新旧歌唱比較シリーズVol.5【リリックソプラノ(モーツァルト)編】

新旧歌唱比較シリーズの5回目はリリックソプラノ編です。
リリックソプラノと言っても幅が広いので、今回はモーツァルトに絞って書きたいと思いますが、
ドイツ語の作品とイタリア語の作品ではちょっと変わってくるので、
更に絞ってイタリア語、ラテン語歌唱の作品での比較にしています。

なお、戦前はヴェリズモオペラの全盛期であり、モーツァルトの作品は現在ほど頻繁には歌われていなかったので、
この比較を行う上では、どうしても戦後以降に活躍した歌手を中心に取り上げることになってしまうことをご了承ください

 

 

 

Ninon Vallin(ニノン ヴァラン)1886年~1961年 フランス
フィガロの結婚 E Susanna non vien…Dove sono(フランス語歌唱)

ドビュッシーとも親交のあった歌手として有名な人で、決してモーツァルトが得意という人ではありませんが、
1800年代に生まれた歌手がどのように歌っていたかの参考としては数少ない録音です。

 

 

 

 

Tiana Lemnitz (ティアナ レムニッツ)1897年~1994年 (ドイツ)
Porgi amor(ドイツ語歌唱)

少々鼻に入り気味の声になることがあるのだが、高音のピアノの表現は見事で、
ドイツ語で歌われることによってできる表現というのもあると思いますが、
現代では原語歌唱が標準なのでこういった味わいは昔の演奏ならではです。

 

 

 

 

Maria Cebotari (マリア チェボターリ)1910年~1949年 ルーマニア
E Susanna non vien…Dove sono

ヴェルディのアリアのように歌われているのですが、なぜか引き込まれてしまう熱演。
しかし現代ではこんな風にモーツァルトを歌う人はいないでしょう。

 

 

 

 

Elisabeth Schwarzkopf (エリザベート シュヴァルツコップ)1915年~2000年 ドイツ

 

 

 

 

Lisa della Casa (リーザ デラ カーザ)1919年~2012年 スイス
ドン・ジョヴァンニ Mi tradi

 

 

 

 

Rosanna Carteri(ロザンナ カルテーリ)1930年~ イタリア
コジ ファン トゥッテ Come scoglio immoto resta

さて、これが黄金時代のイタリア人ソプラノが歌ったモーツァルトです。
このような演奏からも、オーストリア人であるモーツァルトがイタリア語で書いたオペラを、
純粋にイタリアオペラと呼んで良いのでしょうか?
そんな疑問が頭に浮かびます。

 

 

 

Gundula Janowitz (グンドゥラ ヤノヴィッツ)1937年~ ドイツ

 

 

 

 

 

Margaret Price(マーガレット プライス)1941~2011年 英国
Per pietà, ben mio

モーツァルトソプラノ。という言葉が使われるようになったのはこの辺りの歌手からではないかと思います。

 

 

 

 

 

Kiri Te Kanawa (キリ テ カナワ)1944年~ ニュージーランド

 

 

 

 

Carol Vaness (キャロル ヴァネス)1952年~ 米国
イドメネオ Oh, smania! Oh, furie!…D’Oreste, d’Aiace

 

 

 

 

Barbara Bonney(バーバラ ボニー)1956年~ 米国
Exsultate, jubilate

 

 

 

 

veronique gens (ヴェロニク ジャンス)1966年~ フランス
コンサートアリア K505 Chio mi scordi di te

 

Dorothea Röschmann (ドロテア レシュマン)1967年~ ドイツ
イドメネオ Zeffiretti lusinghieri

 

 

 

 

Barbara Frittoli (バルバラ フリットーリ)1967年~ イタリア
ドン・ジョヴァンニ In quali eccessi…Mi tradi quell’alma ingrata

 

 

 

 

Marlis Petersen (マルリス ペーターゼン)1968年~ ドイツ
イドメネオ Oh, smania! Oh, furie!…D’Oreste, d’Aiace

リリックソプラノに入れて良いのかは難しいですし、別にモーツァルトを特に得意としている訳ではありませんが、
モーツァルト~近現代作品まで、何を歌っても高いレベルの演奏が出来る歌手として挙げることにしました。

 

 

 

 

Carmela Remigio (カルメラ レミージョ)1973年~
Non mi dir bell’idol mio

 

 

 

このシリーズも5回目になりましたので、改めてこのシリーズをやっている趣旨を書かせて頂きますと、
戦前に活躍した歌手~現在活躍している歌手の歌唱を比較し、
私が何らかの結論を書くのではなく、
読者の皆様が本当に昔の歌手の方が現代の歌手より優れていたのか?
ということを考えて頂ける機会になればと思って作っています。

なぜそのようなことをするかと言うと、
声楽教師や、音楽評論家は何かと過去の歌手を現代の歌手より優れている。と賛美する傾向が強く、
二言目には、カラスやモナコをあげつらって、「現代には偉大な歌手はいない。」などと切り捨てる輩がいるので、
それが真実なのか、ただ感覚的に言っているだけなのかを検証できればと考えています。
後は、声楽学習者の方は、現代の発声技術が過去に比べて衰えているのかどうか・・・。
また作品の様式感、言葉へのアプローチなど、
何をもって優れている。と言うのかを考えてみると、色々な角度から聴けるようになると思いますし、
自分の歌にも生かせることがあるのではないかと思いますので、参考にして頂ければ幸いです。

 

 

 

毎度ではありますが、
私の記事に対して、ご意見や感想などがありましたら、
コチラに書き込み頂ければ幸いです。

 

 

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