ヴェリズモオペラのフォークト的テノール? Stefano La Colla

Stefano La Colla(ステファノ ラ コッラ)はイタリアのテノール歌手。

タイトルの通り、プッチーニのトゥーランドット、蝶々さん、トスカ、マスカーニのカヴァレリア ルスティカーナ、ヴェルディのトロヴァトーレといった重めの役を軽い声で歌っている姿は、やたら軽い声でワーグナーを歌いまくっているフォークトのよう。

しかし、ラ コッラは意外としっかりした発声技術で歌っていることは間違えありませんので、むしろ無理やり重い声を作って歌ってる、”K”から始まる有名テノールよりはよっぽど良いのではないか?
という声もあがっていたりするみたいなです。

ということで、是非皆様も軽い声でヴェリズモオペラの主役を歌うテノールは「あり」か「なし」か考える機会にして頂ければと思います/(^o^)\

 

 

マスカーニ カヴァレリア・ルスティカーナ サントゥッツァとトゥリッドゥの二重唱(3:40~)
メゾソプラノ Elena Nebera

確かに軽いんですが、オケの上を声が通っていく感じがあって、
経験上、こういう声は舞台に近い席より後ろの方の席の方が声が聴こえたりします。

サントゥッツァ役のメゾより、明らかに響きが高く、高音も全く揺れたり、しゃくり上げるように出すことがないのはポイント高いので個人的には悪くないどころか、むしろ上手いと思いますがいかがでしょう・・・。

 

 

 

ヴェルディ トロヴァトーレ Di Quella Pira

こちらは流石にないわ~!
と思う人が多いかもしれません。
問題は声と言うより、「Pira 」の歌詞のような速いパッセージで推進力が失速してしまうことではないかと思います。

こういう部分は上の響きだけじゃなくて、もっと深い身体の支えと連動した瞬発的な息の回し方が要求されます。
下品で叫んでいるだけじゃないか!という批判も多いボニゾッリの演奏ですが、実は彼は元々ロッシーニテノールで、こういう速いパッセージを処理する技術は高いのです。

 

 

Franco Bonisolli

ラ コッラとボニゾッリを足して2で割るとちょうど良い感じの歌唱になるのではないか?とも思いますが、
ボニさんのこういう速いパッセージを力強い声で正確に歌う技術というのは軽視しできません。
パワーや勢いで歌ってるように聴こえるかもしれませんが、これは確かな技術があってこそできることです。
逆に言えば、ラ コッラに足りないのは、響きの深さであって、声の重さではない。というのが私の意見です。

 

 

 

ヴェルディ 椿姫 Brindisi
ソプラノ Couwenbergh

演奏会のアンコールとかでこの曲が演奏されると、
テノールは大抵ただ良い声を垂れ流す演奏をし勝ちなのですが、
ラ コッラは物足りない声ながらも、まろやかで旋律美を浮き立たせるような歌い方をしています。
この演奏が良いか悪いかは別としても、優雅な旋律の歌い方には好感が持てました。
ラ コッラという歌手は良いのか悪いのか本当によく分からないテノールです(笑)

 

 

 

プッチーニ トゥーランドット Nessun dorma

前の演奏より少し声が太くなり、響きのポジションは変わってないので、
相対的に良くなっているような印象を受けます。

個人的な意見ですが、Nessun dormaって本来はこういう歌い方をすべきなんじゃないかと思います。
オーケストレーションも合唱も繊細なので、高音を出来る限りデカい声で張る。
みたいなのより、旋律の美しさを損なわない範囲の声や表現で歌うべきではないかと考えるからです。

 

 

 

 

 

ポンキエッリ ジョコンダ ’Cielo e mar

これが一番最近の演奏だと思うのですが、上の方で紹介したトラヴァトーレや椿姫とは別人です。
まだまだ高音に線の細さはありますが、安定感は大したものです。

若い内に声の深さや太さを求めるより、まずは高いポジションでの響きを追求していくことが後々の声の発展には役立つのではないか?
と、この人の演奏を聴いていると考えさせられます。

 

 

 

プッチーニ トスカ(全曲)

普通にグリゴーロのカヴァラドッシより全然上手いと思います。

 

 

 

VITTORIO GRIGOLO

今年のアレーナ ディ ヴェローナでホイ ヘーとのトスカですが、
グリゴーロはラ コッラに比べれば、言葉を真っすぐ歌うことができず、表現で過剰なアクセントをつけたりする度に落ちるし、ピアノの表現も抜いた感じで緊張感のない声になっています。

ラ コッラは低音でも響きの質が変わらずしっかり聴こえますが、グリゴーロの低音は飛びません。

本来声に合わない重い役をやると、グリゴーロのように声だけ重くなって、響きは高さが出ず、真っすぐに声が飛ばなくなってくるものですが、
ラ コッラはずっと声の合わない役をやり続けてきて、今ではしっくりきています。
声種は違いますが、まるでレオ ヌッチのようです。

レオ ヌッチも若い頃はテノールだと言われ続け、声楽やってる人はヴェルディバリトンとしては認めていな人もよくいました。
しかし、今では誰もが認めるところで、それどころか後任者がいないと嘆く人間の方が多いくらい(本当はいるんだけどね)
そういう状況を見ていると、ラ コッラは10年後、20年後にはその時代を代表するヴェルディテノール、ドラマティックテノールと呼ばれているかもしれません。

なお、ヌッチの声については過去記事で詳しく遍歴を追っていますので、まだご覧になってない方はそちらも併せてご覧ください。

 

 

◆関連記事

バリトンを歌うテノール Leo Nucci

 

 

テノールでは、先に紹介したボニゾッリもそうですが、
ロッシーニテノールだったクンデが今やオテッロ歌いとして大活躍してる様を見ていると、

「ラ コッラがドラマティックテノールになるだと?それはないな!」

とは誰も言い切れないと思います。

でも、フォークトの声がどんどん重くなって、15年後は最高のトリスタンに・・・てのはないと思いますけどね(笑)

 

「ラ コッラはこれ以上は重い役を歌うと流石に合わないだろ~!」

とか

「いゃいゃ、フォークトもそのうちトリスタンいけるようになると思う。」

などなど、ご意見があれば是非おきかせください。

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