最も地味なプリマドンナMiriam Gauci

Miriam Gauci (ミリアム ガウチ)は1957年マルタ生まれのソプラノ歌手
この人、個人的にはミレッラ・フレーニより上手いのではないかとさへ思う素晴らしい歌手なのですが、
何とも地味で世間的な認知度は低いように感じます。

地味と言うのは、容姿であったり、表現であったり・・・

まずは有名なアリアから
プッチーニ ラ・ボエーム Mi chiamano Mimi(私の名はミミ)

私が地味と形容している理由は、この独特の細く透き通った声と、
ヴェルディやヴェリズモを中心に歌いながら、テンポの揺れが少なく、
ビブラートも殆どかけない、かなり淡泊な演奏故です。
その一方で、フレーニより上かもしれない。というのもご理解頂けるのではないかと思います。

因みに、こちらがミレッラ フレーニの同曲

個人的にはガウチを聴いた後だと、フレーニの声の揺れ、ピアニッシモの質が気になってしまいます。

 

この人、ハイソプラノが歌うような曲も歌ってます。
ルイージ アルディーティIl Bacio(口付け)

こちらがエディタ グルベローヴァの演奏

最高音を上げてるのが意外にもガウチの方がなのですが、
それを抜きにしても、甲乙つけがたい演奏。
この映像はガウチの口の動きま長時間ハッキリ映っているので勉強している方には参考になるでしょう。

 

とは言え、
この人の声にピッタリくる役は、
ヴェルディ オテッロのデズデーモナや、
プッチーニ 修道女アンジェリカです。
アンジェリカのアリア Senza Mamma(母もなく)

本当にこの人は大声を出しません。
常に繊細な表現と細っそいピアニッシモで緊張感が切れることがありません。

スピントだドラマティコだと大声大会を繰り広げている歌姫達は、
虚栄に走らず、こういう表現を目指してほしい。

細い声
というとマイナスのイメージが強いが、この人の声は細いにも関わらず鋭さが全くない。
ひと昔前の古楽歌手のように無表情でもない。
本当に良い意味で質素な中に最高の美が内包されている。

 

だから、トスカのアリアを歌っても説得力がまるで違うのです。

トスカはスカルピアを刺し殺すような気性の持ち主であるから、ここまで清潔な声や表現じゃいかんのじゃ!
という意見もあるかもしれませんが、
芸術に真摯に身を奉げてきたことを歌うならば、
このアリアだけは決して嘘偽りなくその歌手の最も純粋な声で表現されるべきなのではないでしょうか?

 

お勧めCD

まさかのナクソスから千円を切る値段でアリア集が出ています。
やっぱり地味な歌手だからグラモフォンとかEMIみたいなトコからは出てこない

後はボエーム全曲

トスカ全曲

本当は、ニコラ マルティヌッチ、エドゥアルト トゥマジャンと組んだヴェルディのオテッロが絶品なのですが、
残念ながらAMAZONには売っていないようでした。

4件のコメント

  • […] ガウチは過去の記事でも取り上げた通り、間違えなくフレーニより上手いソプラノである 極端なことを言えば、この演奏は本物である。 レガート、発音、ディナーミクどれを取っても一流。 それとゲオルギューを比較する訳ではないが、 上手い下手の問題ではなく、特に低音の声質の違いに注目して欲しい。 中でも(2:45辺り)の声はちょっとしたホラーである。 因みに同じ部分はガウチの演奏だと(2:30辺り) […]

  • […] フレーニよりは確実にMiriam Gauci (ミリアム ガウチ)の方がベルカントと呼ぶにふさわしい。 […]

  • Miriam Gauci は以前ナクソスのCDを聴いて素晴らしいと感じていましたが
    ほとんどk上して取り上げられたことのないソプラノでした。このサイトの評論は専門過ぎて好きになれませんでしたが、もう一度読み直そうと思いました。.

    • Yuya より:

      >自称遅すぎたテノール歌手様

      率直な感想頂きありがとうございます。

      私がここで記事を書いている理由は、全く声楽的な技術に関して知識のない評論家が歌手を評価していることに疑問を持ったためなので、
      どうしても内容が専門的になってしまいます。
      それでも、メディア露出したり、大手レーベルからCDを出しているオペラ歌手が、
      その時代を代表する歌手とは必ずしも言えないことは同意頂けるのではないかと思います。

      私の記事が、自称遅すぎたテノール歌手様のお気に入りの歌手が見つかる一助となれば幸いです。

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