Sophie Junkerはそこまで優れた古楽歌手なのか?

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Sophie Junker(ソフィー ユンカー)は1985年ベルギー生まれのソプラノ歌手。
BCJの定期演奏会でも2017年に来日し、今年の秋にも来日が予定されている。
年齢を考えれば、鈴木雅明お気に入りと考えるのが妥当だが、
果たしてそこまで優れた古楽のスペシャリストなのかは個人的に疑問があるので、ここで検証してみたい。

 

 

 

ヘンデル オルランド Amor è qual vento

こちらの演奏は2012年、トニオ・チェスティ、バロックオペラ声楽コンクールでの演奏
確かに28歳という年齢を考えれば魅力のある演奏をしている。
技巧の正確さだけでなく、しっかり表情のついた豊な表現力を持っている点に於いては素晴らしい。
ただ、技巧的な部分が目立つが故に声そのものの悪い癖が潜在化してしまっていることは聞き逃してはならない。
まず響きが全部落ちている。
特に低音域は全部詰まってしまって全く響きがない。
発声がかなり独特で、鼻声ではないのだが、鼻の裏辺りに息を通すような独特な響きで、
透明感はあるのだが深さが全くなく、伸ばしている音が揺れてしまう。
高音と低音の音質の明らかな違いを聴けば、あまり癖がわからない方でも、何かが正しく機能していないのは確かだと気づく。

 

 

 

 

 

ヘンデル アチスとガラテア As when the dove

この演奏では更に顕著に問題点が露呈している。
物凄く雰囲気で上手く聴かせる術に長けているのは確かだが、
抜いた声で全く発音が飛ばない。
歌っている口を見ていれば、唇や舌を使わず、響きだけで歌っているのがわかる。
これなら歌詞はいらない。メガンジの演奏と比較すると全く違う音楽に聴こえるほどだ。

 

 

 

Claire Meghnagi

ユンカーに比べて音楽の推進力、フレージングがしっかり見える。
現代の古楽演奏の主流は透明感のある響きだけで旋律をなぞるのではなく、
かなりはっきりしたディナーミクや言葉の抑揚を要求するものである。
そういう意味でもユンカーの演奏には古さを感じてしまう。

 

 

 

 


 

アーン A Chloris

ユンカーの演奏に決定的に疑問を持ったのはこの演奏を聴いてからである。
なぜか伸ばしている音に全てチリメンヴィブラートが掛かる。
古楽演奏では、実は細かい装飾音やトゥリル、あるいは抜いた表現で真っすぐに声が飛ばせないのをごまかしていたとしか思えない。
同じように古楽を得意としていたプティボンの演奏と比較して頂きたい。

 

 

 

Patricia Petibon

生演奏と録音という大きな違いはあるにせよ、
似たような声質にもかかわらず表現の質が全く違うのがわかる。
歌曲を歌って詩が前に出ないのでは話にならない。
しかも響きが乗っていないので、ユンカーの演奏はこれで本当にホールの後ろまで声が飛んでいるのか甚だ疑問である。

 

 

 

 

ヴィヴァルディ Alleluia

超絶技巧ならまだ存在感を示せるが、声が依然にも増して鼻声になり、響きの質も最初の演奏に比べてハスキーになっている。
果たして今後いつまでこの演奏スタイルでお金払って聴くに値する演奏をし続けられるのか?
ということを考えると、どうもこれから先の成熟した表現、深みのある響きへの進化は期待できないと考えざるを得ないのである。
これから40歳を過ぎてどのような演奏をするのか?という部分では注目しているが、
古楽演奏の第一人者とは以上のような理由から私はとても言えないと考えている。

 

なお、冒頭でも書いた通り、今年の秋にBCJの定期演奏会で来日が予定されている
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私はもし行ければ生でどの程度ホールの後ろまで彼女のピアニッシモが届くのか聴いてみたいと思っているので、
実際に演奏を聴きに行ったら改めてレポートするつもりである。

 

 

CD

 

 

 

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