現代版 Rudolf SchockのようなテノールMartin Mitterrutzner


Martin Mitterrutzner(マーティン ミッタールッツナー)はドイツのテノール歌手。
何年生まれかは定かではないが、見た感じまだ30代ではないだろうか?

現代版ルドルフ・ショックと書いたのは、オペレッタを得意としながらも、実に端正な声楽的技術や表現力を兼ね備え、
強い声でありながら、弱音による表現にはオペレッタを得意とする歌手独特の色気がある。

 

 

 

ロルツィング 刀鍛冶 Man wird ja einmal nur geboren

当時はかなり人気のあったと言われる19世紀初旬のオペレッタ作曲家Albert Lortzingの作品
ミッタールッツナーの歌唱は実に明快で明るいながらも、力強さも兼ね備えた実に立派な声で、
決して力に任せて声を出す部分が微塵もない。
本当に軽く歌ってこの声が出ているのがよく分かる。
 

 

 

Wien, Wien, nur Du allein

本当に良い声だ。
個人的にはダニエル ベーレより声だけなら好き。
ただ、オペレッタを中心に歌っている歌手だけに、音質に陰影はあまりなく、
声そのものに柔軟性と言えば良いのか、言葉の出し方と言えば良いのか、彼の歌唱には緩急が貧しい。
それは以下のようにバロックイタリア作品を歌っているのを聴いても同じことが言える。

 

 

 


 

 

 

ヴィンチ La fronda, che circonda.

Leonardo Vinciという伊太利バロック音楽の作曲家の作品。この人はペルゴレージの師匠にあたる人。
ミッタールッツナーの歌唱は見事に速いパッセージのメリスマをこなす技術は本当に素晴らしい。
ただドイツ語の歌唱に比べれば、イタリア語だと響きが弱冠落ちて暗く重い声になってしまっている。
リリックテノールというよりかなりスピントに近い声質になっているが、最初の動画とこちらを比べて、
声が飛んでいるのは明らかに最初の動画の方だろう。
それはこの曲に限らず、イタリア語が原因である可能性が非常に高い。

 

 

 

モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ 1幕冒頭

グリエルモ役のGerald Finley 、アルフォンソ役のLuca Pisaroni比べて、
レチタティーヴォ明らかに言葉が飛んでいないのがミッタールッツナーである。
フェッランド役なんだからもっと能天気に歌えば良いものを、どうも単純な声楽的技術とは違う、
音色や響きのバリエーションに物足りなさがある。

 

 

 

Wie mein Ahn’l zwanzig Jahr

この人はいずれヘルデンテノールになるかもしれない。
あのモーツァルトやリートを主戦場としていたシャーデが今や大地の歌やフィデリオをやっているのを見ると、
その内ワーグナー作品を歌うだろうと思わずにはいられない。
ただ、最初にあげた2011年の演奏から、この2014年の演奏の3年間でここまで声が重くなってしまっているのは気になるところ。
残念ながらYOUTUBE上にはあまり動画がないので、正確にミッタールッツナーの歌唱について書くことはできないが、
持っている楽器が非凡なものであることは確かだ。
彼のスケジュールを見る限り、主にハイドンやバッハの宗教曲、モツレクといったコンサート歌手としての活動が中心で、
オペラは魔笛くらいしか歌っていなさそうだ。
ただ、今年の夏はAix-en-Provence音楽祭に出て、
更にSchwarzenbergのシューベルティアーデで水車小屋の娘を歌う予定なので、ネットラジオなどで聴ける可能性はある。
今後彼の歌唱を判断できる機会があれば、記事は更新しようと思っている。

 

 

 

CD

 

 

 

 

 

 

コメントする