バリトン歌手のBo Skovhus(ボー スコウフス)
ピアニストのStefan Vladar(シュテファン ヴラダー)
による歌手と伴奏者を対象にしたマスタークラスの映像を発見したのだが、
非常に素晴らしいものだったのでここで共有しようと思う。
スコウフスについて簡単に紹介しておくと、
1962年デンマーク生まれのバリトン歌手で、オペラではバロック~現代作品まで歌いこなし、
リートに於いても、伴奏の名手ヘルムート ドイッチュと優れたシューベルトやヴォルフの録音を残している名歌手
ヴラダーは日本語のWikiがあるのでそちらを参照。
❶
Bo Skovhus and Stefan Vladar: Brian & Eva
ヴォルフ Heb’ auf dein blondes Haupt
<歌詞>
Heb’ auf dein blondes Haupt und schlafe nicht,
Und laß dich ja von Schlummer nicht betören.
Ich sage dir vier Worte von Gewicht,
Von denen darfst du keines überhören.
Das erste: daß um dich mein Herze bricht,
Das zweite: dir nur will ich angehören,
Das dritte: daß ich dir mein Heil befehle,
Das letzte: dich allein liebt meine Seele.
<日本語訳>
ブロンドの頭をあげておくれ、眠るんじゃないぞ。
まどろみの誘惑に負けないようにな。
僕は君に大切なことを四つ言っておこうと思う。
少しも聞き漏らすんじゃないよ。
一つ、僕の心は君のせいで破裂してしまう。
二つ、僕はただ君だけのものになりたい。
三つ、僕の幸せは君に委ねている。
四つ、君だけを僕の魂は愛しているんだ。
❷
Bo Skovhus and Stefan Vladar: Wendeline & Rik
Rシュトラウス Zueignung
<歌詞>
Ja,du weißt es,teure Seele,
Daß ich fern von dir mich quäle,
Liebe macht die Herzen krank,
Habe Dank.
Einst hielt ich,der Freiheit Zecher,
Hoch den Amethysten-Becher,
Und du segnetest den Trank,
Habe Dank.
Und beschworst darin die Bösen,
Bis ich,was ich nie gewesen,
Heilig,heilig an’s Herz dir sank,
<日本語訳>
君は知ってるよね、僕の愛しい人よ。
僕が君から遠く離れて苦しんでるのを。
愛は人の心を痛めるんだね。
(それを教えてくれた)君に感謝したい、ありがとう。
かつて僕は自由を満喫していて、
紫水晶の杯を高くかかげていた時、
その杯に君は祝福をしてくれたね。
その君に感謝したい、ありがとう。
そしてその汚れていた僕は、
今までと変わって、
清らかになって君の胸に顔を沈めるんだ。
本当にありがとう!
➌
Bo Skovhus and Stefan Vladar: Jorne & Gabriele
グリーク Ein Traum
<歌詞>
Mir träumte einst ein schöner Traum:
Mich liebte eine blonde Maid;
Es war am grünen Waldesraum,
Es war zur warmen Frühlingszeit:
Die Knospe sprang,der Waldbach schwoll,
Fern aus dem Dorfe scholl Geläut –
Wir waren ganzer Wonne voll,
Versunken ganz in Seligkeit.
Und schöner noch als einst der Traum
Begab es sich in Wirklichkeit –
Es war am grünen Waldesraum,
Es war zur warmen Frühlingszeit:
Der Waldbach schwoll,die Knospe sprang,
Geläut erscholl vom Dorfe her –
Ich hielt dich fest,ich hielt dich lang
Und lasse dich nun nimmermehr!
O frühlingsgrüner Waldesraum!
Du lebst in mir durch alle Zeit –
Dort ward die Wirklichkeit zum Traum,
Dort ward der Traum zur Wirklichkeit!
<日本語訳>
ある時ぼくは夢を見た とても美しい夢を
ぼくを愛してくれたんだ ひとりのブロンドの娘が
それは緑の森の中だった
それは暖かな春の時だった
つぼみが開き 森の小川は水かさを増し
遠くの村では鐘が鳴っていた
ぼくたちはとても満ち足りて
幸せ一杯の気持ちに浸っていた
そんな昔の夢よりも素晴らしことが
現実となったのだ
それは緑の森の中だった
それは暖かな春の時だった
森の小川は水かさを増し つぼみは開き
鐘が遠くの村から響いていた
ぼくは君を固く抱いた、君をずっと抱いた
そして君を決して離さない!
おお、春の緑あふれる森の広がりよ!
君はぼくの中でいつまでもずっと生き続けるだろう
そこでは現実が夢となり
そこでは夢が現実となったのだ!
❹
Bo Skovhus and Stefan Vladar: Luise & Rik
ブラームス Von ewiger Liebe
<歌詞>
Dunkel,wie dunkel in Wald und in Feld!
Abend schon ist es,nun schweiget die Welt.
Nirgend noch Licht und nirgend noch Rauch,
Ja,und die Lerche sie schweiget nun auch.
Kommt aus dem Dorfe der Bursche heraus,
Gibt das Geleit der Geliebten nach Haus,
Führt sie am Weidengebüsche vorbei,
Redet so viel und so mancherlei:
“Leidest du Schmach und betrübest du dich,
Leidest du Schmach von andern um mich,
Werde die Liebe getrennt so geschwind,
Schnell wie wir früher vereiniget sind.
Scheide mit Regen und scheide mit Wind,
Schnell wie wir früher vereiniget sind.”
Spricht das Mägdelein,Mägdelein spricht:
“Unsere Liebe sie trennet sich nicht!
Fest ist der Stahl und das Eisen gar sehr,
Unsere Liebe ist fester noch mehr.
Eisen und Stahl,man schmiedet sie um,
Unsere Liebe,wer wandelt sie um?
Eisen und Stahl,sie können zergehn,
Unsere Liebe muß ewig bestehn!”
<日本語訳>
暗く、なんと暗くなったのだ 森も野原も
もう夕暮れがやってきて、世界は今沈黙する
どこにも灯りひとつなく、どこにも煙はたたない
そう、そしてヒバリさえも、啼くのをやめたのだ
村からひとりの若者がやってきて
恋人を家へと送ってゆく
柳の茂みのそばを通って
たくさんのいろんなことを語り合いながら
「もしもお前が恥に苦しみ もしも悲しむのなら
もしもぼくのことで周りからあざけられて苦しむのなら
この愛はあっという間に壊れるのだろう
ぼくたちがかつて結ばれた時のようにすぐにでも
雨に流され、風に飛ばされ
ぼくたちがかつて結ばれた時のようにすぐにでも」
すると娘は言った、娘は言ったのだ
「あたしたちの愛は消え去ったりしないわ
鋼は硬いし、鉄ももっとそうだけど
あたしたちの愛はそれ以上に硬いのよ
鉄や鋼は、鍛え直されるけれど
あたしたちの愛は、誰が形を変えられるというの?
鉄や鋼は、熔かされるけれど
あたしたちの愛は永遠に変わらないのよ!」
このマスタークラスを見るだけでも、
かなり発音やレガートに対するイメージがつかめるのではないかと思うので、
リートに限らず、声楽学習者、伴奏に従事している方には参考になるだろう。
私が記事の中で、馬鹿の一つ覚えのように「レガート」という言葉を使うが、
このマスタークラスの中でも度々彼等が「レガート」と言っている通り、
クラシックの声楽において、レガートはどこまで追求してもし過ぎることのない
最も基本にして最高に難しく重要な技術であることがお分かり頂ければ幸いである。
※出来る限り自分で訳して書くようにしているが、今回はこのサイトより日本語訳を転載させて頂きました。
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