2019 トリエステ ヴェルディ劇場(椿姫)来日キャストについて

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2019年11月に、トリエステ ヴェルディ劇場の来日公演がある。
曲目はヴェルディの<椿姫>とのことで、言い方は悪いがドル箱作品をとりあえず持ってきた感じだ。

チケットの価格はS席でも18,000円程度なので、
海外の劇場の公演としては安い方だが、
結論から申し上げれば、そもそも問題はこの劇場が海外公演を行えるレベルの劇場なのか?
ということを考えた方が良さそうだ。

 

 

{キャスト}

[指揮]ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ

[出演]デジレ・ランカトーレ(S) / ジュリオ・ペッリグラ(T) / ドメニコ・バルツァーニ(Br) / 他

 

◆テノール アルフレード役

Giulio Pelligra (ジュリオ ペッィグラ)

 

 

 

ヴェルディ リゴレット La Donna è mobile

高音は安定して出るのだが、どこか喉声っぽさがある。
軽い声質で、声そのものはアルフレード クラウスに似てなくもないが、
なんといっても響きを無理やり前に集め過ぎている。
必要以上の圧力で無理に楽器を響かせようとしているために全く柔軟な歌唱ができず、
ただ強い声で高音を出すだけの演奏しかできない。
そのことは、同じ曲でそれこそクラウスと比較すれば良くわかる。

 

 

 

ドニゼッティ ランメルモールのルチア Fra poco a me ricovero (19:10~)

 

 

 

Alfredo Kraus

根本的にペッリグラの歌い方が間違っていることが分かるだろうか?
高音だけ強い金属的な響きが出せれば良い訳ではなく、
全ての音域、言葉が同じポジションで響いた結果として、
開いた高音になる必要性がある。
ペッリグラは圧力で出している高音であり、日本人の重い役をよく歌うテノールの多くや、
韓国人テノールの多くに多くみられるのと同じである。
比較の対象がクラウスだからという問題ではなく、ペッリグラの声そのものは決して悪いと思っていないし、
むしろ無駄な力みが抜ければ良いテノールになれる思うのだが、如何せん歌唱に柔軟さが無さすぎる。

 

 

 

◆バリトン ジェルモン役

Domenico Balzani(ドメニコ バルツァーニ)

 

 

 

ロッシーニ セビリャの理髪師 Largo al factotum

これがイタリア人のヴェルディバリトンの声だと?
と言いたくなってしまうはずだ。
こんな鼻声でヴェルディやセビリャのフィガロを歌うまでにイタリア人達の発声は崩れたのか?
という儚さすら感じてしまう。

 

 

ヴェルディ トロヴァトーレ Il Balen del suo sorriso

ちゃんとした現代のイタリア人ヴェルディバリトンと比較してみれば、どれくらい違うかは一目(聴)瞭然だ。

 

 

 

FRANCO VASSALLO

ヴァッサッロの特に高い音域に注目して欲しい。
喉が上がって鼻声になっているバルツァーニと、実に滑らかなレガートで高いGの音でも決して力まず、
喉があがって響きが貧弱にならないヴァッサッロ。
これだけレベルが違うということだ。

 

 

◆関連記事

ヴェルディバリトン特有の黒光りする高音Franco Vassallo

 

 

ソプラノのランカトーレについては度々取り上げてきたのでここではもう触れないが、
そもそも、トリエステ ヴェルディ劇場というのはどの程度のレベルの劇場なのか?
実はここで、日本人が幾つかの役でヒロインを歌っているのだが、
その日本人とは原 璃菜子という人
気になる実力はと言うと

 

 

 


 

 

 

Rinako Hara
プッチーニ ジャンニ・スキッキ O mio babbino caro

自身のHPには
『「ジャンニ・スキッキ」ラウレッタ役などに出演する。現在トリエステ在住』
とあるので、この映像は本来持ち役ではないオペラアリアをリップサービスで歌ったのではなく、
「O mio babbino caro」というアリアは彼女の得意曲、十八番である。
ということも考慮した上でこの演奏をどう評価すれば良いのだろうか?
個人的な見解は、トリエステ ヴェルディ劇場のレベルがそもそもココなのであろう。
というものだ。
いずれにせよ、トリエステの劇場のキャストを取り上げて分析してみれば結果がわかるので、
そちらはまたいずれの機会にでも・・・。

とりあえず今回のキャストで言えば、恐らくランカトーレの知名度にあやかってチケットを売ろうという作戦なのだろうが、
聴きに行くことを予定されている方は、決して一流劇場の演奏ではない。
ということを念頭においた上で期待値を設定された方が良いだろう。

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