Miriam Feuersinger (ミリアム フォイアージンガー)は1978年オーストリア生まれのソプラノ歌手で宮廷歌手。
日本語訳すると{炎の歌手}って、名前からして激しい歌唱をしそうですが、
実際は全く逆で、ドイツバロック音楽を得意し、既に宮廷歌手となっているので、
どちらかと言うと、Edelesängerin(高貴な歌手)ですね♪
オペラは全然歌っていないようで、完全にバッハのカンタータを中心としたドイツバロック音楽だけを演奏する、正真正銘のドイツバロックのスペシャリストと言って良いでしょう。
クリストフ グラウプナーは17世紀後半~18世紀にかけて活躍したドイツのバロック音楽作曲家
歌手を一番後ろに配置しているところから見ても、独唱というより、アンサンブルとして作品を演奏している意図は明らかでしょう。
歌い方も少々独特で、前であまり言葉をさばかず、ドイツ語の発音の特徴とも言える子音の鋭さをあえて抑えるような歌い方をしているように見えます。
唇の動きが少ないことと、前歯を見せずに歌っているフォームからも、
ほぼ軟口蓋ら辺で響きも発音もコントロールしているように聴こえます。
こういう歌い方については私はあまり詳しくないのですが、
残響の長い教会なんかで歌うことを前提とした歌い方なのでしょう。
恐らくこの発音では、通常のホールでシューベルトとかリートを歌うと絶対歌詞がちゃんと伝わらないと思うのですが、バロックではこういう言葉に対して音色の変化がない演奏が良いとされる考え方があるのでしょうか・・・。
少なくともBCJの中の人の発言や、関係者の歌唱を聴く限り、フォイアージンガーのような歌い方をする人は聴いたことがありません。
すごく綺麗な響きで、無駄な力が入っていない無垢な歌声なのは間違えないのですが、
Elvira Bill – alto
Julius Pfeifer – tenor
Stephan MacLeod – bass
5:50~アルトのElvira Billがソロで歌うのですが、
後から他3人が歌うのと併せて聴くと、フォイアージンガーはソロよりアンサンブルでこそ力を発揮するタイプの歌手であることがわかります。
真っすぐに伸びる清らかな響きで、決して大きくはないながらも存在感と調和が共生した歌唱は職人技です。
ソロとして聴くならアルトのElvira Billの歌唱の方が魅力的ですし、個人的にも馴染んだ歌唱方と言えば良いのでしょうか。
発音も響きもよくわかるのですが、
フォイアージンガーは低音でも高音でも、弱音でも強い音でも、常にはっきり通る響きでありながら他者の演奏を邪魔しない。
それこそどんな発音、母音、子音にも響きの質に影響を及ぼさない。
逆に個として作品の世界を表現するには音色が一辺倒で、結局ディナーミクや技巧以外の要素がなくて、もう一歩踏み込んだ表現力を求めたくなってしまう。
そんな歌手ではないかと感じました。
とは言っても、アンサンブルが得意なソプラノっているようで全然いないので、彼女にとってカンタータを歌うというのはそれこそ天職なのかもしれません。
これも自分の声を正確に把握し、良い指導者によって正しい道にたどり着いた結果なのだと思うと、声に合ったレパートリーや歌唱表現を判断する耳や、様々な作品への理解がどれほど指導者にとって重要かわかりますね。
多くの作品を知るという作業は本当に大事なのですが、
音大では、先生の知ってる曲や、通例として演奏されるものを年齢や学年に合わせて生徒に与えるだけの教師が多く、生徒のために真剣にレパートリーを考えている人というのはどれだけいるのだろう?と疑問に思うことがあります。
フォイアージンガーはオーストリアとスイスで声楽を学び、特にバーゼルで学んだことが礎になっているようです。
良い歌手でも似たような歌手しか出てこないところより、こうやってちょっと異色な歌手が育つ土壌があるのはとても良いことだなぁと思えてなりません。
「正しい歌唱方は人の数だけ存在する。」
カルーソーの残したこの言葉は大変重要だと思います!
CD
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