早逝が悔やまれるワーグナーソプラノ Sabine Hass



Sabine Hass (ザビーネ ハス)1949~1999はドイツのソプラノ歌手
この年代でドイツのワーグナーソプラノと言えば、Hildegard Behrens(ヘルデガルド ベーレンス)の方が遥かに知名度は高いが、
ハスはベーレンスより太くて深い響きでありながら、金属的な響きにならない暖かさがあった。

残念ながら50歳手前で亡くなってしまったことや、ドイツ~オーストリア圏内の活動が中心だったことで、
世間的にはバイロイトでゼンタを歌ったことがある歌手。
程度の認識しかないかもしれないが、そのゼンタが並外れて素晴らしいということはあまり知られていないのではなかろうか?

 

 

1986年(38歳)
ワーグナー さまよえるオランダ人 ゼンタのバラード

 

 

 

この曲を歌うと、殆どの歌手はこんな感じになる
ニナ・シュテンメ

 

 

 

1993年のバイロイト音楽祭(44歳)
※バイロイトは1991~1993まで3年連続で同じ役を歌っている。

さまよえるオランダ人(全曲)

高音の当たり方、豊かな低音の響き、歌詞の明確さ、レガート、ディナーミク、
全てが高い水準にある。
特にピアノの表現での緊張感は見事で、
ピアノにしたら歌詞が聴こえない。
というのは発声として間違っていることがこの演奏からもよく分かると思う。

本来、ピアニッシモの表現は、小さい音にするという意味ではなく、
言葉の緊張感を極限まで凝縮するということであるから、
当然言葉の緊張感も高くなってしかるべきだ。

シュテンメはあくまで一般的な例として挙げただけだが、
高音と低音で明らかに響きの質、ポジションが変わっているのがわかると思う。
こうなると音と音をなだらかに繋げることはできず、ゼンタのバラードのような跳躍の激しい曲では特に、
1音1音全てにアクセントが付いたような歌い方になって、結果言葉も不明瞭になってしまう。

 

 

 

 

 

Rシュトラウスの歌曲集 フリードリヒ ヘルダーリンの詩による3つの讃歌
Hymne an die Liebe(愛への讃歌)
Rückkehr in die Heimat(帰郷)
Die Liebe(愛)

結構長い歌曲なので15:13~の「愛」だけでも聴く価値がある。
歌詞が複雑で、あまりネット上に落ちている対訳にはしっくり来ていないので、
ここでは転載しないが、詩を見ながら味わいたい方はコチラを参照。

 

高音でのフォルテッシモ

 

 

高音でのピアニッシモ

 

理想的なフォーム
奥がしっかり解放されて、下唇と舌は完全に脱力。
高音だけでなく、低音でも同じような空間を維持して歌っているのだから、
並外れたブレスコントロールの技術を持っているということ。

口はあるていど閉じた方が、コントロールはし易い。
だから、クラシック、ポップスに限らず、
ボイトレでは最初にリップロールやハミングをやらされることが多いのは、
完全に口を閉じた状態にすることで、絶対ポイントが奥にいかないようにするためである。
因みにハミングは、鼻腔共鳴を見つけるための道具ではございません。

そんな訳で、口を開ければ良いという訳では当然なく、
広い空間があっても、常に正しいポイントに適量の息を通し続けられる技術があって、
はじめてこのような歌唱は可能となるということだ。

 

 

CD


影の無い女もやってたのか!

 

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