ドスの効いた神々の長の声を持つ男 Albert Dohmen

Albert Dohmen(アルベルト ドーメン)は1956年ドイツ生まれのバスバリトン
私の中ではファルク・シュトルックマンと並んで現在最高級のヘルデンバリトンだと思っている歌手だが、
彼の声はタイトルの通り少し癖が強いという指摘がない訳でもない。

バイロイトでは長きに渡りヴォータンやアルベリヒを歌っているが、
そのアクの強さ故に、アルベリヒが適役と見なされている感がある。

バイロイトの指輪でヴォータンを歌った年はティーレマンが指揮を振っていたこともあって、この映像は比較的よく知られている

だが、上記の2007年の演奏より、2014年の演奏の方更に声が色んな意味で凶悪になっている

この声は神か悪魔か?と言いたくなる。
アクが強いという表現が正しいのかわからないが、低音がここまで上半身に響く歌手はそういない。
バスバリトンということになっているが、声の太さではなく響きの高さだけを聴けばハイバリトンである。

それもそのハズだ

写真左、中音域の”e”母音、写真左、高音域の”i”母音

 

 

 

 

 

 

この下唇の引っ張り方はまるでアルフレード クラウスのようではありませんか。

写真 クラウスがハイCを出してる時

ハッキリ言って、上手いテノールは程度の差こそあれ、上の歯が見えるような歌い方をする人はあまりいません。

ドーメンを見ればわかる通り、偉大なる歌手はバスでも下唇を引っ張って歌います。
しかし、なぜか日本の多くの指導者は頬筋を上げるため、やたら上唇を上げさせたがる。

深くて広い空間を維持するためには下を引っ張る力と、縦に開いて天井を高くする力の両方が必要なんですよね。
少し考えれば当然のことなのですが、声楽的発声法という名の宗教なのか儒教なのか
こういう口のフォームで歌ってる日本人バス・バリトン歌手は恐らく皆無です。本当にもったいない。

話をドーメンに戻して、写真の演奏は
トスカのテ・デウム

この人はイタリア語を歌っても、響きがドイツ語歌ってる時と変わらないのが素晴らしい。
意外とドイツ物だと響きが集まるけどイタリア物だと薄っぺらい響きになってしまったりするのが、
ドイツ物を主戦場とする歌手の傾向なのだが、ドーメンはそういう部分がまるでない。

 

お勧めCDだが、
この人はあまりCD録音がない。
まずワーグナーアリア集
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FI8T8W/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=pota52-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B000FI8T8W&linkId=e9fb5ebf4b5142d48e21fcbd1748ea67

このアリア集めの凄いところは、ナクソスより安いレーベルから出ており、
更にライヴ録音でワーグナーアリアを歌っているところである。
こんな演奏会やってくれないかな~と切望せずにはいられないワグネリアン(ワグネリアーナ)には一押しである。

 

そして、バイロイト2008のリング全曲
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これはティーレマン最終年(だったと記憶している)の指輪で渾身の演奏。
記念碑的録音としても価値がある。

 

 

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