ロッシーニ~ワーグナーまで歌える恐るべきメゾTatia Jibladze

Tatia Jibladze (ターチャ ジブラッゼ)はジョージア国のメゾソプラノ歌手。

読み方が正しいかどうかはわかりませんので、そちらはご了承ください。
この方、ジョージア(グルジア)生まれで最初に活躍したのはボローニャやペーザロなどのイタリアで、モンテヴェルディやロッシーニを歌っているかと思えば、
今ではキールに住んでワーグナー作品を歌いまくっているという人。
しかも驚くことに、ワーグナーとロッシーニを歌う活動を平行して行って、両方のレパートリーで高いレベルの演奏ができるという、ちょっと訳のわからない声を持ったメゾソプラノであります。

 

 

余談ですが、

すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、

Jessye Norman(ジェシー ノーマン)が9/30に亡くなりました。

 

https://edition.cnn.com/2019/09/30/entertainment/jessye-norman-obit/index.html

 

オペラ歌手としては確かに有名な方でしたが、
それにしてもこの報道量は、ただのスター歌手の扱いではないように感じます。
やはりグラミー賞やアメリカの国民芸術勲章の力は大きいのでしょうか?

そこらへんを歩いている人に、
「ジェシー ノーマンって知ってる?」
と聞いて、歌を知ってるとはとても思えないのですが・・・。
とは言え、黒人歌手で有名な方は、黒人であるというアイデンティティを強く持っているような気がします。

アンダーソン、バンブリー、ヴァーレット、ノーマン、こういった人達は、ある意味白人社会のクラシック音楽に適用しながらも、黒人文化を手放さなず生涯黒人霊歌とかを歌ってましたね。
バトルは・・・・ちょっとよくわかりませんが。

そんなノーマンは、
ただオペラのスター歌手、という以上のものがあったのかもしれません。
この場を使ってご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

 

ロッシーニ ランスへの旅 二重唱  Di che son
テノール Anton Rosistkiy

この演奏は、2015年の第53回大阪国際フェスティバルにて来日した時の演奏。
こんな逸材が来日していたのに、私は全く知りませんでした。

大阪でまさかこれだけの若手有望キャストを呼んでいたとは驚きです。
こういうキャストを揃えてこそ新人発掘プロジェクトと言うのではないかな?PROMUSICAさん。

 

 

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それは置いといて
ジブラッゼの歌声ですが、華はないかもしれませんが、
声の太さや、ややくすんだ響きとは裏腹に音楽作りはとても丁寧です。
決して吠えることも、喉を押すようにして無理やりアジリタをすることもなく、
スムーズに低音~高音まで出すことができています。

こういうことを書くとセクハラになるのかもしれませんが、
こんな細身の身体で、なぜこんな太い声なのか不思議です。

身長はかなり高そうなので、声帯は長いのでしょうが、
太さはあるのにテッシトゥーラはかなり高めで、ソプラノのような響きで高音もだせる。
まるで若い頃のコッソットみたいなんですけど・・・
ソロで歌ってる映像でコッソットの声と比較してみてください。

 

 

 

ドニゼッティ ロベルト・デヴリュー All’afflitto è dolce il pianto

 

 

 

 

Fiorenza Cossotto  29歳の時の演奏

コッソットの方が線が細くて直線的な声で、ジブラッゼはも少し柔らかさがありますし、歌い方は違うので、コッソットの方が前にビンビン鳴る声をしてます。
ですが、高音の質が2人ともメゾソプラノの高音ではなく、上手いソプラノのような高音なんですよね。

低音と高音で音質が違う訳ではないのですが、高音は決して太くならずに真っすぐ抜けていくように出せる。
高音が出るメゾは沢山いますが、大抵は硬くなったり、叫ぶような雑な響きになったりするものですが、ジブラッゼはそういうことがなく、息の流れだけで歌えているのがわかります。

 

 

 

 

ワーグナー 神々の黄昏  Waltraute’s Plea to Brünnhilde
ソプラノ Kirsi Tiihonen

1幕のブリュンヒルデとヴァルトラウテの対話のシーンです。
8分辺りからご覧頂くと良いかと思いますが、
声の深さ、高音の豊かさ、発音のポイント、どこをとっても高次元の演奏。
発音が明確だと声が鋭過ぎたり、深い音質だけど詰まっているようだったり、
声量はあっても高音が絶叫のようになってしまったり、どこかを立てるとどこかが倒れるのが普通なのですが、ジブラッゼは全てが高いレベルでこなせています。
低音も奥まった響きになることなく、全て前で響いているので、ピアノの表現でもよく声が飛んでいるのがわかります。
ただフォルテの表現ではまだ声が硬くなる傾向があり、
ブリュンヒルデ役の声が非常に強くて硬質なので、張り合うように歌った時にやや絶叫系になる部分はあるかもしれません。

それでも、ブリュンヒルデ役のソプラノが、高音と低音で明らかに響きの質が違うのに比べて、ジブラッゼは低音~高音まで同質の響きですから、中音域~高音にかけてのフォルテで広がりのある声を得られれば、ほぼ言うこと無しといった感じではないかと思います。

 

それにしても、ジョージア国というのは本当に素晴らしい歌手の宝庫ですね。
私の中では、ジョージアは声楽大国です。
これからもっとジョージア出身の歌手達が世界の一流歌劇場を席巻するのではないかと思います。
そんな中でも、ジブラッゼはあらゆるレパートリーを高いレベルでこなせるメゾとして君臨する日も遠くないでしょう!

 

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