International Stanisław Moniuszko VOCAL COMPETITIONに日本人が出場した結果・・・



Stanisław Moniuszko VOCAL COMPETITIONというポーランドで行われるかなりレベルの高い声楽コンクールに日本人が出場しました。

2017年度  海外音楽研修生費用助成対象者 としてウィーン 国立音楽大学へ留学した、
松原 みなみ氏である。

 

松原みなみ氏の簡単なプロフィールは以下の通り

◆ 22th友愛ドイツ歌曲コンクール学生の部奨励賞(最高位)
◆ 24th友愛ドイツ歌曲コンクール一般の部2位、日本歌曲賞 
◆ 文化庁推進事業オペラ公演「Cosi fan tutte」デスピーナ役出演
◆2015年度9th藝大モーニングコンサートでR.シュウラウス「クレメンス・ブレンターノ   の詩による6つの歌」を藝大フィルハーモニーと共演
◆ウィーン国立音楽大学主宰「King Arther」エミリーネ役で出演
◆ルーマニア・オラデア国立フィルとハイドン作曲オラトリア「四季」演

 

つまり世界的に演奏活動をしていると言える訳だが、このコンクールの結果は衝撃の予選落ちだった。

 

 

 

1st STAGE AUDITIONS part

 

5:09 OLGA ZHARIKOVA☆
15:34 LONG LONG☆
21:39 SLÁVKA ZÁMEČNÍKOVÁ☆
34:22 MYKHAILO MALAFII
42:53 ANNA MALESZA☆
51:14 MINAMI MATSUBARA
1:01:51 DEMIAN MATUSHEVSKYI
1:10:19 DANYLO MATVIIENKO
1:20:35 MEGAN MOORE☆
1:30:20 MARIA MOTOLYGINA☆

 

名前の後ろに「☆」を付けた人が二次予選に進んだ人である。

※なお他の一次予選の演奏、二次予選の演奏はコチラで見ることが出来る。

 

勿論コンクールは単純に実力以外の要素も色々絡んでくるとは言え、
日本国内では特に優秀だったからこそ 海外音楽研修生費用助成対象者となった訳であるから、
単に海外の音楽大学に留学している日本人が海外のコンクールを受けたのとは訳が違う。

別に松原氏の実力や、 海外音楽研修生費用助成対象者の選考について意見を言いたい訳ではなく、
この現実を受け止めて、日本の声楽教育のレベルを上げるには今後どうすべきなのかを考えなければならないということだ。

さて演奏についてだが、
正直歌った曲目が、イドメネオの「.Padre, germani, addio!」というのがあまりコンクールにむいてない選曲なのでは?
というのも大いに敗因のようにも見えるのだが、声だけなら予選を通過した他のソプラノと比較して劣っているとは個人的には思わない。
では、選曲以外にどこに問題があったのか?

一番に気になるのは、他の演奏者と比較して明らかに口のフォームが違うこと。
そして一番まずいのは姿勢が悪い!
以下3人の歌っている姿勢を比較して頂きたい。

 

 

OLGA ZHARIKOVA

 

 

 

SLÁVKA ZÁMEČNÍKOVÁ

 

 

 

MINAMI MATSUBARA

 

別に一部分を切り取って印象操作をしようというものではなく、
松原氏の歌っている時はずっとこんな感じで前傾姿勢なので、動画でも確認して頂ければと思う。
ウィーン国立音楽大学までいってて、こんな基本的なことも指導されないというのが信じられないのだが・・・。
このコンクールの参加者は他全て外国人で、アジア人も女性は松原氏のみだったようなので、
コンクールの出演者ではなく、同じ日本人で海外のコンクールでも受賞歴のあり、
年齢も近いソプラノと比較してみよう。

芸大→ウィーン国立音楽大学という全く同じルートをたどっていて、
現在もウィーン在住の日本人ソプラノ、森野美咲氏。

 

 



 

 

ソプラノ Misaki Mori
シューベルト An die Sonne

 

 

森野 美咲氏のプロフィールについてはコチラを参照

グルベローヴァとかヘルムート・ドイッチュに師事してるという経歴は
コンクールの受賞歴よりある意味インパクトは強いかもしれない。
そのようなネームバリューだけでなく、声の面でも、典型的な日本人声を克服している。
以下”o”母音で歌っている時の森野氏と松原氏の比較。

 

 

 

 

 

 

 

「口を縦に開ける」と言われて一番勘違いし易い部分がこの比較に現れているように思う。
と言うのも、森野氏が自然に開口できているのに対して、松原氏は不自然に唇を突き出している。
「縦に開ける!」。「横に開かない!」という言葉だけを純粋に捉えれば松原氏のフォームの方が正しいことになるが、
この画像だけ見れば”u”母音の発音か?と思うかもしれないが”o”である。
こんな不自然な口のフォームが正しいはずがないことは簡単に分かりそうなものだが、
実際熱心に勉強している人ほど陥り易い罠がこういう部分で、素人が見れば不自然と思うことが、
勉強すると当たり前に見えてくるという現象が起こる。

具体的に松原氏のフォームの問題についてだが、
唇や下顎に不要な力が入っているからで、表情筋の動きを見ていれば、
母音ごとにフォームが大きく変わっているのがよくわかる。
母音ごとに口の形が大きく変わるということは、当然共鳴空間が絶えず変動するということなので、
響きの質が安定せず、発音や音程によって響きが落ちたり、鼻に入りそうになったりしてしまう。
結果としてレガートができず、響きも硬くなり、”r”以外の子音が殆ど飛ばないというようなことになってしまっている。

このように、松原みなみ氏は綺麗な声をしているだけに本当に基本的な部分ができていないの勿体ない。
この予選落ちという結果から是非とも這い上がって頂きたいものである。
今後の活躍に期待したい。

 

 

 

プッチーニ ジャンニ・スキッキ O mio bbbino caro

2012年の森野氏の演奏
シューベルトの演奏は恐らく2018年頃なので、これだけ演奏が変わるということだ。
この時は”e”母音なんて典型的な日本人ソプラノの平べったい響きであったが、現在は見事に克服でさている。
こういう部分を観察することで、声楽学習者は自分の血肉にすることができるのだから、
自分の演奏だけでなく、他人の演奏に興味を持つことは絶対に必要なことだ。

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