モデルから渋いメゾソプラノへ Julia Helena Bernhart

 

Julia Helena Bernhart (ユリア ヘレナ ベルンハルト)はドイツのメゾソプラノ歌手。

なんと若い頃はモデルとして雑誌やテレビに出ていたというのですが、
日本のアイドル卒業して女優になりました。みたいなのとは違い、
若い頃からしっかり歌に演技にピアノに弦楽器に・・・とかなりの英才教育を受けてきたようで、

「モデルなのに歌うま~い!」

みたいなもてはやされ方をされているのとはむしろ真逆で、リート、コンサート歌手としての活動がメイン。
中でもヴォルフの歌曲やバッハの宗教曲を得意としているというのですから、歌手としては完全に玄人好み、そこらのオペラファンはまずノーチェックな歌手でしょう。

容姿には華があるのかもしれませんが、声はいぶし銀と言った感じで、レパートリーも歌唱もモデルという華々しい一面からはかけ離れている印象を受ける、なんとも不思議な歌手です。
ちなみにベルンハルトのHPはコチラ

モデル気取りで自分のきらびやかな衣装姿を公開している歌手は沢山いますが、
「ギャラリー」とは別に、「モデル」としてタブを作ってる辺りにプロとしてのプライドを感じてしまいます(笑)

でも、個人的にはどっちかいらないから「スケジュール」を載せてくれ。と思ってしまうわけなので、
折角のコンタクトフォームからちょっと突っ込んでみようかしら・・・。
と思って覗いたら連絡先がイタリアだった!?

と、こんな感じで謎が多い歌手なので、動画もあまりないのですが、
その数少ない音源の中から紹介していきたいと思います。

 

 

 

ヴォルフ Mausfallensprüchlein

 

 

<歌詞>

Kleine Gäste, kleines Haus.
Liebe Mäusin, oder Maus,
Stelle dich nur kecklich ein
Heute Nacht bei Mondenschein!
Mach aber die Tür fein hinter dir zu,
Hörst du?
Dabei hüte dein Schwänzchen!
Nach Tische singen wir
Nach Tische springen wir
Und machen ein Tänzchen:
Witt witt!
Meine alte Katze tanzt wahrscheinlich mit.
hörst du?

 

 

<日本語訳>

小さなお客さん、小さなお家。
ハリネズミさん、二十日ねずみさん、
勢いよく出ておいで、
今夜月の輝くときに!
だけど後ろのドアは静かに閉めてね、
聞いてるかい?
そのとき、しっぽには気をつけてね!
食事の後には歌いましょう、
食事が済んだら飛び跳ねて、
ちょっと踊りしましょう。
ヴィット、ヴィット!
私の年寄り猫もおそらく一緒に踊るでしょうよ。
聞いてるかい?

 

 

この曲の最後の方に出てくる
「Witt witt!」という部分は、(rauh)という指示があって(英語で言うroughですね。)
年より猫の踊るイメージを表現しているようです。

ヴォルフは全然詳しくないので、適当なことを書いてはまずいので断定はしませんが、
恐らく間違えないと思います。

 

ベルンハルトの演奏ですが、
”ネズミ捕りのおまじない”という曲名と、上記のような歌詞の通り、
子供が歌っているような表現をしながらも、声楽的な声で歌わなければならないので、
軽い声のソプラノが歌った方が合いそうな気もしますが、
むしろ無駄にキンキンした高音を聴かせるようなことがなく、歌詞と音楽の世界がとてもイメージできる演奏をしています。
そんな訳で、ソプラノ歌手の演奏と比較してみましょう。

 

 

Edith Mathis

マティスの演奏は、冒頭にセリフが付いています。
「Das Kind geht dreimal um die Falle und spricht」
(子供が罠の周りを三回回って唱える)

マティスの方が劇的な演奏をしていますが、
素朴に、でもやるべきことはしっかりやっている演奏はベルンハルトの方ではないかなと思います。

どうしても音が高いと歌ってしまいますので、おまじないに聴こえるのはメゾソプラノが歌った方が相応しいかな?というのが私の感覚です。
ベルンハルトは発音の面では多少不明瞭さがあって、録音とライヴという大きな違いはあるとは言え、マティスの語頭、特に二重子音なんかの処理に比べると、まだまだ改善の余地はあるのではないかと思います。

 

 

 

 

ロルツィング 刀鍛冶 Welt du kannst mir nicht gefallen

声に華やかさはあまりありませんが、整った響きとメゾソプラノらしい落ち着きがあり、
早口の曲でも、喉が上がって上体だけで歌っているような苦しさが全くありません。
子音のさばき方には前述の通りまだまだ改善の余地がありますが、歌唱にコレといった欠点が見当たらないのは素晴らしいですね。

 

 

 

 

ヘンデル アルチーナ Verdi prati

こちらの歌唱を聴くと、やはり課題は発音であることがよくわかります。
イタリア語を歌っても言葉が不明瞭です。

原因は唇や舌の近い方に問題があることは確実で、確かに脱力はできているのですが、
必要な部位の筋肉は様々な発音に応じて適切に使えなければいけません。

 

 

 

Philippe Jaroussky

ジャルスキーが上手過ぎという話しもあるのですが、
ベルンハルトがずっと同じような口のフォームで歌っていることがこの比較でも如何に不自然かわかると思います。
モデルがジーンズ姿でズボン役を歌う姿はとても舞台映えしますが、それと同じくらい歌にも魅力が欲しいですね。

とは言え、悪い癖らしいものがないので、大いに伸びしろの期待できる歌手ではないかと思います。
今後もコンサート歌手としての活動を中心にするのか、オペラにもっと進出するのかはわかりませんが、とりあえずご自身のHPにスケジュールを掲載して頂きたいものです(笑)

 

 

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