理想的なラテン系テノールの声をもったギリシャ人 Angelos Samartzis

Angelos Samartzis(アンジェロス サマルティス)はアテネで生まれ、主にドイツで音楽の教育を受けたテノール歌手。
しかし、この人の声はスペインやメキシコにいそうなテノールの声で、一般的に言うドイツ的な声とは全く違う。
これほど魅力的で若々しく情熱的なテノールらしい声をもった歌手は現代では珍しい。
ハッキリ言って、こんな素晴らしい声を持った歌手はそういない。

 

 

 

 

プッチーニ ラ・ボエーム Che gelida manina

カールスルーエやベルリンで声楽の教育を受けた歌手の声がコレである。
ドイツ式発声とかベルカント唱法だとか言ってる方々はこの現実をどう説明するのだろうか?
どこで勉強しようと、その人の持っている声が生かせる指導ができる人に出会えることが重要であって、
イタリアで勉強したから正しい歌唱が身に着く訳でも、ドイツに行ったから素晴らしいリート歌いになれる訳でもない。
サマルティスの歌唱には説明はいらないのではないかと思う。
もう、聴いたままの圧倒的な美声と情熱的な歌唱がそれだけで魅力になる。
勿論これだけ声を解放できているのだから発声技術も申し分ない。

 

 

 

 

ビゼー カルメン  La fleur que tu m’avais jetée

ホセは合いそうに思ったが、意外とフランス語と彼の声の響きはあまり相性が良くないのか、
それとも、この歌の持つ色気を表現できるだけの技量が備わっていないのか、
ディナーミクの問題だけでなく、発音の部分も含めて、
抑えた表現、内に内包する方向の言葉の出し方には工夫が欲しいところ。
ロドルフォみたく能天気に開けっ広げに歌う分には良さが存分に発揮されるが、フランス音楽となると未熟な部分もまだ目立つ。

 

 

 

 

 

 

ソロサバル No puede ser

Pablo Sorozábalの作曲した曲で、サマルティスの十八番のようだ。
やっぱりスペイン語だと響きがフランス語とは全然違ってこの人に合っている。
どう聴いてもドイツでキャリアを積んでいる歌手とは思えないのだが、
ギリシャという国は、全く予想できないような才能が突如出てくるから面白い。

現在ドイツのザールラント州立劇場に所属しており、
ボエームのロドルフォ以外には、サロメのナラボート、
ナブッコのイズマエーレといった役を歌っているようで、
今年はファウストのタイトルロールを歌うことになっているようだ。

 

YOUTUBEには音源が少なく、まだこれだけしか紹介できるものがないが、
若くしてこれだけ才能のある歌手ならば、これから必ず注目を集めるだろう。
グリゴーロより遥かに素晴らしい声を持っていると思うのは私だけだろうか・・・。

 

 

 

 

Angelos Samartzis, Tenor, Showreel 2018

本当に素晴らしい高音の伸びだ。
サマルティスの声はもしかしたら現代でも屈指の美声かもしれない。
それにしても、こんな声のナラボートは聴いたことないぞ。
決して重くないのに響きの芯は強い。
才能とはなんと残酷なことか・・・凡人がいくら勉強してもこんな声はでない。

 

 

 

 

 

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