢いで歌うところがない。
知性と技術に裏打ちされた美声。全く持って素晴らしいの一言である。
ここまで褒めた後で、今後彼に期待したいことは
13:30~のシューベルト Abschied (別れ) 、その次のDie Taubenpost(鳩の使い)
なんかを聴くと単調に聴こえなくもない。
理由としては、まだまだ上半身だけの響きで歳を重ねればもっと深さが出るだろうし、
レガートで歌う能力が決定的に足りない。
これはクラシックの声楽作品を歌う以上、
ジークフリートのミーメ役などの特例を除いて絶対的に必要な技術である。
後はロングトーンでやや力む所。
こちらが今年のエリザベート王妃国際コンクールを取った時の演奏のようだ
曲目はヴェルディのドン・カルロ(フランス語版)から 「終わりの日は来た」
いかがだろうか?
再考音(Fis)の音は安定しているが、中音域で伸ばしている音が揺れるのは気になる。
こちらは予選の演奏だろうか。
ブラームスの4つの厳粛な歌からO Tod, wie bitter bist du(おぉ死よ、何とお前は苦いことか)
O Tod,wie bitter bist du,
Wenn an dich gedenket ein Mensch,
Der gute Tage und genug hat
Und ohne Sorge lebet;
Und dem es wohl geht in allen Dingen
Und noch wohl essen mag!
O Tod,wie bitter bist du.
O Tod,wie wohl tust du dem Dürftigen,
Der da schwach und alt ist,
Der in allen Sorgen steckt,
Und nichts Bessers zu hoffen,
Noch zu erwarten hat!
O Tod,wie wohl tust du!
おお死よ、なんとお前は苦いことか
お前のことを人が考えるときには
その人が善き日々を送り
不安なく暮らし
万事がつつがなく
食べることにも困らぬ
おお死よ、なんとお前は苦いことか
おお死よ、なんとお前は貧し者達には心地よきものか
か弱き者や年老いたる者には
全ての悩みの中に投げ込まれ
そして、全くより良い希望を抱くことも
もはや期待することもない
おお死よ、なんと汝は貧しき者には心地よきものか
こういう曲を歌うと、フォルテには十分な強さがあるだけにピアニッシモの響きの不足感が否めないか。
何にしても、今後彼がさらなる飛躍を遂げるためには、1にも2にもレガートで歌えるようにすること。
それに尽きる。
今後の活躍を祈りたい!
Ich erwarte dass er ein grosser wird
[…] ドイツ期待の新星バリトン Samuel Hasselhorn […]
私も一昨年?レコード芸術の海外CD評(私にとっての「新しい声」を発見する貴重なソース!)彼の名を初めて見て、早速Youtubeで聴いてその深い響の全く癖の無い美声にいっぺんで虜になり、ダウンロードしまくりました。
特に、Die alte Lauteを初めとするシューマンは完璧で、かってのハンス・ホッターの超名演と引けを取らない程と舌を巻いた次第!