Delphine Galou (デルフィーネ ガルー)1977年フランス生まれのコントラルト歌手。
主にイタリアバロック作品を歌い、特に超絶技巧に定評があります。フランスには素晴らしいバロック音楽を得意とした歌手が沢山出ていますが、フランス物ではなく、イタリアバロック作品を得意とする歌手がフランスから出てくるのは珍しいですね。
ニッコロ ポルポーラ(1686~1768)という作曲家、兼声楽指導者が作曲したアレルヤ。
有名なカストラーtを育てた人のようなので、当時の声楽事情を知る上でも面白いと思います。
こういう作品が歌えることが当時の歌手には必要要件であり、
このような技巧を身に着ける訓練を最重要としていたのでしょう。
例えば、トスティも声楽家、兼作曲家なのですが、
彼の曲に求められた歌唱とはやはり全然違うことだけを見ても、17・8世紀と20世紀では歌唱スタイルが全然違ったことがわかりますね。
ガルーの演奏ですが、こちらは2018年なので比較的最近の演奏です。
超絶技巧を得意とする歌手にありがちな響きの硬さがなく、
声質はソプラノもできそうな声で無理やり低声を歌っているのではなく、
持っているモノも深いアルトです。
ですが、もっと若い頃からこの声だった訳ではありませんでした。
丁寧に歌えているように聴こえますが息の流れが止まっていて、
クレッシェンドしようとしたり、強い声を出すと声が不自然に揺れてしまう傾向があります。
何より、細い響きは重要なのですが、奥行きが足りていないので、
どうしてもスケールの小さい歌唱になってしまいます。
これは以前記事にもしたプリーナと比較すると歴然です。
Sonia Prina
ガルーの声は映像を見なければ、カウンターテノールの声と言われたとしても、正直私は疑いません。
それくらい芯が細く、繊細と言えば聞こえは良いですが、表現の引き出しが狭いと言えると思います。。
特にヘンデルのダ・カーポアリアのように同じ歌詞を繰り返す曲は、言葉の発音ではなく、同じ言葉にどう違いをつけるかで表現に幅を持たせなければなりません。
手っ取り早いのが装飾音ですが、それだけでは不十分で、音色の使い分けができなければ退屈なアリアになってしまいます。
そのような観点で聴くとプリーナは全然違います。
同じディナーミクでも様々な声質を使い分け、
それでいて響きの高さを失いません。
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ニコロ ヨンメッリは18世紀のバロックオペラ作曲家、
日本語版のWikiもあるので詳細はコチラを参照ください。
この録音年代はわかりませんが、上のリナルドのアリアよりも最近であることは間違えありません。
ヘンデルでは硬さのあった声が、かなり開けた温かみのある音色になっています。
これだけで息の流れがわかり、どこに音楽が向かっているかが聴いていてわかるので、歌唱により説得力が出ます。
あまりドイツ語の発音はよくないようです。
まず響きのポイントが奥過ぎて籠って聴こえてしまう。
カウンターテノールのショルの演奏と比較すると言葉の発音のポイントの違いがよくわかると思います。
Andreas Scholl
https://www.youtube.com/watch?v=mE40vm21HbU
※うまくリンクが張れないので、上記のURLからご覧ください。
流石に少し前までは世界最高のカウンターテノールと言われていただけの実力です。
フレージング、言葉の出し方、音色、どこをとっても残念ながらガルーは太刀打ちできません。
恐らくテッシトゥーラ的にもガルーには低いのでしょうが、それにしても声が籠り過ぎて飛んでいないのは気になります。
超絶技巧ではあまり気になりませんが、言葉に対する感覚がまだまだ甘いことがよく分かります。
バロックだから美しい響きで正確に清潔に歌うのが正しいという考えは現在では通用しません。
逆に言葉ごとにコントラストを明確に出すことが求められているので、ガルーは今後その辺りでどのように勝負できるようになるかが大事になるでしょう。
技巧は歳を重ねればキレが悪くなりますから、今後彼女がどのように深い音楽をしていけるのか注目していきたいと思います。
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