Cast
Théâtre des Martyrs Bruxelles 2018
Orchestre Royal de Chambre de Wallonie
Direction musicale : David Miller,
Mise en scène : Eric Gobin
FIORDILIGI Laura Telly Cambier
DORABELLA Pauline Claes,
FERRANDO Pierre Derhet,
GUGLIELMO Drew Santini
DESPINA Laurie Janssens,
DON ALFONSO Shadi Torbey
COSTUMES Gaël Bros Vandyck,
LUMIÈRES Nicola Pavoni
PRODUCTEUR Amadeus & Co asbl
Cosi fan tutte-Mozart-Brussels 2018-Act 1 [LIVE]
Cosi fan tutte-Mozart-Brussels 2018-Act 2 [LIVE]
本日はこちらを鑑賞して評論して参ります
まず、オケは比較的ピリオドに近いのでしょうか。全体的に軽快で速めのテンポですが、
追い込みを掛けたい部分(例えば1幕フィナーレ)でテンポが鈍ったり、歌手陣の発音が追いつかないという状況は、
モーツァルトのオペラではかなり残念と言わざるを得ない。
それでは歌手別に見ていきます。
ドン・アルフォンソ役:Shadi Torbey
2004年のエリザベート王妃国際コンクール入賞者ですが、
全体的響きが浅く、バスとしての厚みがない。上半身だけで響いている感じなのだ。
それにも関わらずテンポに乗り遅れるなど、正直かなり残念な感じである。
ヘンデルのメサイアのソロを歌ってる映像があったので、改めてじっくり聴いてみたが・・・
やっぱり浅い。低音の響きは悪くないが、顔の前面だけしか響いていないような声である。
バスとしては圧倒的に奥行きが足りない。
デスピーナ役: Laurie Janssens
ベルギーのソプラノ歌手。
公式HPでは軽いリリックなソプラノとのことだが、
結構音色は暗め、
なのに、やたら口を横に開くもので、音色は暗いのに深さもなく、言葉も飛ばないという状況
ただ高音は比較的良いポジションに入っている。
何にしてもレチタティーヴォのポジションが低いというのは致命的、
そこが上手くないとデスピーナ役としては物足りない。
別の演奏も参考までに聴いてみたが
発音も癖があり、”Q”や”C”というイタリア語では角が立ってはいけない子音が強すぎる。
モーツァルトのスーブレット役は、軽い声で歌われるのが一般的だが、意外と音域が低く最高音も高くない
ドラマをしっかり伝えるには中音域でしっかりした声と発音が求められる。
グリエルモ:Drew Santini
カナダのバリトン
今回のキャストの中で一番良かった。
まず言葉でしっかり演技ができている。
動きがなくても、声で演技が伝わらなければオペラ歌手としては二流である。
その部分において、ちょっと声を崩し過ぎる部分はある気がするが、そういうデフォルメ表現が嫌いでなければ、
彼の表現は面白い。
課題としてはドラベッラとの重唱でなどで要求される、音はピアニッシモで発音はマルカート(フォルテ)のような表現で、上手く当たらない。
制御がまだできていない印象を受けた。
とは言っても全体的に安定した響きと発音で中々良いバリトン歌手である。
フェッランド役:Pierre Derhet
ベルギーのテノール
なんと形容すれば良いか、端的に表すならガスの抜けた炭酸飲料みたいな声
特に鼻声という訳でも、高音がファルセットと同化してる訳でもないんだが、
胸の響きが全然ない。こういうのをタマなし声というらしいのだが、てこれもしかして違反ワード?
その割に高音が部分的にキツそうだったりと、どうもそもそもの声が出来ていない印象を受けてしまう。
他の演奏では
アジリタの技術はしっかりしているが、Aの音でギリギリ。
しかもパッサージョでアペルトになってしまっている。Fの音をフォルテで出すのはテノールにとっては結構大変なんだが、
「チェルカ~~~~~テ」のFの音でクレッシェンドするなら、そこで響きが粗くなるのは絶対NGだ。
私がテノールなだけにテノールには特に注文が細かくなってしまうのはご容赦頂きたい。
ドラベッラ約:Pauline Claes
ベルギーのメゾソプラノ
この演奏ではグリエルモ役のSantoniの次に良かった。
十分に深さもあり響きもまとまっていた。
ただ、アリアなんかでもリズムが遅れる部分があったり、高音がちょっとキツそうだったりと、
課題はあるが、低音も押すことなく安定した響きで伸びやかなのはとても好感が持てる。
こんごの活躍に期待したい。
他の演奏では、ケルビーノがあった
少年役だからか、こちらの演奏はやや作ったような声に聴こえなくもない。
後は”U”母音が間違っている。これが1年前の演奏だと考えると、今回のドラベッラは随分上手くなっている。
フィオルディリージ約:Laura Telly Cambier
ベルギーのソプラノ
この人は何とも表現し辛い右の写真はアリア(Per pieta ben mio perdono)で
最後のcaro bene「ベーネ」の下降音型を歌っている時
これが”e”母音のフォームか!
兎に角この人は、中音域の”e”母音が日本人の学生みたいな
平べったい声になる。
こんなフォームで歌ってたら当然だが・・・。
高音は流石に縦に開けているが、中音域でなぜかこうなる
いったい彼女の指導者はどこを見ている(聴いている)のだろう
そんな訳で、高音と中音域以下で響きが全く分離している。
こうなると言葉も真っすぐに飛ばせないし、表現の幅も狭まる
フィオルディリージは決してスーブレットの役じゃない
こんな平べったい声で歌ってはならないのだ(言い過ぎ?)
Per pieta ben mioの音楽を一本の糸のように息が流れて
下のAまでしっかり鳴らないといけない。
当然有名な方のアリアCome scoglioだって同じ、
軽い声で上と下の声が分離していては全く歌いこなせたことに
ならない。
では他の演奏はどうだろう
ドンナ・アンナのアリアでは、フィオルディリージよりは”e”母音の浅さは目立たない、
出だしはかなり良い感じだが、「Crudele」以外の言葉の力点がない。
因みに、アンナはかなりドラマティックな声の人が歌う役で、ニルソンもやっていた。
だからなのか、無理やり強い声を出そうとして最後破綻している。
持ち声は美しいのでもっと自分の声に合う役をやって着実に技術を磨いて欲しい。
総括
総括すると、全体的に冒頭でも述べたようにテンポに遅れるのは絶対に何とかしなければならない。
後はまだ若い歌手が多いので声の奥行や、レガートの技術は歳を重ねてできるようになってくるだろうから、
声に合わない役はやらないことだろうか。
今回の収穫はDrew Santini
今後出世する可能性を感じる。
ベルギー人で固めたキャストでただ一人のカナダ人だったので、もしかしたら客演歌手なのかもしれないが、
注目していきたい。
コメントする