Beth Taylor (ベス テイラー)はスコットランド生まれのメゾソプラノ歌手。
ちなみに、本人のHPはコチラ
2018年に、Gianni Bergamo Classical Music Awardというコンクールで優勝して注目を集め、来シーズンからチューリヒ歌劇場の研修所で更に研鑽を積むようですが、既に有名な音楽祭へ出演したり、ジェニファー ラーモア、サラ コノリーといった有名歌手の元で学んでおり、このタイミングで注目しても早過ぎることはないと考えています。
テイラーの声質については、メゾソプラノということですが、声はコントラルトに近いと思います。
Handel……..Ottone’s Lament from Agrippina
Mahler……..Urlicht from Des Knaben Wunderhorn
Britten……..Lucretia’s Aria from the Rape of Lucretia
Rossini…….Una Voce Poco Fa from the Barber of Seville
まだまだ粗削りでなところも目立ち、
ヘンデルでは、イタリア語の響きはあるのですが、発音が前にきておらず籠り気味になってしまう。
マーラーでは言葉の出し方やテンポの揺らし方にもちょっと違和感を感じる部分がある。
何よりレガートが全然未熟なので、この曲を歌うには早い印象を受ける
ブリテンは・・・英語の発音に声も影響を受けている気がします。
他の言葉を歌うより、開いていない声になることがある。
ロッシーニ
”e”母音が生声になることがあるのがとても気になります。
後は時々高音が勢いになりますが、出てない訳ではありません。
全体的に、低いテッシトゥーラの曲を好んで歌っているように聴こえますが、高音は意外と抜けるので、あまり低音ばかりで勝負せず、
もっと高めの音域を使った方が、声的にも発音的にも良いのではないかと感じます。
持っている声や、独特な歌の世界観を作り出すことができる能力は若手としては大変優れていると思いますし、能力があればこそ、その分おしいと思うことが多い、というのもあるでしょう。
こちらは今年の演奏、ちょっとじっくり分析してみましょう。
<歌詞>
Schöne Welt,wo bist du? Kehre wieder,
Holdes Blütenalter der Natur!
Ach,nur in dem Feenland der Lieder
Lebt noch deine fabelhafte Spur.
Ausgestorben trauert das Gefilde,
Keine Gottheit zeigt sich meinem Blick.
Ach,von jenem lebenwarmen Bilde
Blieb der Schatten nur zurück.
<日本語訳>
美しき世界よ、お前はどこ? 戻って来い
自然が優しく花開いた時代よ!
ああ、歌の妖精の国にだけ
お前の素晴らしい痕跡が生き残っている
滅んで悲しみに満ちた野原、
私の視界にいかなる神も現れない。
ああ、かの生命のぬくもりの姿については
影だけが、ただ残されていた
まず発音的に気になるのは、促音がないこと
「Gottheit」とか「Schatten」とかは言葉がわからない。
”r”の扱いも、巻くのが口語に寄せるのか、分り難い。
「der Natur」が「ディー ナトゥー」に聴こえるのはちょっと・・・。
後は細かいことを言えば、まだ”i”母音は正しいポジションには入っていません。やや暗く重い響きで、響くポジションが落ちている。(”e”が混ざったような”i”に聴こえます)
しかし、それ以上に気になるのがシューベルトを後期ロマン派作品のようにドロドロ歌い過ぎてること。
とにかくピアノがペダル踏み過ぎだし、はっきり言ってマーラーと同じようにシューベルトを歌うのは感覚的に私は受け付けないのですが・・・。
テンポを遅くとっても、もたつく感じになってしまってはダメです。
こういう部分で、テイラーは自分がやりたい音楽をするだけでなく、様式感に則った上で自分の表現を追求しないといけないと思います。
例えば、リート伴奏の名手、ギースの伴奏で歌っているクライターの演奏と比較すると、伴奏の影響力がどれほど大きいかがわかります。
Julia Kleiter
フランス語は声に一番合っている気がしますが、
この映像だと喉や顎の動きが良く見える分、まだまだ押したような声で歌っているのが視覚的にも分かってしまいます。
伸ばしている音が真っすぐキレイに抜けず、どうしても不要なヴィブラートが掛かってしまったり、
低音と高音で響きの質が変わってしまったり、
課題は多いですが、そんな中でも上手くまとめてそれなりの演奏にしてしまう能力は大したものです。
これから低音を伸ばしてコントラルトとしての活動を中心に行うのか、
持っている高音を鍛えて、もう少しテッシトゥーラの高いレパートリーに移行するのか、
持っている楽器が大変素晴らしいだけに、あらゆる可能性がある歌手であることは間違えありません。
どんなレパートリーを追求し、どんな演奏を聴かせてくれるのか、是非注目してみてください。
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