Francisco Lázaro から学ぶアペルトな声と口のフォームの関係性


Francisco  Lázaro(fランシスコ ラザロ)は恐らくスペインのテノールと思われるが、
詳細な情報が探しても出てこないので、カラーの映像があることからも、
比較的最近の歌手だとは思うが詳しいことはわからない。

昨日の「浅い声」に関する記事に関連させて、今回は分かり易いテノールのアペルト(開いた)声について考えよう

一般的にアペルトな声というのは、平べったい響きのマイナスな意味で使われることが多いのだが、
正しく開いた声は必ずしもマイナスばかりではない。

そこで今回良い参考となる歌手がラザロという訳だ。

 

 

 

ヴェルディ アイーダ Celeste Aida

聴いての通り、ずっと開いた明るい響きではあるが、やや平たい声でもある。
ただし、この人の場合はポジションがブレないため、響きが常に安定している。
ポジションというのは、昨日の記事にも書いた奥行
上顎のラインから響きが落ちていないということ。

 

マルティヌッチの歌唱と比較するとその差は歴然
ニコラ マルティヌッチ

 

 

 

 

ラザロが歌っている時の口のフォームを見れば分かる通り、
殆ど写真のように上の前歯を見せて歌っている。
舌が完全に脱力して、口内や咽喉の空間を十分に確保できても、
このフォームではどうしても横に口が開いてしまい、
その結果として一番問題となるのは、声の強弱を自在に操ることができなくなること。

更に発音にもアタックが効かなくなり、最初のレチタティーヴォに言葉の力やリズム感が貧しく、
それによって一本調子な歌に終始するかたちになっている。

 

 

カフス専門サイト − CUFF.JP

 

 

今回ラザロをあえて取り上げた理由は、全く口のフォームが違う歌い方で、
他のアリアを歌った映像があるからである。

ヴェルディ マクベス O figli, figli miei!…Ah, la paterna mano

 

 

 

最後のカデンツァの最高音A(Hのw♭)

 

アイーダの時の声と、このマクベスのアリアの声を聴き比べれば違いは明白、
響きのポジションと口のフォームでしっかりピンとがあった声になり、言葉に力が伝わるようになった。
更に、響きの力強さは増していながら、
音量を絞った時にも緊張感を維持できるようになるので、必然的にディナーミクが自然になる。

とは言っても、時には表現としてアペルトな声が必要な時もあれば、
声の明るさは殆どの場合において必要とされるため、正しく開いた状態を知るのは重要な作業だ
そういう意味でも、
同じ歌手が違うフォームで歌っている映像というのは珍しい上参考になる。
何より、上手い歌手でそのような違いを観察できるのは大変興味深いと思い今回取り上げた。

 

 

 

 

サルスエラ Adios, Granada

 

 

プラシド ドミンゴ

超有名なテノールと、ほぼ無名なテノール
二人ともスペイン人なのだが、実際に同じ歌で比べればこの通り。
名歌手と呼んでも差し支えないほどの実力があるラザロのような才能が世界的に有名にならない。
これが現状である。

だからこそ、私は記事を書く活動を通して、本当に実力のある人を広めていきたいのだが、
その過程で、実力にそぐわない地位や人気を得た歌手は、
必然的に批判の対象となってしまうということはご理解頂きたい。

 

 

 

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