１２月２４日に相応しい声　Philippe Jaroussky

Philippe Jaroussky （フィリップ　ジャルスキー）は1978年フランス生まれのカウンターテノール
恐らく人気、実力共に現代最高のカウンターテノールである。

12月24日に聴くには、これ程相応しい声もそうないでしょう

美声と言う言葉をそのまま声にしたような、いつまで聴いていても疲れません。

こちらはBACH

ファルセットで歌うのはとっても疲れます。
常にとっても薄く声帯を使わなければいけないため、息の流れが少し乱れただけで響きが保てなくなります。
そして、意外と知られていないのですが、
実はカウンターテノールは実声が高い人より低めの人がやった方がふさわしいと言われています。
と言うのも、ある程度声帯に厚みや長さがないと、ファルセットの歌声として機能しないためです。

簡潔に言えば、声帯が元から薄かったり小さい人は、実声とファルセットの区別が少ないのです。

伝説的な名テノール、イヴァン・コズロフスキーがそのタイプと言えると思います。

現代の発声に慣れた耳には少し違和感を感じる声かもしれませんが、
とても効率的に響かせ、言葉も明瞭です。
これを「浅い声」と形容してしまっては絶対ダメです。

日本人で今活躍している、村上敏明氏も、イタリアでは随分ファルセットで歌う訓練をしたと聞きますし、
テノール歌手にとって、ファルセットを磨くことは、
テノールとしての技術向上に必要な手段でこそあれ、
カウンターテノールになるための訓練ではありません。

話が脱線してしまいましたが、ジャルスキーの話す声を聴いて
歌声が想像できるでしょうか？

私には全くできません。
なぜこの声からあの歌声が生まれるのか全く意味不明です。

ただ言えることは、ファルセットでも声帯を長く使っていてるのは確かです。
どんな音を歌っても鋭くならず、言葉が不明瞭にならない。

この動画は中々興味深い

この通り、完全に普通に歌ったらバリトンの声なのです。

そして、実際に出ている声はファルセットの軽い声でも、実際はものすごい深さが必要であることがわかります。
男声が上手く歌えるようになるには、ファルセットでそれなりに歌えるようになることが近道です。
逆に言えば、実声で歌うより全然難しい。
それで軽々と超絶技巧をやってみせるのですから、ジャルスキーがいかズバ抜けた才能の持ち主かわかるのではないでしょうか。

今日本人で売れてるカウンターテノールと言えば、藤木大地ですが、
彼でも、まだまだ響きが上がり切らずにレガートで歌えていません。

イタリア古典歌曲でここまで聴かせられる歌手はどれほどいるでしょうか？
全部息が上の歯を伝って上唇の裏に響いていますね。
一方藤木は、高音で詰まったり、まだまだ力みが感じられます。

カウンターテノールは、訓練したら誰でもできそうに見えて、
実は生まれ持った楽器に帰属する声種なのです。

そんな中でも、ジャルスキーは傑出した楽器を持っているということでしょう。

CDは沢山出てます

この人は一体幾つCDや映像を出しているのでしょう。
数が多いだけではなく、質が伴っているのが本当に凄い。