ハイセンスなコントラルトMarie-Nicole Lemieux

MarieNicole Lemieux(マリーニコル ルミュー)は1975年カナダ生まれのコントラルト
コントラルトと言っても、ぶっとい声のおばちゃん声ではなく、とっても柔らかく暖かい歌を歌う方
主なレパートリーはフランス歌曲やバロック作品、後はロッシーニ作品でも評判が良いようですが、
個人的にはフランス歌曲のスペシャリストというイメージが強いです。

まずはロッシーニ アルジェのイタリア女の重唱

こちらが同オペラよりアリアのCruda Sorte(酷い運命よ)

見た目は、普通のお〇ちゃんなんですが、何故か歌うと愛嬌があって可愛らしく見えるから不思議です。
でもアジリタ(速いパッセージを転がるように歌う)技術に関しては、
ロッシーニを主戦場としている歴戦のロッシーニメゾと呼ばれる人達には劣るかなという印象。
それにしても、この人の歌い方は独特です。
ドスが効いてるようで暖かい低音域は不思議な魅力があります。

でもやっぱりバロック物が最高です
私はこの現代最高のカウンターテノール、フィリップ ジャルスキーと歌った重唱で彼女が好きになりました

この曲が何という曲なのかも全然分からないのですが、兎に角圧倒的なエンターテイメント性の中に、
完璧なアンサンブルと半端ない完成度に仕上がっています。
クラシックが得意ではない人でも、きっと楽しい気分になれるのではないでしょうか。
そういう意味では、彼女は歌手としても、エンターテイナーとしても一流なのかもしれません。

そしてこちらが、フォーレの歌曲(マンドリン)

ここで伴奏を弾いているロジャー・ヴィニョールズは、
歌曲伴奏ピアニストとしては超が付く程の大物です。
特にフランス歌曲の伴奏は神です。

Les donneurs de sérénades
セレナーデを弾く男たちと、
Et les belles écouteuses
聴き手の美しい女たちが、
Echangent des propos fades
醒めた会話を取り交わし、
Sous les ramures chanteuses.
枝の下で歌をうたう。

C’est Tircis et c’est Aminte,
あれはチルシス、あれはアマント、
Et c’est l’éternel Clitandre,
あれは、いつも通りのクリタンドル、
Et c’est Damis qui pour mainte
それにあれはダミス、たくさんの
Cruelle fait maint vers tendre.
つれない女たちに、たくさん優しい詩を書いた男。

Leurs courtes vestes de soie,
男たちの短い絹のジャケットが、
Leurs longues robes à queues,
女たちの長い裾のドレスが、
Leur élégance, leur joie
彼らの優雅さ、彼らの喜び、
Et leurs molles ombres bleues,
彼らの青く柔らかい影が、

Tourbillonent dans l’extase
悦楽のさなかで渦を巻く、
D’une lune rose et grise,
薔薇色と灰色の月の下で。
Et la mandoline jase
そしてマンドリンは囀る、
Parmi les frissons de brise.
そよ風のふるえの中で。

(繰り返し)
Les donneurs de sérénades
セレナーデを弾く男たちと、
Et les belles écouteuses
聴き手の美しい女たちが、
Echangent des propos fades
醒めた会話を取り交わす、
Sous les ramures chanteuses.
歌うたう枝の下で。

因みに、このマンドリンという曲は、同じ歌詞にドビュッシーも曲をつけています。
発声技術や発音といった声楽的な部分以上に、ここまで独特の音楽性、空気感を持った歌い手は中々いません。
一体どんなことを考えて歌っているのか聞いてみたいものです。

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