日本の芸能人声楽家達

よくテレビに出ているような自称オペラ歌手、声楽家。
といった方々は、クラシック音楽畑の人からは大抵冷たいまなざしを向けられるものですが、
実際、偏見などを抜きにしてその歌唱力はどうなのか?
あえて検証しようかと思います。

※なお、秋川雅史氏は検証する必要性を感じないので除外しました。

 

 

❶ソプラニスタという名の天然記念物 岡本知高

さて、男性がファルセットで歌う理由は何でしょうか。
単なるカストラートへの懐古趣味でしょうか?
それとも女性が歌うことを禁じられた教会音楽を原点主義的観点から演奏するためでしょうか?

私はもっと単純に、男性のファルセットが女性の歌声とは違った魅力を持っているからだと思います。
そう考えた場合、岡本の歌声に、女声の歌声にはない魅力があるのか?
という単純な疑問を投げかけてみてください。
これだけ高い音が出せる男性は珍しい。というだけならば天然記念物と同じであり、
彼の存在そのものが希少価値であって歌が評価されている訳ではないということです。
最後のカストラートと呼ばれたアレッサンドロ モレスキの録音の価値みたいなものでしょうか?

Alessandro Moreschi(アレッサンドロ モレスキ

 

逆に、めちゃめちゃ低い声の出る女性が、テノールアリアを実音で歌ったらこれ程珍重されるでしょうか?
恐らくとんでもなく上手くない限り誰にも相手にされないでしょう。

不思議なことに、特別低い音を出せる人はピックアップされないのに、
高い音を出せる。という特技はそれだけで注目を集めてしまう。
この潜在的な高音への熱狂こそが、歌の上手い下手という本質を蔑ろにする結果を生んでいるように感じます。

 

高音というキーワードで言うならば次はこの人です。

 

◆超高音が売りのソプラノ 田中彩子

(恐らく演奏は2017年)

この人ほど日本のメディアのフェイク情報が垂れ流されている歌手はそういないでしょう。
彼女の高音が欧州を席巻したような言い方をされますが、実際全くそんなことはありません。
伸ばしてる音でマトモに音程を保てない歌が、ヨーロッパで評価されるハズがないことなど、
少しでも本物のオペラ歌手を聴いたことがある人ならわかります。
そもそも、売りにしている高音すら不安定です。
メディアが彼女を持ち上げれば持ち上げる程、日本に大勢いるレッジェーロソプラノを貶めることになるのです。

岡本はまだ、他人が真似できない歌を歌っているという面では評価のしようもありますが、
田中彩子は、どこの音大にも1学年に1人はいるであろう歌い手です。

 

わざと下手な演奏をアップしているように思われるのも嫌なので、楽々ハイFが出ている時期もアップしておきます
(2014年以前)

田中彩子は1984年生まれです。
数年でこれほど高音が衰えるのであれば、30代後半にしてまともな歌は歌えなくなるでしょう。
とりあえず高音が出るだけの歌手の末路はあっけないもので、
まるでアイドルのように新陳代謝が激しいのがこのタイプです。
そうならないためにも、中長期的に自分の声を分析できる能力が歌手には求められるのです。

 

 

 

◆CMをきっかけに芸能人歌手としてブレイクしたテノール 錦織 健

好きか嫌いかは別として、この人は勤勉であることはそれなりに有名な話のようです。
ある意味、芸能人としてブレイクして声に合わない曲を歌わされることがなければ、
良い歌手になれたのではないかと思っています。
学生時代は何かと第九の合唱に駆り出されていたので、いろんなテノールのソロを見てきましたが、
なんだかんだ日本国内では上手い方です。
声が軽い割に重く作るし、鼻に入れすぎだし、レガートでは歌えてないし、発音もそこまで明確じゃないし・・・。
と挙げれば改善点は沢山ありますが、伸ばしてる声が揺れないし、変な口の開け方は基本的にしませんし、
大声大会にはならないので、ある程度年を重ねても声を保てているのでしょう。

 

例えば 村上敏明と比較すればよくわかります。

全部の音にアクセントが付いてるんじゃないか?
と思わせる歌としての不自然さは、少なくとも錦織にはないので、
そういう意味でも錦織は自分の声を理解していると思う。

 

 

◆空を飛ぶオペラ歌手(と呼ばれてるらしい)鈴木慶江

NHKの力によって有名になったソプラノ
それにしても、この人の高音は酷い。
軽い声なのになぜこんな力んで高音を出す必要があるのだろうか?
そもそも、この曲なら高音と言ってもソプラノにとっては高い音ではないので、
こんな音で力一杯出してる地点で、かなり残念な感じである。

発音も、”a”母音が”o”なのか”a”なのかわからないし、
シューベルトにしろカッチーニにしろ、アヴェ マリアは歌の上手い下手がもろに出る曲。
なぜ彼女はこんな粗しか目立たない曲を録音してしまったのだろうか?
レガートで歌えない歌手はこの曲を歌ってはいけない。

先ほど、ソプラニスタが女性の歌より魅力がないならばただの天然記念物でしかない。
と書いたのとは逆に、
ソプラノの歌声より魅力のあるカウンターテノールは日本にも普通にいるのです。

 

カウンターテノール 彌勒忠史

今は彼もちょっと芸能人に足を踏み入れてる感じはありますが、
少なくとも歌は本物です。
フィガロの結婚のケルビーノのアリア Voi che sapeteなんかは彼以上の演奏を聴いたことがない位です。

 

 

<番外編>

◆今後のブレイク候補 辰巳真理恵
辰巳琢郎の娘としてすでに一部では有名

このお嬢様がNHKニューイヤーオペラに出る日が日本の声楽界の命日だと思っています。
というのは冗談ですが、本当に選ばれそうで戦々恐々としている今日この頃です。

 

残念なことに、実力より知名度がモノを言うこの国では、
上記のような方々が一流の歌手だと世間的には受け取られたりしている訳です。
しかし、今ではコンクールの受賞歴や海外の歌劇場出演歴のような立派な履歴書で聴衆を集められる時代ではありません。
なぜなら、演奏動画が1本でもアップされていれば、あッという間に実力が分かってしまうからです。

 

このページを見てくださっている方は、
良い歌を歌いたい。
または聴きたい。
と思っている方々だと思いますので、
知名度に振り回されず、勿論私の意見も妄信せず、
ご自身で良い演奏を判断する耳を養ってください。
良い演奏家はメディアが作り出すのではなく、聴衆が選ぶべきだからです。

 

 

 

13件のコメント

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    Yuya様

    「有名=技量があるとは限らない」現象の良い例が並んでいますね。

    秋川氏に関しては長崎の鐘の歌唱が酷すぎて驚いた記憶があります。あれはボーカロイドの歌唱でしたね。

    声楽系の日本人有名歌手でしっかり実力のある歌手といったら、個人的には戦争協力の自責からアルコール漬けになり喉を潰す前の伊藤久夫を思い出します。

    伊藤久夫「イヨマンテの夜」
    https://www.youtube.com/watch?v=pU2rfZAoALY

    戦後の歌唱なんでアルコールで喉が潰れかかっていますが上手いと思います。

    • 声楽鑑賞初心者 より:

      アルコールの影響を受けていない録音もありましたが、こちらの方がより繊細なブレスコントロールに基づく歌唱をしていてより上手いと思います。

      https://www.youtube.com/watch?v=6EPA93UrriU

    • Yuya より:

      声楽鑑賞初心者様

      昔の歌手なら立川澄人氏なんかは実力もしっかりしてたんですけどね。
      しかしテノールは人気と実力が一致してる歌手と言うと、ジョン・健・ヌッツォ氏くらいしか思い浮かばないのが哀しいところです。

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    立川澄人氏といえば六甲おろしですね!阪神ファンでも関西人でもないですが(笑)。荒城の月もなかなか絶品です。彼はなかなか堅実な歌唱をしていますね。

    ジョン・健・ヌッツォは二十年くらい前に新選組!のメイン・テーマを歌って一般人にも知られるようになりましたね。
    そのままメディア露出が続けば良かったんでしょうが、その後にあの秋山氏が出てしまって…

    日本で一般人の間で有名になるようになるためには、ひと昔前まではテレビに出るのが一番でしたが、日本のテレビって本当にあらゆる分野であやしい紛い物を出してきますからね。
    絵画然り、華道然り、書道然り、声楽然り、医学然り、あの業界の不真面目さや不勉強さが表れている感があります。
    だから秋川氏を象徴とする怪しい声楽家がテレビに出て有名になるんでしょうね。
    (今はネット中心ですがYoutubeは紛い物がさらに幅を利かす世界ですからね…)

    テレビ業界の元締めが電通ですが、その電通が手掛けたオリンピック開会式が紛い物だらけのチンドン屋になってしまったのがその象徴でしょう。
    岡本知高氏も出演しましたが、あれ、欧米の声楽大国の聴衆はどう評価したんでしょうね。
    英語タイトルのオリンピック出演動画がYouTubeにありますが、全世界で放映されたにも関わらず再生回数が五万回しかなく、コメントも伸びず、中には”EPIC FAIL”(大失敗)というコメントさえあるのが全てを表している気がしますが。

    ・岡本知高「オリンピックのテーマ」
    https://www.youtube.com/watch?v=zGVD7KFcxp0

    • Yuya より:

      声楽鑑賞初心者様

      仰りたいことはわかりますが、それ以上はお控えくださいませ。
      特に医療関係はまともなことを言う人が現在陰謀論者扱いされる世の中になっておりますのでね。

      五輪、私は最近全く見てないので、岡本氏が出てることは知りませんでした。
      そんな恥を晒してしまったんですか・・・。まだ、米良氏なら中国でも人気あるらしいので受けたかもしれないのに。
      声楽とオリンピックと言えば、トリノでパヴァロッティの歌が口パクだった件が頭に浮かぶのですが、
      ラ・マルセイエーズ歌うアラーニャや、確かモントリオール五輪だったかで国家歌ったカナダのテノール、Ben Heppnerは恰好良かった。

      ジョン・健・ヌッツォ氏は、メディアに出ると声に合わないトゥーランドットなどを歌わされるので、声を守るために距離を置いたという話を聴いたことがあります。
      それ位の理性がなければ、あのレベルまではいけないということでしょう。

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    Yuya様

    申し訳ありません。つい熱くなってしまって口が滑ってしまいました。芸術関係の趣味を持ち始めてから、本当に優れた人物が世の中であまり評価されず、逆に紛い物ばかりが評価されている場合があまりに多すぎることに気付いてしまって、つい不当だと憤りを感じてしまうんです。。。次からはもう少し口を慎みます。

    世界各国のオリンピックって大抵は国の威信がかかっているので優れた人を演出させるんですよね。冬季北京オリンピックも色々問題は出ていますが、開会式自体はあのチャン・イーモウに一任して素晴らしいものに仕上がっているんですよね…。これ以上は何も言うまい。というより、確かに米良さんの方が日本でも「もののけ姫」で有名なはずなのになぜ岡本さんだったんでしょうね。謎の人選です。
    アラーニャのラ・マルセイエーズ良さそうですね。多分全盛期ですよね。私普段はオリンピックは見ないので見逃してしまったようです。

    そうですか。ジョン・健・ヌッツォ氏が表に出てこなくなったのはそういう事情があったんですね。やはり優れた歌手になるには世評の魅力に抗って自分の歌唱にあった歌を選ばないといけないんですね。克己精神が必要。しかしそうなると世の中で有名になることが難しくなる。それで歌唱を犠牲にしてまでメディア露出したい歌手が前景に出る。ジレンマですね。もっと専門性を評価する社会になれば良いのですが。

    しかし、「nessun dorma」はPavarotti含め数多くのリリコ系テノールの歌唱を崩してきた罪深い歌ですね…。「nessun dorma」が有名じゃなかったら救われたテノールが大勢いたでしょうね。

  • Italia pazzo より:

    初めてコメントさせていただきます。たまたまこちらのサイトにたどり着きました。私も一応業界なのであまり多くは言えませんが、、いま日本のこの業界はやはり知名度もそうですがほとんどが上手くメディアに載るのとあとは見た目が全てだと思います。これは良いか悪いかは別としてですが。男女とも背が高い、可愛い、スタイルの良さetc
    これらがまずは第一に来てる、あとはチケットがどのくらい売れる、お客さんをたくさん呼べるそれありきだなと感じます。私もこの取り上げられてる方と一緒に共演したことありますがプログ主様も書いてらっしゃる通りいろいろおかしな点ありますね。ごめんなさいもうこれ以上書けませんがなんせいかに一般のオペラを、普段聴かない人たちにも人気を持たせるかなんだと思います。だからテクニックや声の良さはあまり関係ないと思います。残念ですが、、
    私の個人的に思うことは個人的なやり取りでいつかお話し出来る機会があれば楽しくトークしたいですね。
    たくさん書いてしまい失礼しました。

    • Yuya より:

      >Italia pazzo様

      コメント頂きましてありがとうございます。
      二期会なんかは露骨にイケメンバリトン押しのコンサートやってますからね。
      チケットの売れ行きに関しては、結局選挙同様組織票とでも言えば良いのでしょうか?
      はっきり申し上げれば宗教関係なんかで固定客を拾える人は強いですよね。

      ただ、NHKニューイヤーなんかでは特に、普段オペラを聴かない方の耳にも入ることもあってか、
      本当に上手い歌手なのか疑問に思って調べた結果、私の記事にたどり着いたというような方もいらっしゃいましたので、
      売れてる歌手=上手い。という部分に疑問を持っていらっしゃる方も沢山いるのだと思います。

      いつかItalia pazzo様から詳しくお話伺えれば幸いです。

      • Italiapazzo より:

        あ、補足ですが指導してる先生たちも問題ありますからね、絶対についてはいけない先生、なんてこともお話ししたいですね。名前まで言うと問題ありたすので最低限こういう先生は避けるべきなんて言う先生はいますので。
        失礼いたしました。

  • かるめる より:

    はじめまして、声楽を少し習いに行った経験のある一般人です。
    YouTubeで田中さんの動画がリコメンドされて出てきて……素人の私の耳でも、そんなに絶賛されるほどなのか?と感じたので、解説をここで読むことが出来てスッキリしました。
    カウンターテナーは米良美一さんで知ったのですが、この方の病気をされる前の歌唱はどのように評価されるのかお聞きしてみたいです。
    YouTubeにヨハネ受難曲などの動画があり、もののけよりずっと良いと素人耳では感じたのですが…。

    • Yuya より:

      かるめる様

      コメントありがとうございます。
      米良美一さんの演奏はあまりちゃんと聴いたことがないので、
      お勧めの演奏のリンクを良かったら貼って頂けると助かります。

      有名な歌手って、意外と売れる前の方が上手かったりすることがあるんですよね。

      • かるめる より:

        Yuyaさま、ご返信ありがとうございます。
        動画は以下の2つしか見つけられていないのですが…プロの声楽家から見てどのような評価なのか?お聞かせ頂けたらうれしいです。
        https://youtu.be/_4boFGlVr1A?si=wlkQi7Bdl8ddrvw6

        https://youtu.be/7Y-SnYKvvQw?si=uGh0B9XnKkS2xn0H

        • Yuya より:

          かるめる様

          動画のリンクありがとうございます。
          なるほど、今聴くと彼より優れたカウンターテノールは沢山日本人にもいると思うのですが、
          まだカウンターテノールが一般的ではなかった時期のレベルですから、
          現在の歌手のレベルと単純に比較するのはナンセンスだと思うと、カウンターテノールという声種を世間に広めた功績はやっぱり大きいですよね。
          少なくとも、〇本〇高氏より実力が伴っていて天然記念物としてだけもてはやされた感じではなかったと思います。

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