プロが口を揃えて本物のヴェルディバリトンと評する歌手Giorgio Zancanaro

Giorgio Zancanaro (ジョルジョ ザンカナーロ)は1939年イタリア生まれのバリトン
バスティアニーニ、カプッチッリ、ブルゾン、ヌッチの間に入れられるべきイタリア人ヴェルディバリトンなのだが、
なぜか一般的には知名度が高くない。
その一方、プロの歌手や彼を知る音大生の間では絶対に評価が高いという歌手である。

ヴェルディ 運命の力から 2重唱  invano Alvaro ti celasti(アルヴァーロよ 隠れても無駄だ)

こうやって聴くと、ドミンゴの声が薄く感じる。
ザンカナーロの粘着質で太く深い、それで高音まで同じ響きで出せる。
これがヴェルディバリトンである。

 

ではトロヴァトーレのルーナ伯爵のアリアも聴いてみよう

本当かどうかはわからないが、私の師匠はザンカナーロを
「暇があれば女の子の尻を追っかけてた」と言っていたが、
だからなのか、そういう意味でもこのアリアは似合い過ぎてしまう(笑)

それにしても、この人はどんな音、発音でも空間が狭くならないし横にも開かない。
それでも発音がハッキリ聴こえるのだから、いったいどうやって発音してるのか大変興味深い。
発音するためには、当然舌の使い方、柔軟性が優れているということなのだろうけど、
正にイタリア語を歌うためだけに徹底して鍛えられた歌唱法なのだろう。
この声、口の開け方でドイツ語を歌う姿は全く想像できない。

お次はアッティラのアリア

 

そしてルイーザ ミラー

真のヴェルディバリトンが歌うべきアリアと言えば、
椿姫やドン・カルロではなく、ルイーザ・ミラーやアッティラ、運命の力である。
ただ、不思議なのは仮面舞踏会はあまり歌っていないこと。

 

Fの音を”o”母音で歌っているところ

 

 

 

Fisの音を”a”母音で歌っているところ

 

ただ、この時代は演技とかは結構どうでも良くて、
兎に角歌が良ければそれでよかった時代なので、この人は常に歌う時手を広げたり無駄に動かしたりしてます。
でも、私はハッキリ言って、歌を犠牲にするような動きは本来オペラで取るべきではないという考え方なので、気になりません。

 

最後に、
ドニゼエティ ランメルモールのルチアの2重唱

アルフレード・クラウス、ルチアーナ・セッラ、ジョルジョ・ザンカナーロという最強キャストによる映像で、
日本語対訳の付いたDVDがあった。
私が大学時代は門下内で回しやきされていたものである。

 

2人で最後の音Asを出しているところ

 

一流歌手は立ち姿が絵になります。
絶対良い声出てるだろ!てのが分かる姿勢と口のフォームです。

ザンカナーロは本当にヴェルディに特化した歌い方と声を持った稀有な歌手でしたが、
レパートリーが限定されているせいか、はたまた活動がイタリア国内が多かったせいか
実力ほどの知名度は獲得していません。
それでも彼の歌唱が一流であるということは誰もが認めざるを得ないところでしょう。

きっと今の時代でも、実力はありながら埋もれている歌手は沢山いるはずなので、
掘り起こしていけるよう微力を尽くして紹介していきたいと思います。

 

CD


激しくお勧めしたいルチーアの映像ですが、廃盤になっているのか、恐ろしく値段が跳ね上がっていました。


その代わりシェニエがお買い得ですね。

 

 

 

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