正統派メゾソプラノHermine Haselböck

Hermine Haselböck(ヘルミネ ハーゼベック)は1967年オーストリア生まれのメゾソプラノ

現在ワーグナーを中心としたドイツオペラとリートを得意とするドイツ系の正統派メゾソプラノです。
同じオーストリア出身のメゾソプラノでワーグナーやリートを得意としているメゾと言えば、
私達にはElisabeth Kulman(エリザベス クールマン)が馴染み深いですが、クールマンは元々ソプラノだったこともあり正確にはソプラノとメゾの中間に位置しているのではないかと私は思っています。

さて私がHermine Haselböckを知ったきっかけは、偶然手に取ったCDでした。
マーラーのリュッケルトの詩による歌曲が好きで録音を集めている時に偶然出会ったのですが、
感銘を受けたのは、それ以上に亡き子を偲ぶ歌の演奏でした。

いかがでしょうか。
響き・表現の深さ、力強さの中に見事に静寂が同居していますね。
発音にしても、ハッキリしているにも関わらず耳につく子音の突出がありません。
そして驚くべきレガート歌唱の技術。
どれだけこの人のレガートで歌う技術が優れているかは、以下の日本が誇るメゾソプラノ、
藤村 実穂子の演奏と聴き比べて頂ければ一目瞭然でしょう。

 

しかしHermine Haselböckの素晴らしいのはそれだけではありません。
上記音源の17:30~こんな天気に(In disem Wetter)では今までの静寂が一変
第一声から圧倒的な存在感で、初めてこの演奏を聴いた時は暫く茫然としてしまったのを覚えています。
胸声に落としている訳ではないのですが、優れたメゾ特有の力強いミックスボイスとでも言えば良いのでしょうか。
この辺りの技術は非常に繊細で難しく、世界的に見ても上手く使いこなせる人は中々いません。

この曲の有名な録音は大抵管弦楽伴奏なので、一概に比較することはできませんが、
Marjana Lipovsek (マリヤナ リポヴシェク)

Anne Sofie von Otter(アンネ ゾフィー・フォン オッター)

と言った名歌手と比較しても全く引けを取らない。
それどころか更に上の演奏をしているのではないかと思います。

現在は何かと軽い声が好まれる傾向にあって、ヘルデンテノールすら軽い声のテノールが平然と歌ったり、
何人であろうと、伊仏独英露のレパートリーを持っているのが当然のようになってきましたが、
こうした自国の芸術作品を、しっかり伝統に根差した解釈、声で歌う歌手というのも評価していかねばなりません。

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